(感想)「るん(笑)」
酉島伝法さんの小説が大好きで、サイン会や講演会にも行ったことがあります。宿借りの星が刊行された際のサイン会で頂いたイラスト付きのサイン本は大事に本棚に並べています。
この短編集は科学がスピリチュアルに取って代わられた世界を舞台にした、3篇が収録されています。帯に「奇才・酉島伝法がはじめて人間を主人公にした作品集」とあって(注: これは皆勤の徒の某短編を思い起こすと?という感じですが、作品集としてすべて人間が主人公になってるのが初、ということでしょうか)、酉島作品好きとしては「おっ??」と思った訳ですが、案の定酉島ワールド全開であります。
ある種のディストピアSFなのですが、絶妙に「ああ、あるある」と自分の体験を想起させられるような描写がところどころにあって、読んでいてぞわぞわする不快感がかき立てられます。帯に平熱38度とあるように、登場人物の朦朧とした語りは今作品でも健在で、読後感にはいやーな気持ちが残ります(褒め言葉です)。
いやな感じの背景には、(私の周囲にも心当たりはありますが)作品にも出てくるようなスピリチュアルをマジだと思っている人が現実世界にも相応にいるというのが想像できる、ということもあるかもしれません。そのあたり虚構と現実をうまいこと混ぜてあるような気がします。
ちなみに、一読して、ミカエルと龍がなんなのかよくわからなかったので、もう一度読もうと思っています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087717305/ref=cm_sw_r_cp_apa_fabc_BFZ7FbX2TFJ58
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