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実績指数、ご存知ですか?

一般の方はご存知ないと思われる「実績指数」についてお話しさせていただきます。このnoteをお読みいただくと、なぜ回復期リハビリテーション病棟では早期退院を目指すのか?のカラクリがご理解いただけると思います。

患者さんからよく訴えられることに以下の内容があります

「ちゃんと治るまでしっかりリハビリしてから退院させてください」

「こんな状態で病院を追い出すんか?」

回復期でお勤めの医療者はあるあるだと思います。ではなぜこのような訴えが出るんでしょうか?最初に断っておきますが、退院後に在宅生活が営めない状態で帰ってもらうようなことはしません。それは病院の責任問題になるからです。

しかしながら、昨今の医療制度上、厚生労働省(以下、厚労省)から提示される病院側への各種条件は年々高まっており、病院の経営を維持するためには制度に則った運営をしなければなりません。厚労省が出す指針と患者さんの希望との間で病院は両方のニーズを上手く保ちながら運営しています。実はこれってすごく大変なことなんです。そこをまずご理解いただきたいと思います。

初めまして。理学療法士のそうちゃん🏄‍♂️と申します。Twitterとnoteで脊髄損傷についての情報発信をしております。よろしければご覧になっていただけると嬉しいです👇

このnoteの後半では来る診療報酬改定に伴い危惧されること、特に脊髄損傷に関わると個人的に考える話をさせていただきます。

追記:2020年度診療報酬改定がなされました。実績指数は40以上とUPとなりました。詳しくは実績指数とは?をご覧ください。(2020年5月13日追記しました)


こちらの記事をYouTubeで動画にしました。よろしければご覧ください👇


平成28年度診療報酬改定前と後の話

実績指数のお話の前に実績指数というアウトカム評価がなぜ導入されたのかについてご説明します。

まずは下の図をご覧ください👇

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平成28年度改定前にはこう書かれています(赤線で囲んだところ)。

患者1人1日あたり、疾患別リハビリテーションは9単位までは出来高算定

これは何を意味するかというと、「リハビリは9単位までは国の医療保険からお金を出しますよ〜」ってことです。つまり平成28年度の改定前まで厚労省は「リハビリの量」を重視していたわけですね。

ところが平成28年度改定後をご覧ください(赤線で囲んだところ)

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リハビリテーションの効果に係る実績が一定の水準に達しない場合、疾患別リハビリテーションは6単位まで出来高算定(6単位を超えるリハビリテー ションは入院料に包括(※)) ※急性疾患の発症後60日以内のものを除く

これが何を意味するかというと、リハビリの効果が水準に達しない=リハビリの効果がない場合、6単位を超えると入院料に包括=6単位以上リハビリしてもお金出しませんよ〜ってことになりました。つまり「リハビリの量」から「リハビリの質」を求められるように改定されました。だってやっても意味ないリハビリに国はお金を出せないですよね。改定前、巷では「とにかく9単位至上主義」なので、何が起こるかというと、ただただ漫然としたリハを行う病院が増えた(あくまでも巷の噂です)とよく聞きました。まあその方が楽ですよね。患者さんが良くなっても、良くならなくてもリハビリをやった時間数が評価の対象なわけなので。

で、厚労省は「これじゃダメだ」となり診療報酬改定が行われるわけです。

そこで登場したので「実績指数」です。やっと出てきました。


実績指数とは?

まずは下の図をご覧ください(赤線で囲んだところ)👇

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回復期リハビリテーション病棟のアウトカム評価にかかる計算式等の概要として、真ん中に「効果の実績の評価基準」と書かれてあります。

これが実績指数の計算式となります。どういう計算をするのかと言いますと、

まず疾患別に回復期リハビリテーション病棟の入院料の算定上限日数というものが定められております。

例えば整形疾患であれば90日、脳血管疾患であれば150日(あるいは180日)という感じです。

算定上限日数を分母とし、分子に実際に入院していた期間を入れます。

例えば整形外科疾患の患者さんで入院日数が45日の場合、

入院日数45日 / 算定上限日数90日 = ”0.5”

となります。

次に日常生活動作の評価であるFIMを用います。

FIMについては👇をご参照ください

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FIMは運動項目のみを利用します。

回復期リハビリテーション病棟退院時の運動項目点数から入棟時運動項目点数を差し引いた点数=FIM利得と言います。

もう一度計算式をみてみましょう。

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まとめると計算式は以下のようになります

実績指数 = FIM利得(入院日数 / 算定上限日数)

この計算式から病院側が考えることは次の2点です

❶FIM利得を上げる     ❷入院日数を減らす

この2点です。

先ほどの例で実績指数を計算してみます。(*入院日数45日で計算)

FIM利得が30であれば実績指数は60、20であれば40、10であれば20というように、FIM利得が下がると実績指数も下がります。

では入院日数を減らした場合どうなるか、やってみましょう

入院日数が30日の場合、30➗90=0.3333......となり

FIM利得が30のとき実績指数は90

FIM利得が20のとき実績指数は60

FIM利得が10のとき実績指数は30

となります。

つまり実績指数を高い水準で保つには、FIM利得を上げるか、入院日数を減らすかの2点がポイントとなります。2点両方達成できれば実績指数はかなり高くなったりしますし、反対に2点が達成出来ない場合はかなり低くなってしまいます。

