ねこ豆腐

メンヘラ学生記

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最近の記事

読後感想「朝鮮思想全史」(著)小倉紀蔵

日本と韓国の関係は「近くて遠い国」と表現されたりする事がありますよね。僕もこの表現に結構しっくりきています。地理的距離はめちゃくちゃ近いし韓国からはK-popやドラマ、日本からは漫画やアニメなど、文化的な交流は盛んなのにいざ国同士の外交となるとあまり上手くいっていない様に感じます。 そもそも僕たちってあんまり朝鮮半島の歴史について知らない気がします。中国の歴史とかは世界史で大量に習わされるけど、朝鮮の歴史はちょこっとしか出てこなかった気がします。「朝鮮半島の偉人の名前をあげ

    • 読後感想 「山椒魚戦争」 (著)カレルチャペック (訳)栗栖継

       SFというジャンルが日の目を浴びてから久しいですが、そのパオニア的存在の1人としてチェコの国民的作家カレルチャペックが挙げられるでしょう。彼は「ロボット」という言葉の生みの親でもあります。彼は大学で哲学と生物学を学んでおり彼の小説の中ではその見識が遺憾無く発揮されています。今回紹介する「山椒魚戦争」は「科学的技術の進歩は果たして人類の幸福に直結するのか」というテーマが念頭に置かれて描かれています。 あらすじはある離島に人間の言葉をおうむ返しする奇妙な山椒魚が発見されます。

      • 読後感想「脳とクオリア なぜ脳に心が生まれるのか」 (著)茂木健一郎

         私たちはなぜ意識を持っているのか、死んだらどうなってしまうのかという問いは理系文系の学問を問わず、ずっと人類が考え続けていた問題だと思います。本書はその問題の解決まではいかなくとも、なんとかして解決への糸口を掴むため奮闘する脳科学者の考察がまとめられています。    筆者の茂木健一郎さんは今までの脳科学の生理学的に一つ一つの部位を分けてその働きを記録していく様な方法では決して脳と意識の本質には辿りつけないと考えます。なぜなら脳の働きを数理で表そうとすると、脳には無限にパラメ

        • なぜ歴史上の天才は性格が悪いのか

          あらゆる分野の天才は何か一般の人とは違う感性を持っていたり、性格に難がある事は良くある。 物理学者のアインシュタインが公教育のアンチだったり、哲学者のヴィトゲンシュタインは日常の会話で誰かが不正確な発言をすると徹底的に問い詰めて終いには相手に向かってとんでもない侮辱をするなどのエピソードはよく知られている。私がこのことについて気になったのはこの本の影響だ。 この本は共に20世紀の大哲学者であるポパーとヴィトゲンシュタインの討論について書かれている。この討論はポパーがヴィト

        読後感想「朝鮮思想全史」(著)小倉紀蔵

          読後感想 「フリードリヒ・ハイエク」Ebenstein,Lanny(著) 田総 恵子 (翻訳)

          私は伝記マニアで子供の時から図書館で色んな偉人の伝記を読んできました。伝記は人生という物語が凝縮されていて、ヘタなフィクションより何倍も面白いんですよね。今回紹介する本の主人公はタイトルの通りフリードリヒ・ハイエクです。 日本において有名な彼の業績は「隷属への道」という本でしょう。この本ではソ連がバリバリ元気な時代にハイエクは社会主義は崩壊する事を予見しており、しかもファシズムと社会主義は個人より国家を優先する点において本質的には同じものであると述べ、その2つの思想を喝破し

          読後感想 「フリードリヒ・ハイエク」Ebenstein,Lanny(著) 田総 恵子 (翻訳)

          小説「奇妙な受験生活」

          ボーっと学習机の上の時計を見つめていた。というのも今日は新たな家庭教師が来る日だ。母親が「こんなすごい先生に教わる事が出来る機会なんて、これを逃したら二度と無いわよ」と息巻いていた。 そう彼女が言うのも無理はない。今日家庭教師に来る男の名前は田中莞爾というらしい。この国の最高学府である帝都大学の中でも最難関に位置する医学部に現役で合格し、入学後何やら事情があり数年休学したのち退学。その後再び帝都大学文学部に入り直したという特殊な経歴の持ち主。逆に何でそんな凄いバックグラウン

          小説「奇妙な受験生活」

          ショートショート小説 宗教勧誘

          「今週は仕事忙しかったな…案件取れたのはいいがこんなに忙しいと逆に困るもんだな」男はそう取り留めのない独り言を呟き、コーヒーを啜った。なんせ今日は日曜日の朝、男は見たかった映画でも見ようかとサブスクアプリのアイコンに手が触れた瞬間、 ピンポーン…ピンポーン… 「なんだよ、こんな朝っぱらから」 ピンポーン…ピンポーン… 「はーい、ちょっと待って下さい」男がドアを開けると幸薄そうな若い女がポツンと立っていた。 「あの、何のご用で?」男が女に尋ねると 「あなたはメシアを信じてますか

          ショートショート小説 宗教勧誘

          短編小説「過剰幸福性パラノイア」

          「次の方どうぞ」精神科医がそう呼ぶと、若い男が入ってきた。男の見た目はキリッとした目にすっとした高い鼻、頬の血色も良く誰が見ても健康そのものに見える色男であった。 「今日はどうされました」 医者がそう聞くと男は深刻そうな顔で答えた。 「えっと…何と言えばいいのか…」 「いえ、大丈夫ですよ。自分の悩みがすぐ言語化できる位であれば、そもそも病院に来る必要も無いでしょう。そういえばあなたは今日が初診ですよね。精神科では初診の患者さんには今までの人生を振り返ってもらいながら診断して

