音の周波数帯と防音設計
投稿した画像は、声楽・楽器防音室(音楽室)の設計資料から抜粋したものです。低い周波数から高い周波数まで重要なポイントをチェックするための目安です。※取引先からいただいた資料を一部加工したものです。
ご覧のようにピアノは、音の主成分が幅広い周波数帯にまたがっており、約30Hzから約4500Hzという音域の広い楽器であることがわかります。
この特性は、木造音楽室の防音設計を行うために、特に考慮すべき重要事項となります。
幅広い周波数帯における遮音性能を確保するには、偏りのある防音材や建築材だけでは弱点が生じるため、補完したり、相乗効果を出すことができるように、音響・防音構造を設計する必要があります。
ピアノ防音室を標準とした設計
画像に示された声楽・楽器の特性を見ると、ピアノ防音室の標準設計を満足するような防音構造を構築すると大半の問題は解決できることがわかります。
このため、防音職人では木造のピアノ防音室の標準設計仕様を確立することに主眼を置いて取り組んできました。
薄いコンパクト防音仕様についても、「上記の画像に示された周波数帯」の対策を概ねカバーできるように工夫しています。
ただし、注意しなければならないのは、今まで述べてきた内容は主に空気伝播音(空気音)に対する遮音対策ですので、床などから伝わる固体伝播音(固体音)に対する備えは、別の観点から補強する必要があります。
この固体音が比較的強く出る楽器は、ピアノ・チェロ・コントラバス・マリンバ・ドラムです。
使用する楽器の種類によって、床などの防振・音響対策を重点的に行うことが重要になります。
床の音響対策は木造が有利
床の防振対策を強化しすぎて音を殺してしまうと、木造音楽室の価値が大きく低下します。それがプロピアニストには不満であり、木造軸組在来工法を好む理由が、そこにあります。
ツーバイ工法では音が共振してしまい、音響調整が難しくなるだけでなく、床から伝わる固体音が戸外に拡散して遮音対策も難しくなるのです。
また、コンクリート・鉄骨構造は固体音を伝えやすいため、音響と防振対策のバランスが難しく、防音室の構築費用も嵩みます。
ピアニストが好むナチュラルな音響は、木造軸組在来工法で造ることが最適であり、プロの音楽家が推奨する理由と一致します。
木造の音響対策は、床下空間および床下換気を確保する伝統的な工法で最適化することが出来ます。むしろ、床下空間や天井裏空間を確保しながら音の反響や減衰効果を調整しながら設計・施工したほうが費用対効果が高くなります。
音楽防音室の間取り・配置に留意すれば、新築木造住宅に計画的に併設することが出来ます。リフォームよりもコストを抑えることが可能です。