雨とサウナと。右脳と左脳。
かつてない密度で講義をやっているせいか
頭がオーバーヒート気味。
長年やっている講義ならいざ知らず。
左脳を使いすぎているからだ。
もう少し、右脳を使って授業できんものか・・・・。
バランスが悪いと感じる。疲れる。
今日は第二Qの1回目だった。
出席を取るのに、webを使ってみた。
コメントが書き込めるようにしたところ、
スライドを送る速度が速く、ノートを書くのが追いつかないため、ゆっくり進めるか、授業のPDFをできれば欲しいというコメントがあった。
なるほど。これはアンケートにも全く同じコメントがあったので同じ学生であろう。
アンケートにあったため、今回の授業では授業で見せたパワポ資料を配布したが、
配布した後に、何かモヤモヤしていた。
このモヤモヤはなんだろう、と、思う。
サウナの中で考えた。
いろいろな考えが、浮かんでは消えた。
まず、左脳的な言い訳が浮かんできた。
著作権のない画像などに関して、見せるのは確実にOKだが、
配布することに関してだ。
しかも、PDFで配布すると、再配布ができてしまう、
加工できてしまう。
では、著作権の微妙なものを外し、パブリックドメインのみで配布するか。
面倒だなあ・・・。
見せるスライドと、配布するものを二種類作らねばならなくなる。
ただでさえ、資料の準備に忙しいと言うのに。
再配布の防止や加工の点、メモできるという点では、印刷して配る方がマシとも言えるが、それも避けたい。
しかし、それだけではないモヤモヤ感があった。
それは、何か。
自分の師の授業方法について思い出していた。
先生は、絶対に、自分の見せるパワポの画像を配布したりはしなかった。
他人の著作権の問題ではない。
ほとんどそれは、先生自身が出かけて行って撮ってきた写真ではあったが。
配布するのは、簡単なレジュメと白黒の最低限の図版(出版されている本から転載したものなど)だけであった。
それをもとに、先生のパワポを見ながらメモをとる。
まあ、パワポの捲れる速度はそう速くはなかった。
なぜ簡単なレジュメと図版だけだったのか、今ならわかる。
パワポにも、タイトルなどは一切載せず、画像のみである。
その意味も今ならわかる。
それを解説するのもおこがましい気さえする。
大事なことは、言葉にしてはいけない
そんな気さえする。
あるとき先生が言った。
論文を書くときに、全力で、全てを書こうとする私に言った。
「一番大事なことは、書かないんですよ。」
そのときには意味がわからなかった。
今は、わかる気がする。いや、わかる。
それは、究極的には、神聖なるものを直接見てはいけない、
直接表現してはいけない、
直接触れてはいけない、
それらに通ずることなのである。
いや、違うな。ちょっと上手くいえない。
直接それについて、触ったり書いたり見たり表現したりすること。
それがなぜ禁じられるのか。
職人技が自分自身で目と耳と手で盗まねばならない理由。
板書を自分で写すのなら、何も問題ない。
些細な講義の資料とはいえ・・・
オープンソースであることと相反するが・・・
講義の資料のことは置いといて
なるほど
秘儀というものが、隠される意味
隠されるものが、暗に表現される意味。
例えば、次回扱おうとしていた、ケルトの装飾写本である、『ケルズの書』の冒頭ページでは、キリストの名を書く代わりに、古い習わしに沿って、
名前の記号である、"XPI" が使われているが、その意味。
きのテレビで見た、宮島の厳島神社にはそもそも島に渡ることすらできなかった意味。
伊勢神宮を見ることのできない意味。
などなどが、何かぱあっと目の前が明るくなるように、
私の中に入ってきた感覚があった。
言語化するほどまでになっていないが
いやいや、自分の講義の資料は秘儀などではないのだが、
けれども、オープンソースにすべきものと
そうでないものと。
ここで私がすべきことは、快く、資料を配るのである。
でもそれは、重要な部分つまり核心については、触れていないものなのである。
レジュメというのは、先生のエレガントな手法であった。
つまり骨格を提供し、肉付けは自分でするのである。
レジュメ。
それくらいなら作って配布できるであろう。
図版もいくらかは、パブリックドメインは配布できるであろう。
そのくらいでなんとか手を打つか・・・・。
ところで、
webで出席を取ると、後でデータを抽出してまた出席システムに打ち込まないといけないから、面倒ですよね・・・
と、他の先生に後で言われて。
確かになあ。結局、大学のwebサイトに、手でまた打ち込むんだよね・・・・。
そんなわけで、出席を取るのは、やっぱりアナログで確実な、点呼にしようかなと思った。
しかしさっき、出席データを見ると、自由コメント欄に
「雨に濡れました」
とコメントがあった。
今日は雨なのである。
名前を見ると、ああこの学生は。
なんだかいつも、素敵なのである。
初めて会ったとき、友人の顔を動物に見立ててイラストを描いているのを
見せてくれたのだが、本当に面白く完成度の高いイラストだったのである。
まあ、普通にイラストレーターとしても今すぐ、仕事していけそうなレベルだろう。
また彼は、その発言やレポートなどからも、非常に素晴らしいものを持っていることを感じさせる人物であった。
ふむ。
こういうコメントを書いてくる、
面白いのもいいなあ。
などと思った。
これを帰りの車の中で、サウナに寄った後、
雨に車のボディが打たれる音を聞きながら描いているのである。
さあ、帰ろ。いや、仕事しよ。