MEGA SYNTHESIS CHALLENGE番外編:DUAL SYSTEM
今から少し前のお話になりますが、私はすごく悩んでいた。
ものすごくものすごく悩んでいた。
何に悩んでいたかって?
そりゃあ、2台目のMEGA SYNTHESISを購入するかっどうかってことでしょうがっっっ!
すみません。
とりみだしました。
ええ、そうです。
世の中のアレやらコレやらソレの影響でMEGA SYNTHESISを含めたLIVENシリーズが値上げされてしまうってお話だったんですよね。
税込29800円から37800円と、なかなかな価格改定。
いやまあ1台でも十分なんですが、2台あると完全なるメガドライブの再現が可能ってことでして・・・
と言うのもMEGA SYNTHESISでは同時発音数は問題ありませんがFMトラックが最大3つまでの同時使用(メガドライブはモノボイスx6FMトラック)なので、完全なる再現は行えないってのもあったりしまして・・・
っと、このままだと前置きが長くなってしまうので結果から言うと、ギリ価格改定寸前のタイミングで2台目を購入してしまったワケです。
今まで同一機材の2台使いとかしたことなかったんですが、ちょっとこれ(2xMEGA SYNTHESIS)は気になりすぎるって事で。
まあ1台目のFMバンクもPCMバンクもパターンも埋まりそう(パターンに関しては既存のものをバックアップの上、消している状態です)ってのもあって、管理しやすい感じにしたかったってのもあるんですが。
ちなみに1台目(発表から数時間で予約)のシリアルナンバーは2桁台、2台目は4桁後半でした。
必ずしもシリアル番号=生産台数とは限りませんが、かなりの台数が生産され、世界中の愛用者の手元に届いている感じですかね。
てな感じで2台のMEGA SYNTHESISシステムになったのでメガドライブ曲の完全版を作るってのも良いかなーっと思ったんですが、やはり2台の本体って事で、これはもうマイバンド、ヤング・フラッテリィズの曲[DUAL KORE]をやっちまうしかねえなあ・・・って思いまして。
2つのコア(CPU)をイメージした曲なので、状況にピッタリなワケです。
1台目のMEGA SYNTHESISではベースやメインのバッキング、そしてサンプリングしたPCMトラック(主にキックとスネア)とPSGのノイズによるハイハットを担当。
サンプリングにはキック、スネア、オープンとクローズのハイハット、シンバルなど一通り入ってたのですが、状況によってPCM同時発音数の3音を超える場合があり、ハイハットをPSGトラックに分離、またシンバルに関しても後述のSmplTrekへ分離しました。
2台目のMEGA SYNTHESISではサブのバッキングトラック、そしてDUAL KOREの要とも言えるサビ部分でのロボットボイスをPCMサンプリングしています。
BPMは変更しないので当初はフレーズ丸ごとサンプリングしていたのですが、単音だと色々と遊べるので1音ずつのサンプリングに変更しました。
フレーズのサンプリング時間の問題でサンプリングレートは12kにしています。
これが良い感じに荒れてロボットボイス感が出たんじゃないかと・・・
またPSGトラックに関してはメインのメロディーを打ち込んでいますが、これまた後述のROLAND E-4でボコーダー&ハーモナイザーを制御するためのMIDIノートを送信するトラックとなっています。
そのため、本体ではボリュームは0(トラックミュートをするとMIDI送信もミュートされるため)にしています。
次にパターンの制御について、MEGA SYNTHESISではパターンのチェイン機能で連続したパターン再生が可能になっていますが、1つのチェインループの中に同じパターンを2回出すことはできないんですね。
例えば[P1-P2-P3]はできても[P1-P2-P3-P2]はできないんです。
これをやる場合はP2をコピーしてP4として作成してチェインに組み込む必要があります。
DUALKOREはイントロ‐Aメロ-Bメロ-サビ‐ブリッジ-Aメロ-Bメロ-サビ-間奏・・・の様な構成なので同じパターンが複数回出てきます。
かといって2台を同時に手動でパターン切り替えをするのも大変・・・
パターン制御をするのに何か良い方法は無いものか・・・と、ここであることを思いつく。
「あ、そうだ。SmplTrekからパターンを制御すればいいんだ」
普段は機材の出力を録画用カメラにUSB送信するブリッジとして使用しているSmplTrekですが、シーケンサー内蔵だしMIDIトラックからプログラムチェンジやCC番号も送信できるし、これほど適合する機種はないんじゃね?みたいな感じですね。
具体的には1台目と2台目それぞれでプロフラムチェンジ(パターン切り替え)を受け付けるMIDI CHを設定し、そのCHごとのMIDIトラックをSmplTrekで作成。
SmplTrekのシーケンスに組み込んだプログラムチェンジで再生するパターンをそれぞれ制御します。
その他、MIDIクロックとトランスポート(再生・停止)、シーンごとに展開(Aメロ、Bメロなど)を制御しています。
SmplTrekにはMIDI出力は1系統なのでMIDIをチェーン接続し、それぞれのチャンネルで情報を受け取るように設定しました。
まず1台目のMEGA SYNTHESISではPCを15CHで受け取る設定に、2台目は16CHで受け取る設定にします。
※MIDI CH関連はMEGA SYNTHESISのMIDI CH項目で設定できます。
