無垢杉材と木造ピアノ防音室
出来るだけ天然素材でピアノ防音室を造りたいという想いには、いくつかの理由があります。
海外では普通に木材が多用されて、殆ど防音材を使用しないピアノ室を木造で構築します。
日本の場合は、木材資源が豊富な国であるにも関わらず、「防音室」という言葉を意識しすぎて、「木材は防音に弱い」と思い込み、間違った方向へ走ってきたという反省が、我々専門家にはあるように思います。
しかもピアノ防音室に必要な補強材として構造用合板がありますが、接着剤を使用した合板類を、健康上の理由で使えない施主も世の中には居ます。
この場合は、専門家としてどのような対策が出来るかが、木造ピアノ室を設計する立場として、本当の力量を問われていると言えると思います。
しかも、吸音材にロックウールが使用できない、防音材の大半が使用できないという制限の中で、どのような音響・防音設計が出来るかという問いに対して、明確な答えを追求してこなかった。
木材資源国として有利な環境を活かしてこなかったという点は、専門家として努力不足という責任があると思います。
前々回「固体音・制振材」というテーマで記事を投稿しましたが、木材とこの安全な吸音材・制振材(PETウール・フェルト材、ヴァージンフェルト)の活用に、私は打開策を求めてきました。
ようやく、ある程度の防音効果を確保する設計仕様・施工要領を作ることが出来ました。
ピアノ室における無垢杉材など木材の活用
杉材には二次共振を抑える特性があり、軸組材・板など面材として、ピアノ防音室に非常に相性の良い製品・材料です。
適度な吸音性と制振性能を持つ杉材は、良質な音響素材でもあります。
構造用合板が使用できない場合は、杉板の木目の方向を変えて2枚重ねて施工することで必要な剛性も確保できます。
しかも、音を適度に吸収するため、床材・壁面材として、防音効果を高める作用があります。
防音壁に杉材の軸組と下地材を組み合わせることで床と壁の共振を抑えながら、音響調整や吸音性を高めることが同時に期待できます。
これに安全な吸音ウール・高密度フェルトを組み合わせれば、防音材も最小限に抑えることが可能になります。
課題としては、隙間対策として、出来る限り安全な材料で隙間を埋める施工要領を提示する必要があります。
また、音楽防音室(ピアノなど)を、できるだけリスクの少ない位置に配置する間取り計画が不可欠です。
フェルト・PETウールとの相乗効果
高密度フェルト材には、制振および絶縁効果があり、この製品と杉製品を組み合わせることで、ピアノ室の床と壁の防音構造を構築することが考えられます。
しかも、石膏ボードに比べて軽量なため、木材の軸組構造への負担も少なく、木材の面材との相性も良いため、相乗効果が期待できます。
音響効果にもプラスに作用するため、ピアノ室には向いている素材だと思います。
防音職人では、上記の製品を3種類確保して、担当現場で活用しています。制振材は全て受注生産品です。2社の専門メーカーと取引しています。
ただし、専門的な遮音材を殆ど使用できない場合は、通常の標準仕様よりも防音効果は少し落ちますので、ピアノの演奏時間帯の配慮やピアノ室の配置が重要となります。
日本の住宅事情では、簡単ではありませんが、新築計画の段階から最善を尽くすことで、出来る限り条件の良い部屋を用意することが望まれます。
防音職人では、これからも木材と高密度フェルト材等の長所を活かす提案を心がけたいと考えています。
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