好意の圧

関係性の浅い相手(男性)から好意を向けられるのは刃物を突きつけられるのに近い。
これは「その状況でそう感じた私」からのSOSと、それを受け止めたい今の私の対話なので、正否のジャッジではないよ。誰か他人を刺すつもりは全くない。
とはいえ過去嫌な目にあったことがまとまりなく延々書枯れているから、人によっては読み進めるにつれて反感が増していくだろう。
嫌な思い出を反芻する人を疑問に感じていた時期が私にもあったし。でも、書き出してここに置いとくことで、自分の記憶や考えから追い出すことができると思う。ようやくゴミをまとめ終わって集積所に持っていく準備が整った感じ。
そして、私がそうであったように、「自分が悪いのかも」って苦しんでる人がこれを読んでちょっとでも楽になったらいい。

好きとか言われたくない

 これは流石に言い過ぎ、でも男性から表明された恋愛感情で「ありがとう、嬉しい」ってなったことほぼない。ちょっとずつの積み重ねで気持ちが変わったことはあるけど、いきなり恋愛モードになることはほぼない。大体逃げたくなる。そして相手が大嫌いになる。
 まあ女性から言われると、好意に見合う人間でいることのプレッシャーは感じるものの嫌悪はない。
 
 誰からでも厚意は嬉しいし、ありがとうと思う。

 とにかく恋愛前提の告白とか本当迷惑で、当たって砕けろを美談にする人には怒りすら感じる。砕けるのは主体の勝手だけど当たられた方は驚くし怖い。嫌な気分にもなる。
 世の中に「犬に噛まれたと思え」って慰めの言葉があるけど、噛まれた傷や理不尽な攻撃にさらされたショックや妙な気恥ずかしさって残るんだよ。
 「告白ハラスメント」って言葉に、世の狭量さを嘆く声も多いんだろうけど、私はそういう言葉がきちんと出て安心した。妖怪や化物に名前をつけて恐怖を克服しようとするのと同じだね。嫌なものは変わらないけど、自分の中の嫌な感情が、名前という柵で囲われて、とりあえず他のところに溢れ出てこなくなった感じかな。危険地帯の境界わかってれば近づかないようにする努力ができるから。
 そして過去それをやらかしてしまった自分も反省している。「少なくとも嫌ってことはないでしょ、好かれるって良いことなんだから」と傲慢にも思い込んでいた。恥ずかしい。

告白されて

 小学生くらいまでだったら、相手もこっちもファッションというか、おままごとのようなものだったから何とも思わなかった。手紙のラリーで満足してる感じ。
 高校の時も友達がいきなり駅で告白されたりして、「良いなー」くらいに思ってた。
 大学くらいから少しずつ事情が変わってきた。
 話したこともないクラスメートが突然近寄ってきて告白してきた。断った後はそいつとそいつの友達が「嘘、今日いったの?!」みたいに盛り上がってて、されたこっちはものすごく居た堪れなくて、相手だけでなく取り巻きの男たちの揶揄するような視線もすごく怖く感じた。同じ教室・学年にいるのが恐怖だった。
 友達と話したり授業受けたりテストで焦ったりっていう平穏な日々を、いきなりぶち壊された感じだった。
 しばらくしたら慣れてきて、相手に彼女ができたというのを(知りたくもないのに)友達伝で聞いたのものあり、やっと落ち着いた。

 部活の先輩から告白されそうな時は回避した。
 当時私は剣道部所属だった。大学から始めた剣道だし、そもそも試合の緊張感とか、相手を打ち据える行動とか、全く性に合ってないのが入部してからわかり、部員の中でもモチベーションの低い、隅っこの方の存在だった。
 他学部の先輩2人が時々声をかけてくれたりして、その時は気遣いがありがたかった。
 ある時その先輩の一人に遊びに誘われて、不用心な私は気軽にオーケーしてしまった。待ち合わせ場所にもう一人も先輩や他の子が居る気配はなく、そのまま車でドライブに連れて行かれた。
 道中、用件を確認したら「キッドナップだよ」と笑いながら冗談めかして言われて、早く帰りたいなあと思いながら適当に対応してた。別荘なのか何なのか変なロッジを見せられて、そこでよくわからない麦わら帽子などを被らされて、またドライブしてようやく解放された。
 結果的に危ない目には合わなかったけど、不愉快で全く楽しくなかった。今思えば適当に誤魔化して断れば良かったと思う。部活の先輩から誘われて、余程の理由がないのにいきなり断るのは難しいかな。他に誰がいるのか、目的は、くらい車に乗る前に聞いとけばよかった。もしくは、「ちょっと嫌なんですけど」っていう空気を相手に伝えられるスキルがあればよかった。
 けど後から思えば警戒のための準備の時間をくれたのは、まあまあ紳士的な対応だったのかもしれない。
 
 それからしばらくして「男として伝えたいことがある」って呼び出しのメールがあった。
 断った。
 怖いし気持ち悪いよ。何だよ男としてって。
 前述の誘拐ドライブの時から、聞き分けのいい後輩、女性として未成熟なコドモ、おとなしい子扱いをしながら保護者ヅラして一方的に楽しむ相手に嫌悪感を覚えていたのだろう。そこに「男として」って。
 同級生の時より明確に「顔見たくないな、気持ち悪い」と思った。

