原因は前例踏襲と他人事?Jクラブの申告漏れから私たちが学ぶべき教訓
最近一部のJクラブで外国人選手の税金申告漏れが発覚していたという報道がされていました。この問題は決して、サッカークラブだけの特殊な問題ではなく、外国人雇用に関わるすべての人が注目し教訓とすべきことではないかと考えます。
上記報道では税務調査の結果、複数のJクラブで本来、税法上の「居住者」として所得税を申告するべきところ、税率の低い「非居住者」として申告をし続けていたことが発覚したというものです。その結果として例えば年俸1億円選手の場合、約3000万円の追徴課税の可能性が報じられています。大変な金額ですよね・・・クラブの経営にも今後影響を及ぼす可能性があるとか。
そもそも「居住者」と「非居住者」の違いとは?
税法上の「居住者」と「非居住者」の区分は、どの国に税金を支払うか?を判断する上で非常に重要です。居住者は、1)日本国内に住所を有するか、または2)1年以上居所を有する個人と定義されます。そして、居住者と判断される場合、対象者は全世界の所得に対して日本で税金を支払う必要があります。一方、非居住者は、日本国内で発生した所得にのみ税金を支払うことになります。外国人サッカー選手の場合、日本に住所を持ち、家族を同伴して長期間滞在する場合は「居住者」と見なされる可能性が高くなります。これにより、彼らの全世界の所得に対して日本で税金が課されることになります。
外国人選手も、クラブも「他人事」になってしまっいた税務のこと
多くのJクラブでは、外国人選手との契約において、日本国内での税金はクラブが負担することが一般的です。これにより、選手自身は税金を「他人事」と捉えがちだったのではないでしょうか。
例えば選手にとっては家族の存在は海外でプレーするにあたり、大きな精神的な支えになるため、是非帯同したいと考えることは容易に想像できます。
そして、本国の家を引き払い、帯同した子供を日本のインターナショナルスクールに通わせ、家族のために車も購入して・・もう外観的にはどうみても「居住者」です。これに加えて、近年では海外クラブからの引き抜きに対応するため、最近では複数年契約を結ぶことが増えていたため、契約そのものも1年を超え、どこからどうみても「非居住者」とは言えない環境が整っていました。
一方で、クラブ側は、海外選手が非居住者としての実態があった以前の申告方法を継続しており、環境の変化に応じた申告が必要であるにも関わらず、前例踏襲の対応に甘んじてしまっていました。
在留資格と税法の絡み合い
外国人選手の在留資格の扱いも、税法上の居住性に影響を及ぼすことがあります。契約終了後に本国に帰国する場合、在留カードの期限が残っていても、在留カードを返納し、新たな契約で来日する際には再取得することが理想的です。このプロセスが、税法上の居住者か非居住者かの判断に影響を与えることがあります。
一般企業への教訓
この問題はサッカー界だけでなく、外国人を雇用する全ての企業にとって大切な教訓なのではないかと考えます。
サッカークラブを一つの会社、選手を従業員と考えてみると、どんな企業でも似たような状況が起こり得ると思いませんか?
例えば、海外の支社から1年以内の短期・単身で赴任する人を受け入れる場合、通常は非居住者として扱われます。しかし、契約期間が長くなり、本人の希望で家族も一緒に来るようになると、その人はもはや非居住者とは言えない状況になることがあります。そして気づかないまま「前例踏襲」を続ける中である日税務当局から指摘され、追加で税金を払うことになる…これは十分に起こり得る話です。
昔からのやり方に固執することなく、常に法令に順守した状態をキープできるよう、専門家による定期的なチェックを受けることが、変化の大きな昨今ではビジネス運営において不可欠なのではないでしょうか。