グローバル人事の視点から見たパレスチナ問題
連日の報道で取り上げられるパレスチナ問題。この問題は、イスラエル国外に住むイスラエル国籍者を雇用するグローバル企業にとって、多くの課題をもたらしています。特に、イスラエル国防軍(IDF)からの招集がかかる可能性(注)ビザステータスの変更、さらには世界各国とイスラム教国との対応の差など、多くの要因が絡み合っています。
筆者の勤務するコンサルティングファームでも、目下、世界中の拠点に対し、サービス提供を行うクライアント企業のイスラエル・パレスチナ出身の従業員を特定した上で、①現在のビザステータスと有効期限 ②6か月以内にビザが切れる者についての今後の方針(延長予定、第三国への派遣予定の有無等)を確認しクライアントと協議するよう号令が出ています。
(注)ロイターによると現在イスラエル軍は、イスラム組織ハマスとの戦闘に向け、イスラエル国外の国民を予備軍(reservists)として招集し、その人数は30万人にのぼるとされています。イスラエル国防軍(IDF)の奉仕活動はイスラエル市民にとっての義務であり、国外に住む者、国籍をもたない永住権保持者にも適用されます。
企業が考慮すべき点
企業が考慮すべき点として従業員が招集に伴って帰国する場合、現在のビザが出国中に切れる可能性があります。その場合、どのように対応すべきか事前に計画する必要があります。
また、次の赴任先について検討する場合にも、赴任予定地の政策について事前調査を行うことが重要です。顕著な例では、イスラム教が主流の国、例えばマレーシア等ではハマスに寄り添う姿勢が見られます。そのような国の場合、ビザ発給に制限が行われている場合がありますし、そうした制限がなかった場合であっても従業員と家族の安全を考えた場合赴任先としては好ましくないでしょう。
さらに、従業員がイスラエル国籍ではない場合であっても、イスラム教が多数派の国々では、パスポートに過去にイスラエルを訪れた記録がある者に対して追加の制限を行っている国があります。従業員の短期間のビジネストリップも含め、社員の渡航先について慎重に精査する必要があります。
日本における現状
それでは日本ではどのような政策がとられているのでしょうか?
筆者が昨日付で出入国在留管理庁及び外務省に照会を行ったところ、イスラエルやパレスチナ出身者に対する特別な入国制限や在留制限は現在行われていないことが確認されました。
そのため、現行の制度においては、イスラエル国籍者が兵役参加のために帰国中に在留期限が到来した場合は日本における雇用契約が継続している場合であっても、在留資格は失効することに注意が必要です。
兵役に就く場合、家族を残していくケースが考えられるため子女の在留についてもケアが必要になると考えます。
パレスチナ問題はグローバル企業にとって多くの課題を投げかけています。
今後の動きに注意をしながら、適切な対応と計画によって課題に向き合う必要があると考えます。