奇跡の2日間。修学旅行がくれたもの。
奇跡の修学旅行2日目。
ぴぃは結局、お友達と同じ部屋で寝た。
私は、小さな物音でもぴぃが来たのかと気になり、なかなか眠れなかった。
浅い眠りのまま5時ごろに目が覚め、うつらうつらしていた。
私が寝た布団の隣には、ぴぃが寝るはずだった布団が綺麗なまま残ってる。
一瞬だけ寂しさみたいな気持ちが湧いたけど、すぐに喜びに変わった。
6時過ぎたころ、しっかりパジャマから洋服に着替えたぴぃが部屋に現れた。
6時半からの周辺散歩はパスすると言うので、部屋で昨夜のことをいろいろ話した。
みんなが使っていたからと、初めて歯磨き粉を使って歯を磨いたこと。
10時消灯だったけど、11時ぐらいまで起きていたこと。
同部屋6人のうち、3番目に寝てしまったこと。
5時8分に起きて、布団を畳んだり、自分で荷物をまとめたこと。
寝る前も、起きてからもお友達といろんなことをたくさん話したってこと。
同部屋にはいつも遊ぶBちゃんがいたから安心のぴぃ。
いつも遊ばないお友達とも仲良くなれて嬉しかったみたいだ。
みんなが散歩から帰ってくるのを待ち、朝食を食べ、荷物を準備して、ホテルの退館式に参加。
そのままぴぃは当たり前のようにバスに乗り込み、本日最初の観光地へ。
何だか、私が見えるところにいない方が、自信になりそうだと、なるべく忍んで過ごす。
最初の観光地は華厳の滝、まさに圧巻とも言うべき滝を見て、大興奮している様子を遠目に見守る。
そのあと、ぴぃはまたバスに乗り込み、日光江戸村へ。
ぴぃはこれをとても楽しみにしていた。
昔からお土産屋さんが大好きなぴぃ。江戸村を楽しむというよりも、お土産をたくさん買いたいと張り切っていた。
私もせっかくだから1人旅行の気分で江戸村を楽しもうとするも、そこまで広くない江戸村、どこへ行ってもぴぃとかち合う。
「ごきげんよう」とよそよそしく声を掛け合うも、ぴぃの表情から、とても楽しんでいる様子が手にとるようにわかった。
修学旅行は江戸村を最後に地元へ帰って終わり。
ぴぃはバスではなく車で帰る選択をする。
最後にお世話になった先生方にご挨拶し、クラスの子達が乗ったバスを見送る。
何だか、あっという間の2日間。
先生方もあったかくて、友達もあったかくて、ホテルの方もあったかくて、ずっとみんなの愛に包まれて過ごした2日間だった。
私は堪えきれず涙を流しながら手を振ってみんなを見送った。
「みんな優しくてありがたかったな」
と言う私の声が震えていることに気づき、「なんで泣いてるの?」と私に顔を向けたぴぃの目からも涙が溢れていた。
寂しさのような喜びのような、言葉にすることはできなかったけど、あの時の私とぴぃの心は一つだったと思う。
本当に奇跡のような2日間だった。
荷物をまとめるとか、布団を畳むとか、整列するとか、団体行動とか、最近までの日常の中に、ありえなかったこと。
これができただけでも、拍手して抱きしめたやりたいほどのことのように思える。
ある人は、もう6年生なんだから、できて当たり前、と思うだろう。
ぴぃは違う。ミッケに阻まれてできなくなったことがたくさんあったから、少しの「できた」が大きな成功体験になる。
全部が全部できなきゃいけないことかと言ったらそうではないと思う。
でも、この経験をしたってことに大きな意味がある。
少しでもぴぃの自信に繋がっていることをただただ祈るだけ。
そして、ぴぃが買ったお土産は、Bちゃんとお揃いで買ったキーホルダー以外は、パパとワンコと両祖父母の分だけ。
お土産屋さんが大好きなぴぃが、自分のもの以外の人の分を買うなんて、何だか成長したな。
そして、学校のみんなを見送った後に、余ったお小遣いでどうしてもと言って買ったのは、江戸村で時間が足りなくて何も買えなかったBちゃんが欲しそうにしていたもの。
2日間、Bちゃんにとてもお世話になったから感謝の気持ちだそうだ。
帰りの車の中で、この2日間を2人で噛み締める。
ぴぃは本当に来てよかったと心から思っているらしい。
そして私も、感謝の気持ちを早くお返ししたい気持ちでいる。