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「夕日がしずむとき」
次男が八歳のある日の夕方、スイミングスクールに次男を連れて行った帰り道、車のバックミラーには今にも沈もうとしている太陽が映っており真っ赤でとても綺麗だった。
「ねえ!後ろを見て!綺麗な夕日よ~」と私。
息子たち二人とも「ほんとだあ、きれい」と振り返って見ていた。
ふと長男に前の年、学校行事にあった、海に近い公共施設での研修旅行のことを聞いた。
「ねえねえ、研修のときに海に沈む夕日って見ることできた?」
「うん!見たよ。よかったあ…」と長男。
そこで私はあるビデオアニメのワンシーンを思い出した。
それは元々絵本だが、彼らが小さい頃にEテレでやっていたフランスのアニメ『三つ子ちゃん』である。
絵本もそのアニメも大好きでビデオまで買ってしまった。
息子たちもよく見ていたけど、はたして覚えているのか。
海に沈む夕日を見て三つ子のうちのひとりの男の子が
「おひさまは海に落ちるとプシュプシュプシュ~って言ってね、あんまり熱いから海もあったかくなるのさ」と物知り顔で言うせりふ。
すごく子どもらしい、かわいい表現である。
で、次男にこのことを言ってみた。
「おひさまが海に沈むときは、ジュワジュワ~って言うんだよね?」
すると次男は、
「はあ~?んなわけないよぉ。だって、地球と太陽ってずう~っと何万kmも離れているんだから、海に沈むわけないじゃん!
もし太陽が地球にくっついたら、もうあっという間に地球が溶けちゃうよ。『ボッ』という間もないよ」
だとさ。
ちぇっ…。つまんないの。
どうせ誰かの受け売りだろうけど…当たり前のことみたいに言ってくれて。かわいくないんだから。
親はいつまでも夢みたいなこと言ったり信じていたりする我が子であってくれと密かに願っているのに、子どもたちも少しずつではあるけど、着実に成長してるんだよね。
いつまでも子ども扱いしていると、いつの間にか親の方が置いてけぼりされてしまう。
しかしいつまでも夢みたいなことばかり言ったりフラフラとやったりされてても、それもどうなのかな?とわがままな母親なのであった。
要は、たまには母のお遊びにつきあってくれ…というかわいい注文なのだ。
親の心、子知らず…である。 ©ニコル・ランベール/NHK