マガジンのカバー画像

物語

2
フィクション。
運営しているクリエイター

2019年7月の記事一覧

あと一歩は踏み出さないという選択

あと一歩は踏み出さないという選択

彼の瞳に私が映る瞬間が、今まで生きてきたどんな快感より心地よく感じられた。ただその奥に自分を映し出していればこの上ない高揚感に包まれていられる。

たとえそれがどんな形であれ。

「ああ、俺ね、また別れたよ」
あっけらかんと赤裸々な事情を話し出す彼に、些か呆れ果てた声色が漏れる。

「また別れたの、懲りないわね。今回はどんな理由で?」
「少し放置しただけだよ、ほんの1ヶ月」

うすら笑みを浮かべて

もっとみる