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お札を浄焼してみた話(もう二度とやらない)
何年か前に日帰りバスツアーで日光へ行った。日光山輪王寺では団体客にはお坊さんが由来やご利益を説明してくれる。このお坊さんの説明が大変面白く巧みなサブリミナル・セールスで、気が付いたら4,000円近くするお札を申し込んでいた。
その時に書いてきた自宅住所宛てに、毎年秋に輪王寺から翌年のお札の申し込み用紙が郵送されてくる。やめてしまうのも気が引けて、ついつい毎年更新し続けている。
このお札のサイズは縦25cm横20cmほどで結構大きい。ちなみに毎年色が変わる。昨年は白地に青とゴールド、今年は黄色地に紫とゴールド。
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このお札を取り替えるのは正月ではなく立春だ。取り替えた古いお札は、輪王寺でお焚き上げしてもらうか、自宅の庭で浄焼すればよいと書かれている。だが、あいにく我が家はマンションだから庭がない。
これまでは古いお札は輪王寺に送りつけていた。けれど、今年は自分で焼いてみようと思い立った。どうしたかというと、ベランダにお盆用の焙烙を出してその上で燃やしたのだ。多分、マンションの規約には反している。
丸めた新聞紙に火をつけてその上にお札を置いたのだが、モクモクと煙ばかり出てなかなか燃えない。せめて中央の木札部分だけでも焼こうと、躍起になって炎を当ててようやく少しずつ燃え始めた。
木札といっても薄い合板。その板と丸い外枠を接着している接着剤に火がつくと、ビニールが燃えるような嫌な臭い。火を使っている最中はその場を離れるわけにもいかず、寒いベランダにしゃがみ込みながら、周りから苦情が来ませんようにと祈った。
すべてが灰になるまで眺めていられる精神的余裕がなくて、7割ほど燃えたところで、用意していた水を掛けて消火した。長い時間燃やして煙を出し続けていたら、どこかの火災報知器が反応して大騒ぎになりそうで恐かったのだ。
こんな後ろめたさを感じるぐらいなら、素直に寺に送ればよかったと後悔した。煙を浴び続けて髪も服も焦げ臭い。都会で物を燃やすことのハードルの高さを再認識した立春の朝である。