原油価格の急落について

本日はここもとの原油価格の急落について考えていきます。
2020年始めに60ドル付近だった原油先物価格は、2020年3月までに40ドル付近まで下落しています。そして、3月9日には1日で15ドル超の下落になりました。1日の下落幅としては過去最大級と言っても過言ではありません。いったい何が起こったのでしょうか?

・原油先物が上げ下げする仕組み
 そもそも原油先物を売り買いする目的は大きく分けて二つあります。それはヘッジ目的と投機目的です。ヘッジはリスクを回避するために利用されます。原油が高くなったときに備えて予め先物取引をすることにより損失を限定的にすることができます。一方で投機は純粋に利益を得るために行われます。原油価格が高くなると予想すれば先物を購入し、下がると予想すれば先物を売却します。

・過去の下落局面
 過去5年間の原油相場を見てみると、2015年10月から2016年2月にかけて1バレル27ドル付近まで下落しています。これは中国経済が悪化して原油の需要が減少するとの見通しが高まり、大幅に原油先物が売りこされたことが要因です。ただ、この時には石油産出国で構成されているOPECが協調減産に踏み切るなど、供給量を絞ることで価格の安定を図ったため原油価格は50ドル付近まで値を戻しています。
 また、2018年10月から2019年1月にもピークから30ドル程度下落しています。この時は米国がイラン産原油の禁輸を実施するとの見通しから原油価格が75ドル付近まで上昇していましたが、制裁が想定よりも緩かったため投機筋の売りが原油価格を押し下げました。

・今回の急落した要因
 では、今回の急落は何が原因なのでしょうか?
 その要因の1つは新型コロナウイルスです。原油需要の多い中国で新型コロナウイルスが発生してから原油価格は徐々に下落していきました。また、世界的に感染拡大が始まると世界経済に与える影響が懸念され、さらに原油先物は売られました。この状況を受けてOPECは協調減産により供給を絞ることで原油価格の下落に歯止めをかけようとしましたが、OPEC非加盟国であるロシアを筆頭に減産への難色を示したため協議は決裂。2016年12月から続いていた協調減産も終わりを向かえ原油先物各は急落しました。
 どうせ売るなら高いほうが良いのはもちろんですが、仮に減産した場合でも原油価格が戻るまでにはしばらく時間がかかるうえ、その間の売り上げは大幅に下がってしまいます。非加盟国は原油以外に輸出できるものが少ないため、「安くてもその分多く売れば良い」という判断から減産に難色を示したようです。

・日本への影響
 今回の減産協議決裂により当面は原油価格が低迷することが予想されます。単純に考えれば「ガソリン代が安くなる」のですが、政府としては物価への影響が大きいため、諸手で歓迎されることでもないのです。難しいですね。
以上。

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