『君』に捧ぐ物語（母への想い）①
…
この物語をわたしは
世界でたった一人の『君』に
捧げようと思う
…
わたしには分かるよ
『君』の気持ちが
痛いほど分かるよ
…
なんでうまくいかないんだろう
こんなに頑張ってきたのにな
まだ努力が足りないのかな
…
あのとき、もっと優しくすればよかった
あのとき、あんなこと言わなきゃよかった
あのとき、あのとき、あのとき…
…
あぁ、もう疲れたな
ずっとこんなことを考えてきた気がする
…
わたしっていったいどこにいるんだろう…
…
あ…
どこにもいないんだ…
いてはいけないんだった…
…
いつからだろう
自分の存在をなくしたのは…
そうすれば周りがうまくいくって気づいたのは…
…
ずっとそうやって来たよな
この人生…
…
生まれてきてよかったのかな
頼んでないんだけどな
生まれたものはしょうがないって
言ってたよな、お母さん…
あの言葉、辛かったな…
しょうがない存在か…
「生まれてきてくれただけで
お母さんは幸せなんよ」って
言って欲しかったな…
お母さん、口下手だったのかな
本当はそう思ってくれてたのかな
わかんないや…
お母さんの気持ち
お母さんもきっと大変だったのよ
ってカウンセラーかセラピストが
言ってるのを聞いたことがある
そうだね
お母さん、大変だったんだよ
だから小さい『君』は
そんなお母さんに笑ってほしくて
頑張ってたよね…
テストでいい点を取ってみたり
音楽会の指揮者に立候補したり
興味のない部活に入ってみたり
大学受験も望む学部にしてあげたよ
全てお母さんの希望どおりにしたよ
お母さんが喜んでくれると信じてさ
でも、うまくいかなかったね…
なんでだろうね
哀しくなるね
ほんと、嫌になる
カウンセラーやセラピストって
ほんとにわかってるのかな…
人生ってなんでこんなに不平等なんだろう
幸せな家族のもとに生まれる人もいるのに
頑張っても頑張っても
家族は変えられない
過去は変わらない…
いいな、生まれかわりがあるのなら
今度は愛してくれる親のもとに生まれたい
神さまはそんな贅沢な希望を叶えてくれるのかな…
…
わたしには分かるよ
『君』の気持ちが
痛いほど分かるよ
誰でも『君』と同じ体験をしたら
きっとそう思うよ
…
でもさ
わたしは『君』に捧ぐ
生まれてきてくれてありがとう
『君』の存在で助けられた人がいることを
わたしは知っているよ
『君』は間違っていなかったんだよ
そんな思いをしてきた『君』だからこそ
誰かに勇気を届けることができたんだよ
わたしは『君』に捧ぐ
生まれてきてくれてありがとう
そして、わたしは誇りに思う
人生は不平等ではないことを知った『君』を
そんな『君』がわたしは大好きだ
愛おしい『君』
生まれてきてくれてありがとう
画像：「ペットのおうち」さんから拝借させていただきました。
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