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娘の卒業式は奇跡ではなく成果物。
今日はぴぃの卒業式。
不登校が始まった二年前は卒業式に出れるなんて思えなかった。
とにかく当たり前が壊れていく日々の中、先の光を見つけることが難しかった。
強迫症状が再燃した一年前は卒業式のことを思わないようにした。
それまでいくらか取り戻せた日々でも、それ以上を望むのではなく、一日一日を大切にしていた。
ぴぃは今日、みんなと一緒に卒業式に出席することができた。
コロナの影響で、式に出席できるのは親族1人だけ。
パパはリモートで参加することになる。
私は会場に行き、指定された席に行くと、手作りの巾着袋の中に、ぴぃからの手紙が入っていた。
「大好きなお父さん、お母さんへ」
もうその文字を見た瞬間に、誰よりも早く涙ぐむ私がいた。
まさかぴぃが、卒業式に出席するなんて。
卒業式に向けて頑張っているぴぃを目の前で見ていたけど、今日の今日まで、絶対ではないと思っている自分がいて。
その手紙を見た瞬間に、やっと実感が湧いた。
ぴぃはしっかり駆け抜けたんだな。
卒業という目標に向かって、ちゃんと自分のペースで駆け抜けた。
昨日もらってきた通知表の出席日数は、総数の約半分の出席率だった。
そうだった、駆け抜けてた。ずっと見ていたよ。
でもいつも、それ以上を望んじゃダメだって、言い聞かせる癖がついていたんだ。
それは、ぴぃのためじゃなく、自分のために。
自分が、一喜一憂しないために。
でも、その分、何があってもぴぃは大丈夫って信じてた。
その成果が今日の卒業式。しっかり目に焼き付けようと思った。
置いてあった手紙はその場では読まず、入場を待っていると、隣の男の子と一生懸命歩幅を合わせながら入場してきたぴぃが見えた。
卒業証書の授与では、名前を呼ばれ、よく通る大きな声で返事をするぴぃがいた。
式の後半、選抜された数十人の卒業生で短い言葉を繋ぐ「呼びかけ」が大きなモニターに映し出された。
ぴぃの仲良しのお友達が数人参加してると聞いていたから楽しみにしていた。
すると、「幼かった私たちがこんなに大きくなりました!」のセリフを言っていたのは、ぴぃ本人だった。
そういえばぴぃは先週、私に「楽しみにしててね。」と言っていた。
でもそれは、この呼びかけとは別のことだと思っていた。
それを見た瞬間、それまで堪えていた涙はしっかり溢れ出ていった。
そして、また一生懸命に歩幅を合わせて退場していくぴぃの姿をしっかり見届ける。
式を終えたお友達たちと校庭で写真を撮り倒し、家族でぴぃの大好きなお店にご飯を食べに行く。
私「ぴぃが呼びかけに出てくるなんて知らなかったよ!」
ぴぃ「だってびっくりさせたかったんだもん。」
呼びかけの参加者は、立候補した子を集めて、オーディションをしたという。
そこで初めて、ぴぃは自分から望んでやったんだと知る。
あぁ、そういえば、ぴぃはそういうことをやりたがる子だった。
みんなの前に立って発表したり、お手本になって教えたりが好きで、3年生までは、毎年卒業生を送る会の実行委員になっていた。
ぴぃは最後の最後を、自分らしく終わらせることができたんだ。
と思ったら、またしても溢れ出した涙が止まらなかった。
ぴぃは最初から卒業式に絶対にでると決めていた。
これまで何度も何個も奇跡を見せてくれたぴぃ。
でも今日という日は奇跡でもなんでもないんだな。
ぴぃ、卒業おめでとう。
ありがとう。