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「コーヒーギフト」発売のずっと前にあった、若者たちの物語

こんにちは。ソウ・エクスペリエンスの矢動丸です。

ソウ・エクスペリエンスが2015年に発売した「コーヒーギフト」は、人気コーヒー店の中からお好きな一軒を選び、自宅にコーヒー豆が届くお取り寄せのカタログギフトです。コーヒーが好きな方々にもご好評いただき、発売以来累計3万人以上に贈られています。

この商品の企画は、オフィスの近くにあった一軒のお店がきっかけで始まりました。それまでコーヒーに特に詳しいわけではなかった私が、商品開発にあたり調べたこと、感じたことを振り返りながら書いてみたいと思います。


コーヒーの新しい潮流

世界中で楽しまれ、日本でも19世紀から根づいてきたといわれているコーヒーの文化。そこに大きな変化をもたらしたのが、今から約30年前の1996年に日本に上陸した「スターバックス コーヒー」に代表される新しいカフェです。この波は、日本にエスプレッソドリンクを普及させ、落ち着いた空間であるカフェが家庭や職場に次ぐ「第三の居場所」となり、2000年代に瞬く間に日本全国に広がって日本のコーヒー文化に大きな変革をもたらしました。

一方その裏では、更なるコーヒー文化の進化に向けて、世界中の若者たちが同時多発的に躍動していました。それは日本でも例外ではなく、「コーヒーギフト」はそんな若者たちの物語が1つの形になったものです。

のちにサードウェーブと表現されることになったコーヒー文化の次なる変化は、コーヒーの質に関する大きな変化でした。それまでは色々な品種の豆をブレンドすることが一般的でしたが、農地、生産者ごとに1つの銘柄として捉え、生産から消費するまで徹底的に品質管理された味のばらつきが少ないコーヒー豆が選ばれるようになりました。シングルオリジンと呼ばれる高品質な同一品種を扱うことで、それぞれが持つコーヒー豆の個性を際立たせることが可能になりました。また、高品質なコーヒー豆が生産されることで豆の価格が正当に評価され、サステナブルな生産が可能になっていったことも見逃せません。

波の中心にいた若者たち

中南米、アフリカ、東南アジアなどコーヒーの生産地での生産管理が進み、そこでつくられた高品質なコーヒー豆は、世界最大のコーヒー消費国であるアメリカはもちろん、ヨーロッパや北欧の各国、オーストラリア、そして日本のロースタリーで焙煎され、それまでとは違う卓越した風味をもった「スペシャルティコーヒー」として提供されはじめました。

コーヒーギフトに掲載されている店舗の店主、焙煎士たちは、日本でのその波の中心にいた方々といっても過言ではありません。日本や世界の名店で修行を重ね、店が閉店してからお店の焙煎機を使わせてもらって朝までみんなで焙煎を追求したり、時にはコーヒーの生産国を訪ねより美味しいコーヒーをつくるために生産者と一緒に農地を耕したり(中米に数年間住んでいた方もいます)、生産して提供されるまでの1杯のコーヒーに強い情熱をもった方々です。

グァテマラ、サンタクララ農園でのONIBUS COFFEE代表 坂尾さん(右)(写真提供:ONIBUS COFFEE)

図らずも同時多発的に生まれたお店

まさにその渦中にいた方が開いた「SWITCH COFFEE」が、たまたま当時の私たちのオフィス(目黒)のすぐ近くにありました。最初に飲んでみた感想は「普通と違うおいしいコーヒー」でしたが、毎日飲む中で何が違うのか気になり始め、店主の大西さんに教えてもらった別の店舗でまた違うスペシャルティコーヒーを飲んでみてそのクリアな味に驚愕し、店舗を複数まわってコーヒー豆を買ってみて、今まで強く意識していなかった時間や温度など淹れ方にも気を使って淹れてみては味の違いを実感する。

自分たちが今まで知らなかったコーヒーの文化が生まれている現実に触れたことは、この経験をギフトにできないかと思い至るには十分なことでした。

私たちのオフィスのすぐ近くにあったSWITCH COFFEE(写真提供:SWITCH COFFEE)

また同時に、当社代表の西村の知人だった「LIGHT UP COFFEE」の川野さんにもお話を聞き、オフィスでコーヒーを淹れてもらったり(贅沢)、また別の店を教えてもらったりしながら、各店にギフト化を提案しに行きました。この時に聞かせていただいた、海外や日本各地での修行時代、今は名だたる店主の皆さんが同じお店で切磋琢磨していた話、産地での買い付けの話……。聞けば聞くほど、一杯のコーヒーのためにここまで情熱をかけらることへの驚きとともに、スペシャルティコーヒーという体験の価値への確信を深めていきました。前述の川野さんがヨーロッパでコーヒーを飲み歩いた話はとても印象的でしたが、今はnoteでも記事になっていました。

LIGHT UP COFFEEの川野さん(写真提供:LIGHT UP COFFEE)

個人的に興味深かったのが、「コーヒーギフト」に参画していただけることになったお店が、ほとんど同じ時期に各地で誕生していることでした。様々な国や文化に影響されながら、似ているけど違うそれぞれのお店ができるストーリーひとつひとつが興味深く、それが図らずも束になっているからこそ、文化として強く根付いてきている印象を持ちました。商品を構成する紹介冊子やWEBの紹介ページには、そこがしっかり伝わるよう意識してつくっていきました。

商品冊子では、各ロースターの成り立ちや生産工程を紹介しています

冊子の中身は、コーヒーギフト販売ページの「冊子の中身」→「冊子の全ページを見る」という箇所からご覧いただけます。(2020年に商品リニューアルをしたため、発売当初の冊子とは異なります)

発売から約10年経っても色褪せず

「コーヒーギフト」の発売から9年が経とうとしています。掲載しているお店の多くが、発売時から掲載を続けてくれているお店です。企画の期間も含め約10年の間にそれぞれのお店は支店を出すなど大きくなり、当時よりも有名なお店になりました。その間にも、すごい勢いで日本各地に小規模なロースタリーやコーヒーショップが生まれましたが、彼らの影響は小さくないと思っています。

かつて若者だった店主の方々も歳を重ねていますが、「コーヒーギフト」の掲載店は今でも日本のコーヒー文化を第一線で牽引するお店のまま、全く色褪せないラインナップです。

日本を代表するロースターに参画いただいています

コーヒーが好きな方を始め、今でも多くの方の贈り物に「コーヒーギフト」を使っていただいています。あの時の若者たちが新しく作っていった日本のコーヒー文化を伝えることに少しでも寄与できているのであれば、私達としてもこれ以上嬉しいことはありません。

日常の一杯が豊かになると、その日が良い日になる。
そんな経験を伝えられるよう、引き続きこの商品に愛情を持って販売していきたいと思います。

LIGHT UP COFFE川野さんと対談

コーヒーギフトの開発にも協力いただいたLIGHT UP COFFEEの川野さんのYouTubeチャンネルには、当社代表の西村との対談動画がアップされています。

他にもコーヒーの淹れ方からコーヒー農園の動画まで、コーヒー好きの方、コーヒーの奥深い世界をのぞいてみたい方にはきっとたまらないコンテンツがずらり並んでいるので、この記事の最後に紹介させてください。

コーヒーギフトの詳細は下記のページから。前述の冊子が付いたパッケージ版がおすすめですが、より気軽にeギフトでも贈れます。