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木造2階のピアノ防音室の想い出

あらためて、今までの依頼者の声を読み返してみました。その中で、とても印象的な感想をいただいた神奈川県内の木造ピアノ音楽室(防音室)の特徴を振り返りたいと思います。

依頼者の言葉:「学生の頃や音楽の仕事場など、色々な防音練習室でピアノを弾いてきましたが、思えば、音色の想像はしながらも、視覚優位に一生懸命「音」を出している感覚でした。 この度作っていただいた防音室では、弾くと同時に対話をしている様な、音色に包まれる感覚に驚き、聴覚優位の「音色」だと感じました。
木のお部屋に包まれながら、改めてピアノは木の楽器だったなぁと、これまでには気づけなかった体感をすることができました。 低音の振動は深く、高温は(ピアノの機種もありますが)クリアながらも柔らかな響きと感じました。 私自身も生徒さんも『豊かな響き』が今後のテーマでしたので、皆で会話しながら、体感しながら、よりピアノを深く学んでいきたいと思います。」

小さな木造住宅の2階の部屋と向き合う

難しい現場のご依頼に向き合う勇気を与えてくれたのは、今まで頂戴した依頼者の率直な声および提携先の建築士・職人を含めた経験値です。
上記の依頼者の声のほか、地方の現場からも「なぜ防音職人さんが防音室と呼ばないで音楽室と呼ぶのか理解できました」という感想をいただきました。それは、近所やご家族への防音対策の配慮は当然必要な機能の一つであるので、これを含めて「木造音楽室」と呼びたいと思いました。

防音職人のテーマは小さな木造の音楽室でも良好な音響と遮音効果を確保することです。グランドピアノを入れる部屋として、約5帖から6帖の部屋を支える構造柱など制約条件をクリアするには、制約と考えるのではなく、木造家屋の特徴である柱・梁の位置を変更しないで、むしろ補強することで、音響と防音効果の調和や耐久性を確保する工法を選択したい。

このためには、やはり現場の建築士と職人の判断力や技能が不可欠です。それを活かすのが私の役目です。木造の防音設計に際して、現場担当の建築士と職人が安心して施工できる提案でないと良い木造音楽室は造れないと思いました。

音楽教室のピアノの先生の耳は優れたセンサー

音響効果を検証するには、依頼者であるピアニスト(音楽教室の先生など)の声を活かした設計仕様・施工要領をレベルアップすることが重要だと考えました。そして現場にフィードバックさせて繰り返し検証する積み重ねによって補正していくことが重要です。地道な作業となります。依頼者・現場の建築士・職人みなさんの協力がないと出来ません。

中でも、ピアニストの耳は、私や建築士・職人も気づかない微妙な音響を感じ取ることができる優れたセンサーのような機能を持っています。
ピアニストの経験や音楽室への評価が、私には非常にありがたい貴重な資料です。どんな立派な専門書や設計マニュアルにも載っていません。

そして、私の希望する木製の資材を確保してくれる建築会社・建築士・職人・問屋・製材所は、木造ピアノ防音室を造る大きな支えになります。
日本全国には優れた木材・木製品があります。
現場の施工を担当する建築会社を選ぶ場合は、木造の実績とともに、木造建物が好きかどうかが重要です。

施主のみなさんは、以上の内容を参考にして、良い業者を探していただければ幸いです。そして、施主の話をよく聞きながら提案してくれる建築会社と契約できれば安心だと思います。

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