ピアノ防音室における有孔ボード活用
最も古典的なピアノ防音室の設計仕様に「有孔ボード(穴開き合板)仕上げ」があります。昔の木造音楽室(ピアノ・金管楽器など)に使われていました。
有孔ボードの音響・防音効果
有孔ボードには吸音材とセットで音を吸収すると共に、低音から高音までの音響を調整する効果があります。精密測定して分析すると、概ね125Hzから250Hz付近の音を減らす効果があり、高音域の反射音を抑制する音響効果があるようです。
昔の設計では、有孔ボードの背面にグラスウールを充填していましたが、最近の設計仕様では健康面の配慮や耐久性を重視してPETウール(ポリエステル、ポリエチレン繊維)が使われます。写真の有孔ボードパネルは私が設計したものです。主にアップライトピアノの背面の壁に立て掛けて音響調整及び吸音目的で配置します。
これによって、軽量な構造でありながら、効果的に音を軽減できます。パネル化して既存壁面に取付けて、簡易的な防音工事が出来ます。私の現場では、このパネルの背面に薄い遮音層を施工して、防音効果を強化した事例があります。目的はDIYなどの簡易施工によって、依頼者が自分で音楽室を構築することです。
有孔ボード活用の留意点
昔、私の現場を担当していた職人チームが、私の計画書を読み間違えて、有孔ボードの後ろに捨て貼り合板を張って、吸音材を封じてしまい、吸音効果が半減したことがありました(笑)。
このため、私が自腹でPETウールのマット状の製品を依頼者に提供して、アップライトピアノの背面と側面に設置していただき、音響調整をしたということがありました。それ以来、職人への指示書には大きく赤文字で「不明な点は必ず防音設計担当者に確認すること」と目立つように書き加えるようになりました。
音響・防音効果の意味が理解できない職人には、有孔ボード自体の使用目的が理解できていなかったのです。年齢的に古い音楽室の設計・工法を知らない世代だったのです。
有孔ボードの後ろには捨て貼りをしないで直接吸音材を設置するのが基本です。有孔ボードを表層材として面材の上に仕上げる場合は、あくまで高音域の反響音を調整する目的に限定します。
若い人は、昔の古典的な手法の現場を余り経験していないので、一度試験的に自分の工房・作業場に造って設置してみると、効果が体感できます。