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どこかの物語1

【冷めたコーヒー】
今日は珍しく 何もない休日。
朝食後のコーヒーをのんびりと啜っていると、
玄関から「こんにちは」という声がした。
聞き覚えのない声に 誰だろうと出てみたら、
見知らぬ女が2人立っていた。
1人は若目で30代くらい、もう一人は年嵩で
50代後半くらいに見えた。50代の方が、
「私たちは〇〇教会のものです。
今からカニ踊りをするので、このスルメを
1000円で買ってください」と言い出した。
すると言うが早いか 若い方がカニカニチョッキン♪︎と
歌いながら クネクネと踊りだした。

私は何も言わずスマホを出し、かけるふりをして
大きな声で「あーもしもし 駐在さん?
今 ウチの玄関に不審者が2名 来てるんだけど、
すぐ来てもらえますか。そうそう いつもの
件で」と言うが早いか、2人は そそくさと
また来ますと言って 外へと出て行き、
あっという間に姿を消した。

やれやれ…
今回は おとなしめな奴で助かった。
前回の金の延べ棒のセールスは、グズグズと
いつまでも留まって面倒くさかったからなぁ。
つい腹が立って、傘立てにあったテニスラケットを思いっきり振りかぶったら、毛がボサボサの灰色の
獣に姿を変えて、 慌てて逃げていった。
私はその獣の正確な名前を知らない。
忌獣…とでも言えばいいのかな。

奴らは人の姿で近づいてくるから
油断出来ない。
見分ける方法も幾つか あるみたいだけど
100%じゃないから厄介だ。

カラスよけに使う 鷹のカイトのような、忌獣よけの
グッズが何か ないものだろうか。
今度ホームセンターに行ったら、スタッフの虎澤さんに
聞いてみよう。

あぁ…コーヒーが冷めてしまった。
アイスカフェオレにでもしようかな。