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2024/09/27 法定相続情報の有用性

相続のご相談も多くなり、 
当事務所にお声がけくださっている皆様に改めて御礼申し上げます。

さて、仕事をしていて思うのですが

「法定相続情報(一覧図)」

について

「これは絶対あった方が良い!」

と思うシーンが増えましたので、おさらいも兼ねて
事例をまとめてみました。

※法定相続情報一覧図については、当事務所の「相続特集」ページをご参照ください。

金融機関等での相続手続きは、

「あなたに相続が生じたこと(亡くなったこと)、あなたが法定相続人であることを、証明してください。」

からスタートになります。

相続は大きなお金(価値)が動きますから、正当に進めるためには、致し方ない部分もありますね。

通常は「亡くなった方の出生から死亡までの全ての“戸籍の束”」で証明することになります。

さて・・・

みなさんは「古い戸籍」を見たことがありますか?

手書きの旧字で縦書きで書かれていて、 普通に読むだけでも苦労しますし、 読めたところで

「何を意味しているのかわからない・・・」

となりがちです。
(これを読み解く作業は、司法書士が一番得意です。)

ご年配の方の戸籍だと

「戦争で焼失した」
「(おそらく戦後の混乱で)記載内容に辻褄が合わない部分や、誤記載がある」

なんてことも実務ではあります。

過去に戸籍の電子化が行われた経緯もあり、
戸籍に動きが無くても、様式(法律)が改正されて

「古い戸籍から、新しい戸籍に移行する」

なんてことは当たり前にあります。
(いわゆる「改正原戸籍」が生じるしくみです)

さて、本記事の論点は・・・

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「読むのが大変な“戸籍の束”」

ではなく、

「法務局がお墨付きを与えた1枚の家系図(=法定相続情報)×複数枚取得」

があると、どのようなメリットがあるか?

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というお話です。

用語解釈は相続特集ページに任せるとして、 
ここでは「実例」で役に立つシーンを紹介します。

【シーン1】

「相続人間で、分担して、独立して、資料収集や承継手続きが進められる」

相続財産の数が多く、それらが相続人に種類ごとに分配されるケースがあります。

そのような場合に

「A銀行とB銀行は、日中動ける母が、残高証明取得と協議後の預金解約を担当する。」

「C証券は、株式用語に詳しい兄が、郵送で対応する。」

「古い株券になっているD株式は、よくわからないので全部司法書士にお願いする。」

など、分担して進めることが可能になります。

進め方イメージ・・・

(1)司法書士が、法定相続情報作成の委任(状)を受け、最新の住民票と戸籍だけをお預かりする。

(2)司法書士が、足りない戸籍を収集する。

※司法書士や税理士は、正式な依頼に基づいて「職務上請求」で戸籍等を代理取得できます。
 経験上、不動産の相続登記を行う司法書士が一番慣れています。

※一応「戸籍の広域交付制度」も始まっていますが、 古い戸籍が混ざると結局全部取得できなかったり、自治体の職員さんが苦労されて非常に時間がかかったりと、課題も感じます。 
 安定して使えるようになるには、もう少し時間が必要と思うところです。

(3)司法書士が法定相続情報の作成と、完成品の複数枚受領の申請を行う。

(4)(2~3週間後に)法定相続情報が司法書士の手元に届く

(5)→そして「手続きをする人に、それぞれ、法定相続情報を複数枚郵送する。」

とできるわけです。

もし「戸籍の束が1セットだけ」だったら、同時並行に進める事ができませんよね。

窓口で確認したら返却してくれる金融機関もありますが、 機関によっては「戸籍の束を、数週間~一か月くらい、本部でお預かりします」なんてこともあります。(ネット系だと、窓口が無いので、こうなります。)

