12.再燃した症状との向き合い方を知る
冬休みが明けてまもなく、ぴぃのミッケは再び大きく顔を出す。
壁も床も怖い、トイレ後も怖い、着替え手洗いは頻発し、足の裏に着いたほこりですら物体が特定できないとお風呂場へ洗いに行く。
発症したての頃の地獄を見ていたから、私はなんとか巻き込まれないようにと気を張る日々だった。
頭の中では「大丈夫!と言っちゃだめ。」と常に唱え、ぴぃが大丈夫か聞いてきた時も、「それはミッケだから、ママに聞かないで」と言い続けた。
ただやっぱり、それをやりすぎると、ぴぃの気持ちが不安定になる。
「ミッケだってわかってる、わかってるけど安心したいの。」
1年半前と違うのは、ぴぃがミッケを認識した状態で囚われていること。
それだけでも成長だと感じたけど、今、どう対応すべきか私はずっと正解が知りたかった。
2月上旬、ぴぃの病院の日。
「病院の先生に助けてもらおう」とぴぃに声をかけ、1年以上ぶりに一緒に病院へ行った。
先生は、ぴぃが来ていたことに一瞬驚いたが、何も言わずに病室に促した。
ぴぃは自分の口で現状を伝えた。
病院の先生はなんだか不機嫌そうにぴぃに話しかける。
「家では何して過ごしてるの?」「ずっとゲームしてるんだ、そっか。」「入院とか考えたことある?」「薬は引き続き飲んでね。」
そんなもんだった。
久しぶりに来たのに、ぴぃのミッケをいくらか和らげてくれることが少しもなかった。
私は、この時、誰を頼りに何をしたらいいのか、親として、ぴぃのミッケとどう対峙していったらいいのか、完全に迷子になってしまった。
とにかく1人で背負っちゃだめだ、誰かに助けてもらいたい一心でネットにかじりつく。
子供の強迫性障害を専門にしている心理士を見つけて連絡し、まずは私だけでカウンセリングを受ける。
・強迫観念(ミッケ)が現れたときにどうすればいいのか?
・巻き込みを回避するためにはどうしたら良いのか?
・私が常に一緒にいることが共依存になってしまわないか?
・病院では薬だけで何も教えてもらえない。
数々の不安を聞いてもらう。
一通り聞いた後、心理士はこう言った。
「ミッケをコントロールするってことに囚われすぎないでないでください。」
どうやら私たちは強迫性障害そのものに囚われすぎている状態と気づく。
ぴぃの場合、
・楽しいや嬉しいが上回っている時は、ミッケが出にくく、出ても乗り切れること。
・緊張や不安、体の疲れがあると、ミッケを乗り切れずパニックを起こすこと。
という特徴はなんとなく見えていた。
強迫観念について、
どういう時に強迫観念が起きるかを認識し、強迫観念が起こりにくい環境で心のエネルギーを貯めることを優先に考える。
巻き込みについて、
巻き込まれることが全て悪いわけじゃない。
ぴぃ自身とミッケをしっかり切り分けて、「これはわざと巻き込まれるんだ」と言う認識で行うこと。
そして、ぴぃにもしっかり、これはミッケがさせてることだからと理解させることも同時に行うこと。
共依存については、
そこまで問題ではない。
ただ、依存先を増やして、相対的に減らしていくともっといいこと。
病院については、
強迫症状に対してピンポイントでアプローチする場所だから役割が違うこと。
等々、丁寧に教えてくれた。
確かに、病院では心理面で教えてもらうことは今までほとんどなかった。薬や治療といった観点の話が多く、入院を促されることもある。
ぴぃが快く望まない方向性の話が多いから、私も納得できなかったんだとわかった。
心理士の話を聞いて、いろいろ腑に落ちたし、わずかに希望も見えた。
ぴぃのミッケが和らぐ環境づくりに精を出せばいい。
そのためにもやっぱり自分が整っていることも不可欠で、しっかり立て直して行こうと心に決める。
何が大切かをしっかり見極め、ぴぃの安心のためにと、仕事も再び完全在宅に切り替える。