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【完全版】補助輪なし自転車に、買ったその日に乗る方法【子育て】
このテキストは、2020年に書いたものだが、当時本当にノウハウのすべてを吐き出しきっているのに、ずーっと下書きで公開されていなかった。子どもとのやり取りのポイントだけでなく、道具の選び方をはじめとした環境設定=affordanceの考え方が超具体的に言語化してある。細かい部分を改定しつつ、ノウハウ系の記事なので後半有料エリアを作ってみつつ、完全版として2025年現在で、公開してみることにした。
うちの長男は、体は小さめで、運動神経は普通くらい(後日注:2020年当時の印象。後に大変足が早く、運動神経はむしろ良い方だということが判明)。少し前の話ですが、5歳の誕生日プレゼントに自転車を買い、その週末に1日で補助輪なし走行をマスターできました。当時も今も、こういうやり方を微細に入って解説しているサイトはあまり見かけなかったので、この記事では1万字オーバーのボリュームでその全てを解説します。
後述しますが、個別要因に寄らないやり方なので、ある程度汎用性が高いはずです。ただ、長期計画になるので、早めに始めることが必要です。ちなみに私は10年くらい前まで自転車競技をかじっていた人間です。以降専門用語は適当なリンクを貼りますが、リンク先とは全く関係ありません。内容的には凝り性のお父さん向き。特にお父さん自身が自転車趣味なら、一定納得いただける内容になっているはずです。最後は子どもに対する効果的な「学習」という視点でまとめていますので、こちらに関心のある方は目次から直接飛んで下さい。
長男が自転車デビューするまでの軌跡
0.へんしんバイクではなく、ストライダーの導入
長男3歳半のクリスマスに、ストライダーをプレゼント。こちらいわゆるランバイクで、ブレーキはついておらず、足で蹴って進んで足で止まるというもの。日本ではランバイクのパイオニアなので、幼児のお子さんがいるご家庭でなくても乗っている子どもは見たことあるはずです。
ちなみに競合はへんしんバイク。
日本で開発された、日本人の子どものサイズに合った自転車で、サイト上では2-3歳から乗れるし、ブレーキ最初から付いていて、ランバイクからペダル付きに変更もできて(だから”へんしん”バイク)、軽量なので力のない子どもでも取り回ししやすく、何よりサイトには「30分で自転車デビュー」とあります。実際良くできているプロダクトなので、売れてるし、ご近所では半分くらいの子どもがへんしんバイクライダー。この選択も全然あり。というか、補助輪なしで30分で乗れるんだったら断然こっちやろ…。と考えても不思議ではないですよね。
ではなぜ、うちの場合はストライダーだったのか?これはサイズ問題が関係してきます。とは言っても、へんしんバイクは非常に子どもの体格にあったサイズ展開をしているため、買う時のサイズはピッタリのものが選べます。ここで触れたいのは、少し時間軸を長く見た時のサイズ問題。うちのように体にあったランバイクに3歳半で乗り始め、5歳で自転車デビューを想定した場合、3歳半で乗り始めたサイズのランバイクに自転車としてペダルを付ける事になるへんしんバイクは、その時明らかに小さいのです。更に細かいことを言えば、ランバイクはヘッド角が立っている(注:ヘッド角については例えばこちら)ため、そのままペダルを付けると、ハンドルを切った時前輪にペダルに乗せた足が当たる確率が上がります。そういう意味でも、ランバイクをそのまま自転車に変えるというへんしんバイクのコンセプトは、子どもによっては無理が出てきます。
「いやそもそもへんしんバイクは30分で補助輪なしに乗れる様になるから、1年半もランバイク期間いらない。」という考えもあります。実際にそれで行けるケースもあるし。ではここで改めて、40人の幼児が30分で補助輪なし自転車に乗れるようになったという大阪でのイベントが紹介されている前掲のサイトを参照すると、30分で乗れたのは40/84人。確かに多いとも言えますが、他方44人は乗れてない。当然これはプロモーションですから、乗れる乗れないの判定はゆるくなりがちで、実際このイベント後も乗れるような習熟度の子どもはもっと少ないでしょう。つまりランバイクの状態でバランス取る練習がどれだけ必要か、かなり個人差があるという事です。ランバイクを一定期間乗り倒すとした時に、自転車に切り替える境目でフレームのサイズアップができないへんしんバイクより、それが可能で廉価なストライダーの方が選択肢として適している場合があると言えそうです。ランバイク期間を1ヶ月~半年~1年~と、どう見るかはそれこそ個人差の問題。1ヶ月と考えるならへんしんバイクで十分ですし、1年くらいと考えるならストライダーの方が私はベターだと思います。この記事のタイトルにある「買って1日で補助輪なしで乗れました!」とは何のことはない、手前の準備期間で勝負を決めていたからです。言い方を変えれば、準備期間で個人差を吸収できるので、結構な確率で補助輪なし自転車デビューは実現するということですね。
さて、ストライダーの練習で注意したのは、①ポジション変更によるバランストレーニングの難易度調整と、②スラローム(8の字や蛇行)練習。
①バランストレーニングの難易度調整:サドル高を下げて足つき性を重視したり、慣れてきたら少し高くしてバランストレーニングを重視したりを繰り返します。本人が怖がらない範囲でバランストレーニングをさせることがポイント。かかとがつかない程度にサドルを上げると、自然と足で蹴らずに空走させる距離が長くなります。
