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リノベに携わる私が旧耐震マンションを選んだ理由①:築古物件のメリットデメリット

こんにちは!建築士不動産エージェントのちはるです。

私は築52年の中古マンションをリノベーションして住んでいます。

今回は、リノベーションの仕事に携わる私が
「なぜ旧耐震基準の中古マンションを選んだのか」をお話ししたいと思います。


築古物件の選び方やリスクをしっかり理解した上で賢く購入しリノベーションを楽しんでいただきたいという想いでこの記事を書きました。

この記事が旧耐震含む築古物件を検討中の方の参考になれば幸いです。


こんな方におすすめ!

  • 築古マンションの購入を検討している方

  • 物件価格を抑えたい方

  • 築古物件の購入が不安な方


築古物件の定義とメリット・デメリット

築古って築何年くらい?

実は「築古マンション」の定義に明確な線引きはありません。

一般的には築30年以上のマンションを指すことが多いです。
現在(2024年)でいうと、1994年以前に建てられた物件が築古マンションと考えられるでしょうか。

私自身中古のビンテージ物件が好きということもありますが、
都内で築古の中古マンションのご案内をしていると【築1994年】と聞くと新しく感じてしまいます(笑)

というのも、私自身も築52年の旧耐震基準のマンションを購入し自身でリノベーションを行いました。

リノベーションしたわが家


それは、自分にとって「築古のメリット」が「デメリット」を上回ったから。
では、そのメリットとデメリットを一緒に見ていきましょう。


築古物件のメリット

① 価格が安い

同じエリア、広さの条件で比較すると、築年数が古い物件ほど価格が抑えられるのが一般的です。
立地を優先したい方にとってコストパフォーマンスの高い選択肢になります。

② 立地が良い

古いマンションほど、駅近や生活環境の整ったエリアに建てられていることが多いです。
生活の利便性が高く、資産性も維持しやすい傾向にあります。

物件探しは「妥協点探し」とも言われています。

エリア、広さ、予算、築年数…これらの優先順位を考えたとき築年数が最後に来る方はぜひ一緒に良い築古物件を探しましょう!


築古物件のデメリット

築古物件には、大きなターニングポイントになる築年数があります。
それが、1981年の旧耐震基準から新耐震基準への改正です。

旧耐震 と 新耐震とは

  • 新耐震:1981年6月1日以降に建築確認を受けている建物

  • 旧耐震:1981年5月31日以前に建築確認を受けている建物

※建築確認日は表に出てこないので分かりづらいです。
築年数が1981年前後であれば新耐震か旧耐震か不動産屋に確認してみましょう。

大きなポイントは、建物が耐えられる震度の大きさが見直されたことです。

  • 旧耐震基準:震度5程度の地震で倒壊しないレベル

  • 新耐震基準:震度6強〜7程度の大規模地震で倒壊しないレベル

築古と旧耐震基準

建物が古いことによるデメリット(=リスク)

まず新耐震旧耐震関係なく建物が古いことによるデメリットは主に3つ。

①耐震性の不安
設備の老朽化
③古い造りによる弊害

①耐震性の不安

「新耐震なら耐震性は安全なのでは?」と思うかもしれませんが、
新耐震であっても絶対安全とは言い切れません
また、旧耐震でも耐震性の高い建物は存在します。

耐震性を判断するためには、以下のポイントを確認しましょう。

  • 1981年以外にチェックする年代がある

    耐震に関する建築基準法は、主に災害や人災のたびに改正されています。ポイントとしては
    1981年の新耐震基準以外にも意識する年代があるということです。

    築古物件を選ぶ際には、旧耐震の1981年以外にも特に1971年や1995年(阪神・淡路大震災後)、1998年(建築偽装問題)の改正内容を把握しておくことが重要です。

1971年(昭和46年):
鉄筋コンクリート造の柱に入れる鉄筋(帯筋)の間隔を300㎜→100㎜(中央部は150mmで可)と狭めることによって耐震性を向上しています。

1995年(平成7年)10月
阪神・淡路大震災で多くのピロティ部の損傷結果を受けて鉄筋コンクリート造のピロティ部分の強度・じん性(粘り強さ)の割り増しと接合部分の補強が加わりました。

1998年(平成10年)6月:
建築偽装が発覚し中間検査を導入し欠陥建物を減少する法律が加わりました。

出典:(公財)全国宅地建物取引業保証協会「建物の耐震性に関する基礎知識」2008年
  • マンションの構造(ラーメン構造か壁式構造か)

    鉄筋コンクリート造のマンションの多くは柱と梁で構成するラーメン構造か壁のみで構成する壁式構造かに分けられます。

    ラーメン構造が主流といえますが壁式構造の方が耐震性があると考えられています。

    築古の物件には壁式構造で建てられたマンションも多く存在しており、この場合は構造的に有利と考えます。

  • 建物の形状やバランス

    建物の形状が複雑だったり極端に細長かったりとバランスが悪そうな物件は避けた方が良いです。
    例えばティッシュの箱を横にした状態でつついても倒れませんが縦においてつつくと倒れやすいことを想像してみてください。(分かりにくい?)

