車椅子操作の知識ーStroke Patternー
車椅子を使用する際、その操作性を向上させ、長期的に快適で安全な移動を実現するためには「stroke pattern(以下、ストロークパターン)」という概念が重要です。ストロークパターンを理解し、適切に活用することで、効率的なエネルギー消費と関節への負担軽減が可能になります。特に脊髄損傷患者のリハビリテーションにおいて、この知識は欠かせません。
この記事を通じて、ストロークパターンの基礎知識から具体的な種類、それが日常生活にどのように役立つかまでを詳しく解説します。初心者にもわかりやすく、実践に活かせる内容を目指しています。
それでは以下の目次に従って解説を進めていきます。
1. ストロークパターンとは?
ストロークパターンとは、ざっくり言うと車椅子を操作する際の腕の動かし方や推進方法の特徴を指します。厳密に言うと車椅子駆動中のハンドリムを触れていない時の手の軌道のことをストロークパターンと言います。(車椅子が進んでいる時は駆動期と惰性期に分けられ、ストロークパターンは惰性期の手の軌道を表したものになります)これは「車椅子の推進効率」と「身体への負担(特に肩関節)」を左右する重要な要素です。
車椅子の操作方法によってそのパターンが異なります。これらの違いが車椅子の駆動効率、スピード、長時間の使用における快適性に影響を与えます。
2. ストロークパターンの種類
ストロークパターンにはいくつかの種類が存在します。以下は代表的な例です。
もっとも駆動効率が良いとされるのはSemicircular pattern|SCとなります。
1. ARC pattern|ARC 惰性期に⼿がハンドリムに沿って弧を描くパターン
2. Semicircular pattern|SC 惰性期に⼿がハンドリムの下に下がるパターン
3. Single Looping Over Propulsion pattern|SLOP 惰性期に⼿がハンドリムより上に上がるパターン
4. Double Looping Over Propulsion pattern|DLOP 惰性期に⼿がハンドリムより上がり、その後交差してハンドリムより下に下がるパターン
手動車椅子の繰り返し操作におけるストロークパターンの評価
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejeiss/132/11/132_1798/_pdf
こちらの動画も参考になりますよ
3.ストロークパターンはなぜ大事なのか?
適切なストロークパターンを選択し、習得することで得られる主なメリットは以下の通りです。
1. 身体への負担軽減
不適切な動きは肩関節や肘関節に過剰な負荷をかけ、腱板損傷や炎症の原因となることがあります。効率的なストロークパターンはこうしたリスクを減らします。
2. 駆動効率の向上
効率的な動きは、より少ないエネルギーでより長い距離を移動することを可能にします。特に長時間車椅子を使用する人にとって重要なポイントです。
3. 日常生活の質の向上
スムーズな車椅子操作は、日常生活での移動ストレスを軽減し、自立した生活の維持に寄与します。
4. まとめ
ストロークパターンは、車椅子を快適かつ安全に使用するために欠かせない知識です。基本的な種類を理解し、それぞれの特徴やメリットを把握することで、より効率的で身体に優しい車椅子操作が可能になります。リハビリの現場でも活用できるこの知識を、ぜひ日常生活や患者指導に役立ててください。
おわりに
最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が少しでも皆様の知識の向上や日々の生活に役立つことを願っています。引き続き脊髄損傷に関する情報を発信してまいりますので、ぜひお楽しみに!