木造の防音壁の事例(基本とリスク)
私が初めて防音設計の専門書を閲覧したのは、約28年前の会社勤め時代でした。まずは基本的なマニュアルと建築学会関係の書籍(雑誌を含む)の概要をチェックして、重要な部分を抜き出してファイルにしました。
その中で、30年以上前に発刊された遮音設計マニュアル(建物の遮音と防振)の中で、リスクのある防音施工と建築材について注目しました。
これらの専門情報や事例が、のちに私が独立開業する時に直接的に役立つとは、当時は思っていませんでしたが、入手した情報は私の大事な知識の財産になっていたのです。
木造住宅の防音壁の事例
設計マニュアルには、発泡材を天井裏や壁内にいれると防音効果が低下すると明記されていました。建築学会のリポートには遮音シートの設計事例が掲載されていましたが、音響学会では、それを否定する検証データの報告がありました。私は複数の専門的文献と実験データの方を重視しました。
建築学会は建築士の報告事例が多く、実績としては歴史が浅く、とても古いマニュアルや音響学会の研究者が研究した専門的事例や定石には及ばないだろうと思い、その実践的な研究を私が独立開業後に検証しました。
やはり、古い設計マニュアルと音響学会の報告のほうが正しいことがわかりました。リスクと基本(定石)は正しく評価しなければならないのです。正しい定石は、現在も生きています。
私の防音相談で実際の依頼者の現場を調査した事例ですが、先に防音工事を行った業者が失敗したのです。まさに基本とリスクを軽視した内容でした。壁の内部には発泡材が充填され、効果のない遮音シートと石膏ボードが重ねて施工されていました。依頼者は「防音工事なんて、効果がないと家族みなで諦めていました」と言われました。
正しい防音設計を私が立案して、地元の大工職人に防音材と一緒に渡して再施工したところ、低予算で十分な防音効果が出たので、施主とご家族は大喜びされました。
基本とリスクは専門家に聞け
実際に多くの木造防音設計を手掛けている専門家に相談することが重要です。その専門家のホームページを見れば必ず実例の説明と設計理論が記載されているはずです。該当するコンテンツが無ければ、その専門家は該当しないと見るべきです。
くれぐれも、見た目の業態の規模や知名度だけで判断しないように留意してください。私の防音相談の中には、大手メーカーや防音工事専門会社が失敗して逃げた案件があります。中には見苦しい言い訳をして、担当者が「そんなはずはないと繰り返しつぶやいていた」という実例を、私は何回も見ています。鉛の遮音パネル会社、防音室施工会社、大手楽器メーカーなど。
ひどいのは、契約を施主に断られた専門業者がストーカーのように、施主に何回もメールと電話で連絡してきた事例があります。そんなことしたら逆効果です。
判断に迷ったら、別の専門家にセカンドオピニオンとして依頼すべきです。必ず、専門家には得意分野というものがあり、「私は万能ですと、誇大広告する」ような専門家はいません。
まっとうな専門家ほど「基本とリスク」を重要視します。いつの時代も「定石である基本」と「リスク」は必ずあります。どんな分野でも同じです。
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