    また、1階がピロティ(柱だけで構成されている)だと構造的に弱いと考えられているので注意。

    阪神・淡路大震災で倒壊した新耐震の建物は全体の5%ほどでしたがその多くが1階がピロティの建物だったため、柱だけで構成されるピロティの弱点が明確になりました。

    ※東日本大震災ではピロティ建築が津波に耐えたことから一概には言えませんが揺れに対しては弱いことがわかりました。

ピロティのイメージ


  • 地盤のチェック

これは個人的に特に注意しているポイントです。

どれだけ建物が頑丈に強い強度で建てられていても建っている地盤が弱いと被害が出る可能性が。
地盤が弱い→具体的には液状化しやすい土地かどうかです。

液状化とは、地震によって地下水が地盤表面に浮上し、土地が液体のようになる現象です。
東日本大震災では東京でも一部の地域の地盤が液状化したことは記憶に新しいのではないでしょうか。
実際に1964年の新潟地震で鉄筋コンクリート造の県営住宅が横倒しになる事態も発生しています。
液状化により地盤が不安定になれば建物が傾いたり損壊します。
液状化は埋め立て地や砂地、川や沼、水田があったところで起こりやすいといわれます。

液状化について(ちはるまとめ)

自治体の方ではハザードマップの整備を進めており、液状化のリスクが高い地域も公表されています。

木造住宅や鉄骨アパートに比べて、鉄筋コンクリートで建てられているマンションは比較的建物の耐震性が高いといえます。
そのためマンションにおいては特に地盤の状況が実際の被害に直結した影響を及ぼすと考えています。

実際には物件エリアのハザードマップを確認して地盤の状況を確認することが大切です。

出典「東京の液状化予測図 令和3年度改訂版」https://doboku.metro.tokyo.lg.jp/start/03-jyouhou/ekijyouka/top.aspx

私はハザードや地盤の成り立ちは必ずチェックして事前にお伝えしています。


また、地盤の成り立ちも確認します。

ジオタスでおおよその地盤の歴史がチェックできます。
GEODASは、「ジオテック株式会社」が運営する地盤や地質の調査を紹介するホームページです。
このサイトでは、住所を入力するだけで、全国どこでもその場所の地盤の歴史や状態を調べることができます。

ただし、この地図はすべての場所の地盤を調査しているわけではなく調査や工事が行われた場所だけが表示されます。
ですが住みたい場所の地盤を事前に知る参考にはなるので確認しています。

🔸建物の耐震性以外で考えておきたい備え

耐震や災害は予測することが難しく、地震の周波によっても被害の結果が変わるので確実なことは言えません。

・マンションが古くても定期的な設備の点検や管理がしっかりとしている。
・避難ルートの認識を管理組合全体で共有する。
など同じマンションに住んでいる人たちでチームとして防災意識を持つことが重要なのではないかと考えています。

そして、マンションは地震が来たら高層階であるほど揺れます。

揺れなければポキっと折れて建物が壊れてしまうので実は揺れるのが正解。怖いですけどね…。

・揺れた時にものが落ちてこないように家具を固定する
・上部に重たいものを置かない
実際の被害を最小限にするにはこちらの方が重要かもしれません。

ちはるのコラム


② 設備の老朽化

築古のデメリットとして当然古いので設備面も老朽化が見られます。

専有部であればリノベーションで配管も新しくできることがほとんどですし、断熱性能も上げられます。
(その分の費用はかかりますが築25年以上経った物件でスケルトンリノベするのであれば配管更新をお勧めしています。)

専有部の配管は交換可能なことが多い。



一方で共用部は変えられないので購入前に要チェックです。
具体的には給水設備のメンテナンスをしているか、バルコニーや屋上などの防水のメンテナンス、など。

メンテナンス履歴は購入検討の際にマンションの重要事項調査票を確認して調べられます。

③古い造りによる弊害

特にリノベする場合に予め確認しておくべき点があります。

・電気容量の制限
マンションの規定電力が決まっていて電気容量が上げられないマンションがあります。
IHキッチンにしたい場合は要注意。

・天井が低い物件が多い。部屋に凸凹が多い。
古い建物は元々天井が低い造りが多いです。
リノベで床を上げるとさらに天井高が低くなるのでご注意を。

また今時のマンションは柱梁が部屋に出てこないような設計になっていることが多いですが古いマンションは梁や柱が大きく部屋に出ており部屋の形が凸凹していることが多いです。

リノベの場合はこの凸凹を考えながら設計する必要があります。

リノベの場合は天井の高さも凸凹も”その建物の味”になり得る場合も。
デザインに活かすのも面白いですよ!



まとめ

築古物件には価格や立地の良さなどのメリットがある一方で、耐震性や設備の老朽化、住宅ローンの審査などのデメリットも存在します。

築古や旧耐震デメリットを包み隠さず伝えていくと盛りだくさんになってしまい少し難しい内容になってしまいました。泣

ここまで読んでくれた方、ありがとうございます!

特に耐震や地盤に関しては基本情報+私の見解を書いたので余計分かり辛くなってしまったかもしれません…!

ですがどれも私が旧耐震を選んだ理由の一つになるので書いてみました。
分かりにくい部分があればぜひコメントくださいね!m(_ _)m
いいね!も励みになります。



次回は、旧耐震物件が住宅ローンや税制優遇でどのように影響を受けるかについて詳しく解説します。
そしてそのようなデメリットをどう捉えて克服するか、私の具体的な考えもご紹介します!

築古旧耐震マンションを選び、リノベーションした経験が少しでも皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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