建物構造によるピアノ音響の違い
アップライトピアノでもグランドピアノでも共通して言えるのは、木造のほうが音響調整がしやすく、プロのピアニストの評価が高いのは木造軸組在来工法です。
私の小中学校時代は、音楽室は木造でした。高校の音楽室はコンクリート構造の校舎でしたが、音楽室だけは、内装はすべて木造でした。
大半がピアノの音響を考慮して、経験則で内装構造が決められていたと思います。昔の人は、木材そのものが良質な音響調整材であることを知っていたのでしょう。
マンションでのピアノ音クレームは大半が重低音伝播
低周波を含めた重低音は、高齢者になっても普通に聴こえる周波数なので、特にマンションでは防音対策として重要になります。
逆に木造では、普通に音響・防音設計をして施工すれば、近所への重低音伝播は少なくなります。むしろ、直近への中高音伝播がクレームの対象になることが多くなります。
これは木造とコンクリート構造の構成素材の特性の違いによるものです。
建物構造や工法によるピアノ室の音響上の特性を踏まえることが、防音設計及び防音工事の大前提になります。
木造軸組工法とツーバイ工法では音響・防音対策が異なる
木造でも、工法によってピアノ室の音響はかなり違います。ツーバイ工法では建物そのものが共振しやすいので、防振対策にかなり費用がかかります。
通常の木造軸組工法より、ツーバイ工法は音響調整だけでなく防音対策そのものが難しくなり、費用がかさみます。
対策が難しいのは、ピアノから伝播する固体音(振動音と直近の壁・床に直撃する放射音)ですが、木造の場合はすべてを物理的に遮断できたとしても、ある程度は建物全体に伝わるように防音設計します。
それは、適度な音響を確保するためです。プロのピアニストが評価するように、木造ピアノ防音室は木材を駆使して良好な音響を確保することが最も重要なのです。
ツーバイ工法は、木造でありながら構造体が太鼓のように共振しやすい部材で構築されるので、特に音響調整に苦労します。なので、プロは「木造軸組在来工法」を選択する人が多いのです。
防音設計・施工の手法としては、ツーバイ工法は防振対策重視型であり、軸組工法は音響・防音のバランス型になります。
*参考:防音設計・施工事例
費用対効果で見ると、木造軸組工法のほうが圧倒的に有利です。ピアノ防音室単独で考えるなら、ピアニストが指摘するような評価を考慮して建物工法を考えるべきでしょう。