②スラローム練習:①がある程度出来てきたら、ハンドルを切って曲がらずに車体を倒して曲がるイメージをインプットします。先に書いた通りランバイクはヘッド角が立っているので、ハンドリングがクイックで、ちょっとハンドル切ったらすぐ曲がる。これは、バランスを取る時には都合が良いのですが、自転車の曲がり方としては50点以下です。オートバイなどスピードが出る二輪車は全てそうだと思いますが、カーブは車体を倒して曲がるもの。ペダルをこいでスピードが出るようになった後のことを考えると、ハンドル切って曲げるクセはつけない方がベターです。よって、うちでは4歳になってからは車体を倒して曲がる動作がうまくできるよう、カーブの大きさを調整しながらスラロームの練習をしっかり入れました。
ということで、正直身体能力的には4歳夏以降はいつでも補助輪なし自転車にステップアップ可能な状態だったと思いますが、こちらは本人の意欲優先。ストライダーで楽しいんなら、いつまででも乗り倒してもらって結構と考えていました(そのためにチェーンステー(注:このページの青6番の部分)にしっかり足が乗せられるSPORTSモデルを選んでいます。少し高くなるのでふつう買わない)。後に、意欲が上がってくるタイミングとプレゼントを渡すタイミングがマッチした5歳の誕生日で、晴れて自転車デビューとなりました。
1.自転車はポジション調整幅で選ぶ
いよいよ自転車デビュー当日、のその前に、デビュー成功には自転車選びが最重要ポイントです。スポーツ系は全部同じだと思いますが、自転車にしても、最高のものは、軽いものでも性能が良いものでもなく、自分に合ったサイズ、ポジションの自転車です。子どもの運動神経が中程度以下ならなおさら、サイズとポジションは優先度上げて判断したいところ。とは言うものの、すぐ大きくなるこの年齢層に、フレームサイズぴったしの自転車を買うのはちょっと…と考えてしまうのもうなずけるところです。そこで、見るべき要素はポジション調整幅です。これが確保できていると、やや大きめのフレームサイズを選んでも、ポジションで何とか子どもの体に合わせてやることが可能です。うちの場合で見るべきポイントは2つでした。①シートチューブ(注:このページの青4番の部分)の短さ と、②アップハンドル(注:こういうの) です。つまりはBMX(注:これですね)かそれに近い見た目の自転車が良いということ。
①シートチューブの短さ:シートチューブはサドルの真下にあるフレームの部位。これが短いと、サドルを極端に低くすることが可能に。つまりは調整幅が大きいということになります(注:こういうの)。逆に長いと、いわゆるロードバイクやクロスバイクに近い見た目(注:フレーム形状はこんなの)になりますが、サドルが一定より下がらないので、難易度を下げることが出来ません。いくらストライダーでバランス感覚を鍛えていても、サイズが違えば違う乗り物。しかも自転車はストライダーよりも車体重量が倍以上になる事がほとんどですから、子どもの力では取り扱いが難しくなるわけで、それに重ねてサドルが下がらないフレーム形状を選んでしまうのは非常に危険と言えます。
②アップハンドル:わかりやすく言えば、バイクのハーレーダビットソンみたいなハンドルのこと。もちろんあそこまで極端ではないですが。大事なのは、フラットハンドル(棒状)に近い形状のものを選ばないということでしょうか。スポーツバイクはたいていフラットハンドルですから、サドルの位置とハンドルの位置、ここでは座るお尻の位置と握る両手の位置は、ほぼトップチューブ(注:このサイトの青2番)の長さによって決まります。つまりポジション調整幅は小さい。ところが、アップハンドルだとどうでしょう。ステム(注:このサイトの赤7番)を緩めてハンドルの取付角度を変えると、握る両手の位置を体に近くすることが可能になります。当然ながら、肘が伸び切った状態より、少し余裕がある方が操作性は良いわけで、これが調整で合わせられるのは重要です。
また自転車納品時には、ペダルを外した状態にしてもらいます。これは購入後、ストライダーと同じ練習を行うためです。自転車屋さんにとってペダルの取付は安全性に関わる重要なところですから、高いトルクで締め付けるため、購入後に素人が外すのは手間です。ペダルを使う時になったら、その時改めて取り付けを依頼しに行きましょう。そしてここまで準備できたなら、おそらく付属している補助輪は「不要ですのでお店で処分か再利用して下さい!」とかっこよく言っても大丈夫です!
ちなみに補助輪については、バランスを取ろうとしない癖がつくので使用自体最初からしないほうが良いという大前提です。私含めその昔は、自転車乗るハードルが高かった時代がありました。補助輪アリから片方ずつ外し、親にサドルを持ってもらってブリつけて…乗れた乗れたー!!とか夕焼け背景によくある練習風景でしたが、これは既に昭和の遺物ですね。今既に補助輪使ってしまっている場合は今すぐ外して、同じタイミングでペダルも外して、サドルも下げて、疑似ランバイクとしてトレーニングするのがセオリーと言えそうです。とは言いつつ、現役補助輪自転車ライダーには、実は別ルートも用意されていますので、探してチャレンジしてみるのも面白いかも知れません。
2.最初はゆるい傾斜の坂で、ペダル無し走行
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