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②アドレナリンを適切に投与しよう!
アナフィラキシーの症状, 診断基準は理解できましたね. 理解したものの, 現場では「アナフィラキシーかも?!」と思うことはできても, アドレナリンを投与するというアクションに躊躇してしまうことが間々あるのではないかと思います. そのため, もう少しシンプルにアドレナリンを打つべきタイミングを頭に入れておきましょう.
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アドレナリン投与のタイミング
アナフィラキシーと判断したのであればアドレナリンを使用します. ときどき, アナフィラキシーショックであればアドレナリンを使用するけれども, ショックではない, 血圧が保たれている状態では使用しないと勘違いしていることがありますが, それは間違いです.
皮膚症状, 呼吸器症状, 循環器症状, 消化器症状, これらが急性に認められる場合には, アナフィラキシーの可能性をまずは考えることと前回述べました. 覚えてますね?!
アナフィラキシーによって心停止など重篤な病態へ陥るまでには時間が数分から数十分と限られるため, 早期に疑い対応する必要があるのです.
アナフィラキシーかも?!と思ったらアドレナリンを用意し, 使用しなくてもよいという根拠がない限りは投与するようにしましょう. 正しく使用すれば副作用を恐れすぎる必要はありません.
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アドレナリンの投与方法(成人)
アドレナリンは『大腿外側に0.5mg筋注』です. 肩ではありません, 0.3mgでも1mgでもありません, 皮下注でも静注でもなく筋注です(1).
投与部位, 投与量, 投与経路は確実に覚えておきましょう. エピペン®を思い浮かべれば投与部位は間違いませんよね. 投与量は以前は0.3mgで, エピペン®も0.3mgですが, 現在は成人では0.5mgが推奨されています. 小児の投与量が0.01mg/kgであることを考えれば, 成人では0.5mgが妥当ですよね. その場にエピペン®しかない場合には0.3mgでOKです.
投与経路, これも非常に大切です. 皮下注では筋注に比べ, 最高血中濃度に到達するまでに5倍以上の時間がかかってしまいます. また, 静注してしまうと異常な頻脈や致死的不整脈を引き起こしかねません. 正しく使用しましょう.
初期研修医の先生がアドレナリンを使用するのは, 心停止に対する1mg静注でしょう. アナフィラキシーの場合には筋注, そして0.5mgであることを正確に理解しておきましょう.
2021年の10月, 千葉市で10代のアナフィラキシー患者に対してアドレナリンを筋注ではなく静注し, 心停止へ陥った事例が発生しました. 使用するタイミングは合っていても投与経路や量を誤れば事態は悪化してしまいます. この事例は事故調査・検証報告書がまとめられていますので, ぜひ読んでおきましょう(2).
アドレナリンは大腿外側, 0.5mg, 筋注です!
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参考文献
#1. 日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン 2022.
https://www.jsaweb.jp/uploads/files/Web_AnaGL_2023_0301.pdf
#2. 救急活動時の救急救命処置による事故調査・検証報告書. https://www.city.chiba.jp/somu/shichokoshitsu/hisho/hodo/documents/220311-3-2.pdf
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