          短編小説「過剰幸福性パラノイア」

          読後感想5 学生を戦地へ送るには―田辺元「悪魔の京大講義」を読む(佐藤優)

          タイトルだけでもかなり強烈な本である事が分かると思います。この本の元は社会人向けに著者の佐藤優さんが講義した内容を編集しまとめた物になります。その講義の内容は戦前エリートの学生に大きな影響を与えた田邊元の「歴史的現実」を読みながら著者独自の解釈を加えながら解説していくというものです。 著者曰くこの講義の目的は意地の悪い天才に騙されないようにする為らしいです。何故こういうことを書いているかというと田邊元は日本を代表する哲学者西田幾太郎率いる京都学派の一員であり自身も当時を代表

          読後感想5 学生を戦地へ送るには―田辺元「悪魔の京大講義」を読む(佐藤優)

          今年の抱負と積読

          明けましておめでとうございます。僕はひねくれているので大晦日から1日経った所で何かがガラッと変わることは無いと考えてしまうのですが、それでもやはり1月1日と聞くとウキウキします。新年を迎えるに当たって、目標とか立てるとまた年末に見返すときに良いかなと思いまして今日は書きたいと思います。 まずは何と言っても大学に受からないといけないですね。このまま経済学部に居てもまた駅で嘔吐してお終いですから。実は受ける所は決まっていても学部選びは迷っているんですよね。まぁ数学使わない学部な

          今年の抱負と積読

          今年読んで面白かった本3選

          「あなたにとって今年はどんな年でしたか?」と聞かれれば本をたくさん読んだ年だと間違いなく答えると思う。何せ大学の授業をすっとばしてずっと図書館にこもっていたんだから。おかげさまで一留はほぼ確定になりました。そういう事はさておき、そんなとち狂った様に本を読みまくっていた僕がおすすめする本を紹介したいと思います。本当はもっとあるんですけど、3選に絞りました。 1.どくとるマンボウ青春記(北杜夫)タイトルの通り著者の青春時代の回想記です。著者の北杜夫が学生だった時代は戦中から戦後

          今年読んで面白かった本3選

          読後感想4 今を生きる思想 マルクス 生を呑み込む資本主義(白井 聡)

          みんな大好きマルクスさんについての本です。色んな本を読んでいると何だかんだでマルクスの思想について何かしらの影響を受けているものが多いので、知っといた方が良いかなと思ってこの本を手に取りました。政治思想としての社会主義は終わったも同然だけど、資本論に関しては今でも通用するようなかなり鋭い指摘が沢山散りばめられていますね。例えば資本は無限に増殖して労働者を機械化してしまうだとか。これは貧富の差がどんどん開いていってGAFA社長などの一部資産家に資本が一極集中してしまっている現状

          読後感想4 今を生きる思想 マルクス 生を呑み込む資本主義(白井 聡)

          意識低い系受験生のための関関同立攻略 英語編part1

          入学早々授業をサボり倒し前期4単位GPA至っては0点代という失態を犯した私ではあるが、一応塾なし現役非進学校(通信教育は使った)から関西学院大学2学部に合格しているのでそれなりに受験生に役に立つ事を発信できるのではないかと思い今回この記事を書くに至った。自分も受験生時代色々な受験系の記事をあさっていたが、いつも思ってたのは有名中高一貫進学校から東大京大などに進学した人の記事はそもそも地頭や環境が違いすぎて全く参考にならないという事だ。一般人が大谷翔平と同じ投げ方をしたからとい

          意識低い系受験生のための関関同立攻略 英語編part1

          読後感想2 星新一: 一〇〇一話をつくった人(最相葉月)

          小学生4年生の時に初めて星新一の作品に出会った。確か地元の図書館に大量のシリーズが置いてあって適当に取って読んでた気がする。その中で1番印象に残っているのは「ひとつの装置」という話で最初読んだ時はあんまりピンと来なかったが、何かこの話には裏があるんじゃないかと考えている内に星作品の魅力に知らず知らずの内に引き込まれていった。その後しばらくたってなんだかんだ中学、高校、大学と星作品を読み続けているから何だか感慨深い。自分にとって星新一は身近である様でそのバックグラウンドをよく知

          読後感想2 星新一: 一〇〇一話をつくった人(最相葉月)

          読後感想1 「打ちのめされるようなすごい本」(米原万里)

          大学に入ってから結構すぐに借りた本だった気がします。佐藤優と立花隆の共著で紹介されていたので興味を持ちました。この本は作者の書評をまとめた物ですが、とにかく量が半端ないです。特に作者の専門分野であるロシア関係についての本はとても詳しく深い書評されていてそれまで全く興味なかったロシアについて知りたくなりました。ちょくちょく挟まれる一流翻訳者独特の学者や政治家とのエピソードがめちゃくちゃ面白い。ソ連のある天才物理学者が傍若無人で破天荒な女性にベタ惚れしている話や小泉内閣に対する流

          読後感想1 「打ちのめされるようなすごい本」(米原万里)