予想外の経験値を得た娘の校外学習
ぴぃは中学2年生の最初の行事「校外学習」へ行った。
電車で片道1時間半の観光地へ。
五月雨登校中のぴぃとはいえ、校外学習へは行くだろうと思っていた。
ぴぃが望むクラスメイトとの学校行事だし、しおりの表紙は自分が描いたイラストが採用されてるし、お土産屋さんが大好きなぴぃ。
行けるか行かないかで悩みもしないと思っていた。
校外学習の何日か前に、担任の先生より「学校側としては万全の対策を考えていますが、念の為お母さんも一緒に来てもらえませんか?」と言われた。
それを言われて、瞬時になぜ?と思ったことで、「私がいなくても今のぴぃなら大丈夫」と100%思えている自分に気づく。
もしぴぃが、行けるかどうかわからない、行きたいけど不安でいっぱいだと私に打ち明けていたら、むしろ私から先生に引率をお願いしていただろう。
でも、目の前のぴぃは意欲満々。
「心配だからママも行くね」というのは「=ぴぃの安心」ではない気がした。
ただ、時々学校で強迫の症状をちらつかせるぴぃを心配する先生の不安もわかる。
ぴぃのためではなく、少しでも先生たちの心配を軽減させるために、ぴぃには黙って行こうと決めた。
校外学習当日、ぴぃはしっかり早起きし、少し早く友達と待ち合わせた場所へ向かう。
私は、ぴぃが乗った電車の一本後の電車に乗り、ぴぃが降りた駅の一つ先の駅で降りる。
一つ先の駅とはいえ観光地圏内、ぴぃたちの学校の生徒がウジャウジャといる中、私1人での観光は無理とわかっていたので、駅構内のカフェに拠点を構え、そこで5時間ほど過ごすことにした。
カフェにいる間、担任の先生からぴぃの様子がちょこちょこと報告される。
「早めにチェックポイント通過しました。」
「昼食をとっているようです。」
「今のところ問題ありません。」
「少し苦しそうです。」
「ギリギリのところで踏ん張ってます。」
・・・・・うん、落ち着かない。
先生、どうか落ち着いて。
何もなければ、連絡は大丈夫です・・・とは言えない。
先生もぴぃに何かあってはいけないと注意を払ってくれているのはわかるが、ぴぃはたぶん、私がいない方が乗り越える力を発揮できる。
私「少し落ち着けば大丈夫だと思いますので、なるべく私の登場は最終手段でお願いします。」
先生「少し落ち着いてきました。帰りはお友達と帰りたいそうです。とりあえず帰りの電車はグリーン車を確保します。」
その連絡を受けて、「もう大丈夫」と私はぴぃ達が乗る2本前の電車で先に地元へ戻り、駅で待っていることにした。
帰りの電車内で突然担任の先生から連絡が入る。
ぴぃをグリーン車のホームに1人残し、普通車のホームでクラスの点呼をとってから戻ると、ぴぃの姿がなくなっていた。
先生は予定通りの電車に乗り込み、1号車からしっかり確認したがぴぃの姿はない。
可能性としては、点呼をとりに行っている間に来た1本前の電車に1人で乗り込んでしまったかもしれないとのこと。
先生はとても慌てている様子だったが、一方の私は先生の慌てっぷりを受けてなのか、妙に落ち着いていた。
ぴぃは電車で1人怖い思いをしてるかな?
先生も友達もいない電車で不安がってるかな?
電車のことあんまりよくわかってないしな。
でもぴぃは1人だと割と知らない人でも自分から話しかけられる子だから、わからなければ誰かに聞くよな?・・・うん、大丈夫。
と思っていると、20分後、ぴぃが見つかったと先生から連絡がきた。
1本前の電車に乗っているところを業務連絡を聞いたグリーン車の車掌さんに見つけてもらい、途中で一度降りて次の電車に乗るよう声をかけてもらったとか。
途中駅で乗り込んできたぴぃと無事合流したとのことだった。
ぴぃは割と落ち着いているとのことで、先生はとにかく何度も何度も謝っていた。
最寄り駅に着いたら、ぴぃはそこから家までは友達と帰るとのことだったので、私は駅で待たず、一足早く家に帰ることにした。
さて、ぴぃはどんな感じで帰ってくるかな?
ぴぃ「ただいま〜〜〜!!!」
すっごい元気に帰ってきた。
そこからどこで何をしたか、何を食べたか、どんなお土産を買ったかの弾丸トークが止まらない。
そうかそうかと笑いながら聞いていると、
ぴぃ「先生から連絡きたでしょ?ぴぃのこと」
私「うん、聞いたよ。大変だったね〜w」
「それがさぁ・・・」と言いながらぴぃが話してくれた内容は、
先生には3時16分の電車に乗るよと聞いていた。
3時16分の電車が来ても先生が点呼から戻って来なかったら、とりあえず電車に乗り込んでグリーン車で落ち合おうと言われていた。
ホームで1人待っていると電車が来て、条件反射でそれが3時16分の電車だと思い、一本前の電車とは思わず乗り込んでしまった。
先生はいなかったけど、待ってればくると思ったまま疲れ果てたぴぃは眠ってしまった。
突然車掌さんに起こされ、この後の電車に乗るよう言われ途中駅で降りた。
寝ぼけていたことで、状況把握がほとんど追いついていなかった。
ただボーッとしたまま、次来た電車に乗ったら、先生がいて、なぜか泣きながら抱きしめられた。
ぴぃは、少しも怖い思いや不安な思いをしていなかった。
どころか、初めての2階建てグリーン車にワクワクし、席番号がないことから指定席はないと判断し、1階と2階を行き来して良いポジションを決め、車掌さんに切符を渡すというところまでをちゃんと1人でこなしていた。
話しながら、ぴぃ自身も自分の不注意を自覚したことで、今回のようなことがまた起きたり、別のケースが起きた時どうするか?まず誰を頼るか?を改めて確認しておいた。
ぴぃ「ママは心配かもしれないけど、ぴぃは割とママがいない方がしっかりしてるんだよ。だから大丈夫大丈夫!」
私「そうなんだよねwだから先生から連絡きた時、ママはあんまり慌ててなかったんだよ。ぴぃは大丈夫ってママも知ってるから。」
先生からは「疲れているぴぃさんをごちゃついた点呼に巻き込みたくないという思いからの判断であったが、何があっても1人にするべきではなかった。」と次の日にも改めて謝罪があった。
例えばこのことが事件に巻き込まれるといった大事になっていたらと考えると、正直思うところはいろいろある。
でも、ぴぃは無事見つかって、パニックにならずに元気よく帰ってきた。
私にとっては結果オーライ。
どころか、先生方にご迷惑をお掛けしたという思いよりも、すごい経験値を得て帰ってきたなと嬉しい気持ちの方が申し訳ないくらい大きかった。
お土産にお金をとっておきたくて、食べたい甘味をたくさん我慢したことも、みんなのゴミを集めたゴミ袋を何処かに落としてしまい、町を汚してしまったとハラハラしていた気持ちを乗り越えたことも、いちいち経験。
何よりも、「めちゃくちゃ楽しかった」「行ってよかった」「班のメンバーがいいからより楽しかった。」という感想が尽きないぴぃ。
最終的にいい思い出にできたならよかった。
母としてはそれに尽きるのよ。
親子そろって、学ぶことの多い校外学習になりました。
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