見出し画像

記憶の彼方にある本の話11

【UFOリンゴと宇宙ネコ】
冬休み中の、読書感想文用に販売されていた
推薦図書だったと記憶してます。
選んだ理由は内容ではなく「タイトルに”猫“が入ってた」からでした。

主人公は、星の綺麗な高原にある喫茶店の息子で、宇宙飛行士になることが夢です。
夏休みが始まったばかりの ある夜、おかしな動きをする赤い流れ星を目撃します。
目で追うと、近くの「猫山」に音もなく
落ちて行きました。
流れ星の正体が どうしても気になり、こっそり
家を抜け出して猫山に向かった主人公の
目の前に現れたのは、家一軒ほどの大きさの
大きなリンゴ型UFOでした。恐る恐る近づいて、
玄関らしき入口から中に入ると、中に居たのは大人ほどの大きさの、だぶだぶの白衣を身に纒い
二足歩行する黒猫でした。

ドクトルノエルと名乗る その大きな猫は、自分が
地球外生命体で、他の星に行く途中、
リンゴ型UFO が壊れて猫山に不時着したことを
主人公に伝えます。
通常ならば、事態を飲み込むだけで
いっぱいいっぱいになるところでしょうが…
なにせ主人公は宇宙飛行士志望なので、その猫を
「猫博士」と呼び、すんなりと事実を
受け入れるのでした。
その夜から、幼馴染みの女の子「カコ」と一緒に、
ひと夏の秘密の冒険が始まります。

オニヤンマとバイクをミックスしたような乗り物に
跨がって、野原をテストフライトしたり…
猫山に、ゲーム感覚で熊を撃ちに乗り込んで来た
ハンター達を、恐竜の時代にタイムスリップさせてみたり…
命の光を見ることが出来る眼鏡をかけて、
夜の森を探検したり…
エキサイティングな日々を過ごします。

そんな中…
リンゴ型UFOで宇宙へ行きたいとせがむ
主人公に、猫博士は敢えてその願いをスルーし
赤道直下の無人島に連れて行き、美しい星空を
見せた後、帆船での航海に旅立ちます。
自分の願いを叶えてくれそうにないことを悟った
主人公は、猫博士に不満をぶちまけますが、 
猫博士は知らん顔。
どこか裏切られたようで、惨めな気分に
なりながらも、「あの優しい猫博士が、敢えて願いを叶えてくれないのには、きっと何か理由がある
はず」と、マストの見張り台からの見張りや
帆の修理をしながら、主人公は1人で
静かに考えます。
やがて、マストのロープの色んな結び方を見て答えを
見いだし、1つ心の成長を遂げるのでした。

夏休み最終日の夜…
主人公が宿題を終わらせるべく机に向かっていると、音もなく猫博士が現れ、主人公に本来の目的地へ旅立つことを告げます。
淋しさと、もう会えない予感とで声を震わせる主人公に、猫博士は「互いを想いあう気持ち」の前には宇宙の広さは問題ではないと言い、
モノサシではなく志を持つよう言い残して、空の彼方へと消えて行きました。

猫博士との出逢いで目標が より明確になり、
机に向かうことが苦にならなくなった主人公。
ワガママで駄々っ子だった主人公の弟も、猫博士とのふれあいの中で、成長しました。
幼馴染みのカコも、猫博士という共通の「秘密」を持ったことで、今までとは少し違う距離感になりました。
これから この3人が、どうなっていくのかは
判りませんが、この夏の記憶は3人にとって
心の宝石になったのです。

宇宙人というと、どうしても「侵略」という
キーワードが浮かんで、心がザワザワしてしまうの
ですが…
猫博士のような宇宙人なら、逆に大歓迎したい
ですね。
太いしっぽに頬擦りしたいです(笑)