相続財産が多岐に渡る方や、時間のかかる証券株式系の財産の相続手続きでは、法定相続情報は必須と言って良いでしょう。

【シーン2】

「窓口で、どんな担当者さんでも、手続きが進められる」

銀行窓口等の全ての方が、戸籍の読み方を理解されているわけではありません。
相続の専門知識が全くない方もいらっしゃいます。

そうした窓口で「言われた通り、戸籍の束を持ってきました」としても

「確認しますので少々お待ちください」となり、

非常に・・・・・・・(1時間以上かかったことも)待たせられたり、
待たせられた上に結局「本部に送ります」なんてこともあります。

途中で「これ、どういうことですか?」と戸籍の内容を聞いてくる方もいました。

あるいは戸籍を間違って読んで「戸籍が足りないと思うんですが・・・」と言われて進まないケースもあったようです。

※一般の方が自分で戸籍を集めた時に「戸籍が足りない」ということは少なからずあるので、窓口担当者はその例に倣ってしまったのでしょう。

※ちなみに、相続手続きの担当者体制は、金融機関、証券会社により様々です。

「専門の部署・人員を置いている」
「本部の相続部隊に投げるしくみをつくっている」
「完全予約制で詳しい担当者のみが対応する(窓口に行っても「予約してください」と言われる)」
「WEBフォームから受け付ける」
「たまたま窓口にいた人が頑張る」

など異なります。

・・・以上が「戸籍の束」のデメリットの一つです。時間の無い方にとっては致命的な問題になります。

ここで「法定相続情報」があれば、
どんな窓口の方でも、非常にスムーズに対応して頂けます!

(「法定相続情報あります」と言うと、表情が明るくなる窓口の方が経験的に多いです(笑)気持ちはわかります。)

事前に「法定相続情報あります」と伝えて窓口に行ったら、「免許証を見せてください」だけで、相続人の証明は終了し、
5~15分くらいで、残高証明書発行や、(遺産分割協議書と全員の印鑑証明があれば)預金解約手続きが終了できることも多いです。

※預金解約の場合、実際に入金があるのは、後日になることが多いです。

「誰でも一目で相続関係わかる」というメリットが、現場で発揮されるケースですね。

【シーン3】

「死んだ叔父の財産の手続き(一次相続)が終わっていないまま、その兄弟である父が亡くなった(二次相続)。本来父がもらうはずの叔父の財産の相続手続きがしたい。」

いわゆる「数次相続」と呼ばれるケースです。

この場合は、

「叔父の法定相続人の特定(=叔父の戸籍の束A)」
「父の法定相続人の特定(=叔父の戸籍の束B、ただしAと一部重複あり)」

のような、とんでも無い戸籍の束が必要になります。

シーン1の財産件数は2人分になりますし、
シーン2の窓口でかかる時間は・・・想像しただけでイヤになります。

※数字相続の場合「今生きている人」だけではなく「亡くなった日付と順番」が、非常に重要です。
 代襲相続と勘違いされる方も多いです。そこまで理解して読み解ける人は・・・

ここで「家系図のように示せる法定相続情報2枚で終わり」だったら、どれだけスムーズでしょうか。

【シーン4】

「結局作成する『相続関係説明図』の依頼を省略できる」

※事務所さんにより対応は異なります。

法定相続情報と似たような書面で「相続関係説明図」があります。

法務局への登記申請、税務署への相続税申告では、

「戸籍の束を使う(法定相続情報が無い)」場合は、結局、この書類を作成します。

=その分、報酬が若干発生(あるいは価格に含まれていると)します。

ここで「法定相続情報」を作成しておけば、相続関係説明図を省略することもできますので、
※再掲・事務所さんにより対応は異なります。

かかる費用 = -相続関係説明図を作成する費用+法定相続情報を作成する費用(当事務所だと説明図より若干の追加費用で済む水準です)

となりますので、結局「差額分だけの追加負担で、法定相続情報が手に入る」ということになります。

差額だけで、シーン1、シーン2のメリットを享受できるわけですから、
これは絶対に作った方が良いでしょう。

参考までに、当事務所で相続登記を依頼される方は、

「不動産登記は、さすがに自分でできないので司法書士に依頼。
 預金解約は自分でできるので、その時のために、法定相続情報を作成入手しておく。」

という着地が一般的です。

平日に銀行窓口に行けない方は、預金解約も司法書士に丸投げできます。

「相続人への分配も、中立な司法書士に任せる」

「司法書士報酬や登録免許税は、その解約預金から充当する」

つまり、遺産分割の内容が決まっていれば、

「最低限の書類記入、実印押印、印鑑証明の取得提供(郵送でOK)」だけで、

後は司法書士に任せるだけで、後日、不動産権利証が郵送で届き、解約預金が振込まれる。

ようにすることもできます。

日常生活に忙しい方や、お体を悪くされている方は、このパターンが多いです。


長くなりました。

「法定相続情報」は、大変有用ですので、皆様、是非活用してみてください。

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