 と言ってもその後も部活で会わざるを得なかったんだけど。
 相手の方が部活歴長いし、先輩だし、誰にも相談できなかった。
 男女混合で稽古なんだけど、そいつに追い込み稽古(言い方悪いけど、後退していく相手に対して一方的に技を打ち込む練習)の時思い切り吹っ飛ばされて頭打った。
 私はしばらくして部活やめた。
 最低。
 誰かに相談できてたら気分も少し楽だったのかな。

告白に恐怖する自分に許可を出した

 それから、名前で慣れ慣れしく呼んでくる男、相手に他意はなくても気軽に女性性を褒めてくる男に警戒するようになった。
 
 メールやLINEのアイコン、顔写真をアメコミ風にアレンジしたやつにしてて、気に入ってたけど「うら若い女性のアイコンで優しくされると癒される」という目上の男からのメールで、メンヘラみたいなアイコンに変えた。
 そいつも何度か仕事でやりとりして、それなりの恩もあるし年次も上だからごく常識的な対応をしてきただけなのに。仕事と関係ない雑談メールがたまにくるのも、正直やめて欲しかったけど「来たら返す」くらいの対応をしてただけなのに。
 アイコン変えてから今のところ連絡ないので、こっちの思いが伝わってるのならとても嬉しい。

 そのうち、今まで「ちょっと嫌な気分になっちゃったな、やりづらいな」くらいだったのが日常を侵食される恐怖で疲弊する出来事が起きた。

 職場が変わった時のこと、前職の男の同僚から飲みに誘われた。
 これも今振り返れば注意すべきところだったんだけど、他にも警戒すべき行動は散見されてたんだけど、「相手に好かれるのに嫌がる方がおかしい」「自分が病的な男性嫌いなだけで、異常なのは自分」ていう申し訳なさが強くて、内なる自分からの警告に耳を傾けなかった。

 それでもその時の自分を褒めたいのは、電車の時間を定期的に確認して、早めにタクシー呼んでおいたこと。
 帰り際に腰を思い切り抱き寄せられて、その時なんか流れで愛想笑いしちゃったのは悔やまれる。急な攻撃に対する自分の感情って、咄嗟には自覚できないんだね。
 
 それからの2ヶ月が私にとっては息の詰まる恐怖の日々だった。
 とにかくLINEがたくさんくる。1回は会ったというのに翌々日会えないかとか言ってくる(私は夜勤明け、相手は2連休)。
 初めは律儀にLINE対応してたけど、ラリーが始まるととにかく終わらない。終わらせようとしても察しない。スタンプで終わらせようとしてもスタンプにコメントしてくる。しかも疑問系。さらにはスタンプから、私の寝室の環境とか勝手に想像してくる疑問系。
 返事しないと勝手に次の話題がくる。既読にするとすぐくるから未読にしといても30分後、1時間後、翌日などどんどんくる。
 内容もどんどん馴れ馴れしくなっていく。ウケ狙いなんだろうけど微妙に失礼な内容で笑えない。
 何も返さないでいると俺日記がくる。変な手料理とか。「これ買うのに8軒スーパー回った」ってめちゃくちゃ粘着質で怖い。

 夜眠れなくなった。動悸が苦しくて、玄関を出るのも「見張られてるんじゃないか」と不安になった。半年前から予約してた温泉旅行も、なんか怖くて動悸も酷くて、どっと疲れた。
 家や旅先で静けさや安寧をじっと楽しむのが大好きな自分にとって、こんなふうに日常を脅かされるのは苦痛だった。

 2ヶ月してようやく友達に話せた。共通の知り合いだったから具体的な相談はできなかったけど、「それは怖いよね」って言ってもらえてだいぶ気持ちが楽になった。逆上させない文章を考えに考えて、結局淡々と自分の意向(連絡しないでほしい)を伝えて、一連の騒動は落ち着いた。
 その後もエレベーターにそっと乗り込んできたり、誕生日にメールがきたりしたが、恐怖よりも怒りの感情が強かったあたり、自分が回復してきたと思う。
 誕生日には「生誕おめでとう」ときてイラッとした。エレベーターでは後ろからぬるっと入ってきたことにイラッとした。同じ職場にいた時から、いつも後ろから登場していた。ひどい時にはひっそり後ろをついてきてて、私のようのある部屋に一緒にスルッと入ってきたり。周りの人も流石にびっくりしてて、結婚発表かと思った、とまで言われた。待ち合わせの時も、たぶん正面からは来ないだろう、と思ってたら案の定背後からヌッと出てきた。
 待ち合わせまでしてしまったからどうしようもなかったけど「ああ、この人好きになれないな」と思った。

 「生誕おめでとう」も本人としては悪気なく、普段使ってるオタク用語をそのまま使ったんだろう。でもそこに、私を生身の人間でなく自分の理想や欲望を勝手に押し付けてくるそいつの図々しさを見たようで苛ついた。そういえば前にも「〇〇さん(私)のイメージは、ちゃんとご飯食べない人」って尋ねてもないのに勝手に話してきたことがあった。だから何?って感じのコメントだけど言った方は満足そうで気持ち悪かった

 

一旦まとめ

 書きたかったのはその後の自分の気持ちなんだけど、長くなってしまったので小休止する。
 自分でも被害者意識丸出しの取り止めない文になったと思う。これは、過去の相手を一方的に悪者にしないためにも必要な過程だから、許してほしい。
 すっかり消耗した過去の自分がそう訴えかけている。


 
 
 

 

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