麗美よ何処へ「空が一面海に見えた日」(1984年 アルバム「R」所収)


 今やREMEDIOSは数々の有名ドラマ・映画音楽やCM音楽を手掛けていることで知られているが、彼女がユーミン(松任谷由実)夫妻の妹としてバックアップを受けたシンガーとして「麗美」という名義で活動していたことを知らない人は多い。

 また、ユーミンのアルバムの曲のうち、いくつか有名なものが彼女に提供された後のセルフカバーであったことを知らない人も多いだろう。アルバム「NO SIDE」のタイトルチューンである「ノーサイド」の初出は麗美に提供された曲であった。

そんな彼女、ただおぜん立てされた歌手だけではなく、松任谷夫妻のプロデュースを受けていた時から、わずかながら数曲の自作曲をアルバムに収めていた。1984年9月発売のセカンドアルバム「R」には、「残暑」「青春のリグレット」「恋の一時間は孤独の千年」といった、のちにユーミン自身がセルフカバーする提供曲とともに、この麗美自身による作曲の「空が一面海に見えた日」が収録された。


 まだまだソングライターとしては未熟で、それこそメロディーラインからは、そこはかとなくお手本であるユーミンの匂いが漂う。

 歌詞は当時のユーミンファミリーの一員だった田口俊によるもの。沖縄出身の麗美のイメージからだろう。歌詞のコンセプトは(はっきり明示していないが)米軍基地の友達との、昔日の感傷的な思い出がテーマとなっている。このあたりも、ユーミンの「キャサリン」や「LUNDRY-GATEの思い出」を焼きうつしたような歌世界だが…。

 ただ、タイトルを歌詞に織り込んだサビの開放感は、福生でも厚木でもない南国のまばゆい空と日差しが目の前に開けたように感じさせるのは、八王子生まれのユーミンとの差かもしれない。詞の中に「5月」というワードが出てくるが、まさに5月になると思わず口ずさみたくなる。

 しかし残念なことに、今は様々な思惑が絡み合って、もうこんなふうに思想信条にとらわれず、シンプルに風景として米軍基地を歌世界に取り込んで歌うことなんて、困難な世の中になってしまっていると思われる。

 ちなみに。この「R」には「星のクライマー」という麗美の自作曲が収録されているが、のちにユーミンが「FACES」というアルバムでカバーすることになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?