実際にはFIM利得には天井効果もあり、入院日数を減らす方が対策としては取りやすい印象です。

このように実績指数は高い水準を維持する必要があるのです。なぜ高い水準を維持しなければならないかは先ほどリハビリの効果が水準に達しない=リハビリの効果がない場合、6単位を超えると入院料に包括されるとお話しました。ただしこれだけではないのです。

下の図をご覧ください。

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赤線で囲んでいる入院料1をご覧ください。入院料1が診療報酬が一番高いんです。なので病院側としては入院料1を維持したいですよね。(*施設基準というものがあり全ての病院で入院料1を取れるわけではありません)

ただしいくつかの条件が設けられています。

❶重症度:重症者の割合が3割以上

❷重症者における退院時の日常生活機能評価:3割以上が4点以上改善

❸在宅復帰率:回復期リハビリテーション病棟から自宅に退院する割合が7割以上

❹実績指数が”37”以上(令和2年度の診療報酬改定に伴い実績指数の基準値は37から40へと引き上げられました)

このような条件があります。厳しくないですか笑

ただし厚労省もそこは考えてくれているのか、実績指数の計算から除外できる患者さんの条件もあるんです。

❶80歳以上の患者さん

❷回復期病棟入棟時のFIM運動項目合計が76点以上または20点以下

❸回復期病棟入棟時のFIM認知項目合計が24点以下

上記3つの条件を1つでも満たしていれば1ヶ月の入棟者数の3割を除外しても良いってことになってます。

このように回復期リハビリテーション病棟は様々な条件を常にクリアし続けなければなりません。

そんな診療報酬の次期改定がもうすぐなんです。毎回条件が厳しくなってきてますので、今回も厳しくなるのは当然のことだと思います。

*今更ですが、なぜ厳しくなっているのかはわかりますか??根本的なことですけど、国・厚労省は医療費を削減したいんですよね。皆さんもご存知かとは思いますが、医療保険はもはやパンク状態なので介護保険へ移行させたいわけです。それが地域包括ケアって構想ですね。


次期診療報酬改定で危惧されること

これから話す内容はあくまでも個人的見解です。そこをご理解いただきお読みいただきたいです。

今まで実績指数の説明をしてきましたが、次期改定でさらに実績指数の基準値が引き上げられると噂されてます。今までは”37”ですよね。ではもし

実績指数の基準値が"40"になったら? "42"になったら? "44"になったら? "47"になったら?

病院側は❶FIM利得を上げること、❷入院日数を減らすことを考えるわけです。

では脊髄損傷者で考えてみましょう。脊髄損傷者の受傷から生活に戻るまでの流れで詳しく話してますのでこちらのnoteをご覧ください👇

特に重症の頸髄損傷者ではFIM利得は得られないです。さらに退院準備にも時間がかかるため入院日数は長期化する傾向にあります。となると、実績指数の基準値が引き上げられると病院側は何を考えるか?

入院料1を維持するには受け入れしない方が良いのではないか?

と考えると思います。今病院経営ってものすごく厳しい時代なので、各病院であらゆる生き残り戦略を取ってくると思います。その一つの選択肢に出てくる可能性はあるかなと考えています。

幸い、当院では元々利益等は考えず、病院設立当初からの理念に脊髄損傷者を受け入れる、社会復帰へのお手伝いをするというものがありますので、診療報酬が改定されてもそのスタンスは変わらないと思います。しかし、専門的に受け入れている病院ではない場合はそうではないと思います。

さらに疾患別の算定上限日数が短縮されるとさらに厳しい状況になることは想像に難くないです。

しかしながらそのような未来もそう遠くないような気がしてます。それくらい日本の医療の問題はギリギリのところで持っている状態なんだと思います。


「私」が今やるべきこと

私のような一病院勤務の理学療法士が大きなことは言えませんが、回復期病棟で脊髄損傷者とたくさん関わってきた経験、知識などをフル動員して、私が今やるべきことを考えてみました。

診療報酬の改定によりさらに厳しい条件となることに対して不満や改善策を訴えたところで絶対に変わりません。今後の日本の将来を考えれば当たり前のことです。では「仕方ないな」ではなく、様々な条件をクリアしつつ、より効率的にFIM利得を上げ、入院日数を短縮する方法を考えるべきだと考えます。

私は今まで回復期での脊髄損傷者に対する退院支援を経験し、ノウハウはかなり蓄積されてきてますので、重症度、個人背景の違い等を考慮した退院支援のノウハウをお伝えできると思ってます。

スムーズに進む方、難渋する方、退院支援の進捗状況は様々です。

まずは回復期における脊髄損傷者の退院支援の傾向を今一度洗い直したいと考えてます。

個別の事案のnoteは随時発信していきますので、ご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご意見、ご感想等ありましたらTwitterのDMにコメントお願いします👇

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