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「都会で受けた親切に…」
地方に住む私は、田舎に比べて何もかもがアミューズメント的な東京にちょっとしたあこがれがあり、これまでにも何度か遊びを目的とした東京旅行をしました。
その前に…まずは話を今回の記事で取り上げる上京話のきっかけから始めようと思います。
時は平成7年頃だったかしら。
かつては参加者もすごく多かったことで頻繁に行われていた“ウォークラリー”。(今は少なくなりました)
ご存じの方も多いとは思いますが、誰でも気軽に参加できて楽しめる野外イベントで、家族や友人・会社の同僚などのグループ単位で、決められたルートを歩いて途中に設けられた掲示板のクイズを解きながら目的地までゴールするものです。
できるだけ早くゴールし、クイズの正解率の高いグループから順位がつけられ、上位グループはもちろん表彰されて副賞がいただけました。
夫がまだ会社の方たちと一緒に、あるウォークラリーイベントによく参加していた頃、たまたま優勝とその副賞を手に入れ、その時の副賞が東京までの往復航空チケットでした。
当時、終息しかけていたとはいえまだバブルの名残がある頃でしたから、受賞グループの各メンバーに一人分ずつだったけど、地方のそんなに大きくないイベントの副賞にしてはなかなかいいプレゼントですね。
せっかくなので私の分のチケットを別途自腹調達して二人で東京へ勇んで旅立ちました。
しかし実は、その時私は長男をお腹の中に宿して7ヶ月の体でした。(正確には三人での旅行ですね~)
一応安定期だし、主治医の先生にもぜひとも許可を出していただけるようお尋ねし「大丈夫でしょう」との言葉に安心していたので、特別心配はしていませんでした。
飛行機に乗っても特に具合が悪くなることもなく、ラッキーなことに何も問題が起こらずホッとしました。
さて到着した東京は田舎とは違って交通手段があふれるようにたくさんあり、なかでも電車・地下鉄はいいですね。
(もちろん地元にも電車はありますが、その数は東京の比ではないくらい少ないですから)
次から次へとやってくるし、乗り換えも路線図を見ればわかりやすいし、どこへでも縦横無尽に広がっているし。田舎者の私たちには欠かせない移動手段でした。
(あくまでも当時のハナシ…今は路線がかなり増えて、張り巡らされた路線図は一目ではもうどの線がどこにつながっているのか、さっぱりわからず…)
ある駅から地下鉄に乗り込んで、車内を見ると満員とまではいかないまでも、座席はほぼ埋まった状態でした。(昼間なのに、車内ががらんとしてないことにまずビックリ)
それで夫とふたり、ドア付近の手すりにつかまり立って話をしていると、私たちのすぐ近くに座っていた大学生らしき男の子が、「どうぞ」と席を立って譲ってくれたのです。
おそらくですが、ちょうどその男の子の目線に私の出っ張ったおなかがドンとあったからでしょう。
快く譲ってくれたことに感謝して、夫にも「座ったら?」と促され、「ありがとうございます」と言って遠慮なく座らせていただきました。
その時、すごく感動しちゃいました。
けっこう見てみぬ振りする人や、寝たふりする人も多いと聞く中で、あんな若い男の子がこんな心遣いをわきまえているなんて、と。
だって都会の人間は冷たい人が多いなんて、それまでメディアで見聞きしただけの変なイメージを恥ずかしながら持っていて、かなりの偏見に満ちた考えでいましたから。
まさかそういう人ばかりではないし、もちろん田舎にだって気を回してくれない人や意地悪な人もいるのでしょうしね。ちょっと大げさではありますが、それでも感激しちゃったのですから。
おかげであったか~い気持ちになりましたね。
他人に親切にしてもらったら、どういう時でも誰だって嬉しくなりますよね。
「きっと普段からお年寄りとかにも、ゆずってあげているんだろうね。いい子だね」なんて夫と、恥ずかしいのか席を少し離れていく男の子には聞こえないように話していました。
そんなわけで東京の旅は気持ちのいいものになりました。
もうあの男の子も、もしかしたら結婚してパートナーとかいたわってあげているんだろうなあと想像してしまいました。きっと素敵な男性になっていらっしゃるのではないかと信じています。
何度か行った東京での思い出の中でも、この時のことは忘れられないものの一つとなりましたよ。
見ず知らずの、その時限りの出会いではありましたが、いい思い出にしてくれた男の子には感謝しかありません。