家族じゃないけど家族のような存在だから。
私の幼なじみの娘ちゃんは、ぴぃより3つ上で、ぴぃが大好きなお姉ちゃん。
同じマンションに住んでいるから、ぴぃが生まれた時からずっと一緒。
保育園も一緒で、小学校に入学してからもお姉ちゃんが卒業するまで毎日一緒に登校した。
ぴぃが3年生の時、6年生を送る会の実行委員に立候補した。
卒業する大好きなお姉ちゃんをびっくりさせるために、実行委員であることも、送る会の内容についても内緒にしていた。
送る会の内容は、実行委員以外の子がステージ下でダンスを踊り、実行委員の子たちはステージの上で、応援団の格好をしてエールを送るというものだった。
当日、何も知らないお姉ちゃんは、ステージの上で大きく手を振り上げてエールを送っているぴぃを見つけて、感動と驚きで涙したという話を後で聞かせてくれた。
ぴぃはその頃、すでに確認行為という強迫症の症状が出ていた。
放課後になると、職場にいる私に電話やメールで「〇〇は菌か?触ったら死んでしまうか?」と、何度も何度も連絡をしてくるようになっていた。
そんな中でも、実行委員の朝と放課後練習もしっかりこなすべく、不安に押しつぶされそうになりながらも、学校へ通っていた。
私はこの頃、強迫性障害という病気を知らず、ぴぃの様子も不安定な年頃なんだと慎重に向き合ってあげられていなかった。
お姉ちゃんの卒業と共に、ぴぃは症状を悪化させていく。
そして、4年生になって間もなくぴぃは不登校になる。
お姉ちゃんは中学生になると、部活をやらない代わりに習い事のペースを増やし、塾にも通い始めた。
会う機会が少なくなってきたタイミングでコロナが流行りだし、近くに住んでいるのにほとんど会わなくなった。
この3年の間、ぴぃの身の上に何が起きたかを、お姉ちゃんは未だ知らない。
時々会っても、症状のことや、学校に行けていないことを、ぴぃ自身がひた隠し、取り繕ってきたから。
お姉ちゃんは何も知らず、ぴぃと会うたびに中学校での生活、楽しい勉強や、好きな人ができると学校がもっと楽しくなるって話を、たくさんぴぃにしてくれていた。
ぴぃはその都度、時々行く学校での様子や、友達と遊んだ話で会話を合わせる。
まるで毎日通っているようなテンションで話すから、聞きながら私自信も錯覚を起こしそうになる。
お姉ちゃんには高校受験が終わったらぴぃの話をちゃんと伝えようと、パパと幼なじみにも言っていた。
ただ、お姉ちゃんがショックを起こすかもしれないから、慎重に伝えなければならないとも思っていた。
そのために、ぴぃ自身がお姉ちゃんに伝えたいと思えるようになっていることも大事と思っていた。
受験を終えたお姉ちゃんと、最近また会う頻度が増えてきた。
2人は、失っていた時間を取り戻すように仲良く同じ時間を過ごす。
ただ、ぴぃの話の中に、隠し事や誤魔化しが垣間見えて、会話に無理があることに引っかかる。
そして何も知らないお姉ちゃんが発する中学校での話が、ぴぃへのプレッシャーになることも増えた。
ぴぃがご機嫌のタイミングを見計らって、さりげなく聞いてみる。
私「お姉ちゃんにぴぃのこと話さないの?」
ぴぃ「話さないよ!話すわけないじゃん!話すとしたら大人になってからって決めてるの。なんでそんなこと言うの?もうその話を絶対しないで!」
・・・だそうで。
正直、お姉ちゃんには隠し事をしているようで少し胸が痛い。
でも、ぴぃにはこんな事情があって、みんなと同じペースが難しいことがこれからもあると思うから、暖かく見守ってやってほしいと伝えておきたい気持ちもある。
ただこれは、「課題の分離」でいうところで考えた時、私の問題ではなく、ぴぃの問題である気もする。
パパはお姉ちゃんに悪いから、絶対的に伝えたほうがいいと思ってる。
ぴぃに内緒で伝えて、ぴぃには知らないふりをしてほしいとお姉ちゃんに強いるのも悪い気がする。
・・・急ぐことはないか。
ぴぃが中学生になって、環境が変わった時に、ぴぃがどんな選択をするか。
それを見てからでも遅くはないのかもしれない。
2人は他人であって家族ではないが、親友でも友達でもなくお互いが姉妹のような存在だという。
そんなお姉ちゃんに見せたい自分の姿。
ぴぃがどんな成長を重ね、どう変化していくか。
私はそれを見守りたい。