PCに関してはこの設定をしますが変更の必要がないトラックに関してはOFFの設定をしておきます。
これは不意に変な変更が発生しない様にする為です。
次に1台目のMIDI OUT端子から2台目のMIDI IN端子にケーブルを接続し、1台目のMIDI OUT(M.OUT)をOUTからTHRU(スルー)に設定します。
これによりSmplTrekから送信されたMIDI信号のうち、1台目のMIDIチャンネルに絡まないものが2台目にそのまま送信される様になります。
1台目と2台目で同一のMIDI CHを設定しており、そのCH宛に信号が送信されると両方同時に変更が発生してしまいますのでCH設定時はチェックシートなどを作っておいたほうが良いでしょう。
尚、MEGA SYNTHESISの仕様の為かパターンを切り替えるタイミングでPCを挿入すると、現在のパターンを再生し終わった後にパターン切り替えが実行されます。
例えばシーン1の頭でPT1を、シーン2の頭でPT2を設定するとシーン2になった時にMEGA SYNTHESIS上のディスプレイはPT2の名前が表示されますが、現在鳴っているPT1の再生が終わるまでPT2に切り替わりません。
これはおそらくMEGA SYNTHESIS(およびLIVEN)の「パターンの切り替わりは現在のパターン再生完了後に行われる」と言う仕様が影響していると考えられます。
シーン2の頭でPT2に切り替わるPCを送信するものの、その瞬間にPT1は再生スタートしており、PT2は待機状態となるのでPT1の再生が終了した後にPT2の再生が行われます。
その為、PCはシーン切り替えタイミングや切り替わる小節そのものではなく、その1小節手前(シーン切り替え時の場合は前シーンの最後の小節)にPCを入力しておきます。
下方にある動画でもパターンネームの切り替えタイミングが展開切り替わりの少し前になっている事を確認できます。
尚、ステップごとのノート長は1/16ではなく1/4にしています。
16分音符だと最大で8小節(1シーン128ステップなので128÷16=8)となりますが、4分音符にすると1つのシーン(展開)32小節まで引き延ばせる為です。
それ以上の間隔にするとシンバルを4分音符で鳴らせないなどの弊害が出てくるため、この設定を施しました。
続いてCLOCKのSRC設定をINT(インターナル)からMIDIに変更します。
これによりSmplTrekから送信されたトランスポートやMIDIクロック情報が本体で受信されるようになります。
この設定は2台ともにほどこしますが、これを設定する事でシーケンスの再生開始や停止をSmplTrek側で制御する形になります。
2台目に関してはPSGトラック(トラック4&5)にメインメロディーとコーラスパートのメロディを打ち込んでいます。
上述の様にこれらは鳴らすのではなく、MIDI OUTから接続したROLAND E-4 | Voice Tweakerに送り、E-4上でボコーダー&ハーモナイザー(最大4声和音)を鳴らすための制御信号としています。
その為、PSGトラックは2つとも同じMIDI CH(9CH)に設定しています。
1番と2番でコーラス部分のメロディが違うため当初はそれぞれにメロディを打ち込んだ後、SmplTrekからミュート用CC番号を送信して制御することを考えていたのですが、E-4には同一MIDI CHで送信しなければならないので、これを断念(SmplTrekからのCC受付は別CHで設定できてミュートも個別設定で行えたがE-4へのMIDI出力の為に2つのトラックのMIDI CHを同一にする必要があった為)。
手動でのミュートでも良かったのですが極力本体操作をしない様にするため、1番と2番それぞれのパターンを作成しました。
これは3番でフレーズが追加されることになる1台目のパターンでも同様の方法をとっています。
当初の予定だとリアルタイムに歌って動画を撮ろうとしていた為、E-4の出力を2台目のLINE INに、2台目のLINE OUTを1台目のLINE INに、1台目のLINE OUTをSmplTrekにと言う形でつないでいたのですが、最終的に「忙しすぎる」って事でリアルタイム操作を断念し、ボーカルだけ先に録音してしまう事に。
この録音はSmplTrekのグローバルトラック(1プロジェクトに3本ある録音トラックでシーンをまたいでの録音ができる他、1トラックごとに3つのバーチャルテイクトラックがあり、再生部分の選択や分割・統合、ボリューム変更などができる)に行っています。
グローバルトラックに対してディレイやリバーブなどのエフェクトを加えられるのでE-4でのリバーブ処理は行わず、ボコーダー&ハーモナイザーの音のみを録音しています。
まあボコーダーっつうか、メロディラインを強制的に(音程のズレなく)つけるための機械ですね。
今回はやっていませんが、ぶっちゃけ録音するときは声さえ出せてれば音程を唄う必要はなく、フルフラットでボーカルを唄っていても理論上はしっかりとメロディラインを作り出してくれます。
まあそうすると時折違和感は発生しますが、そこがまたロボットっぽくて良いのかも、と。
ちなみに今回初めてに近い形でグローバルトラックを使ってみたのですが、かなり使い勝手が良いですね。
録音後に処理時間が発生することはあるものの録音自体はのサクサクできるうえ、Vトラックでテイクごとの撮り直しも可能ですし、(今回は利用しませんでしたが)分割とか統合とかも簡単そうです。
録音に関してはSmplTrek側でプリカウントを設定しておけば「1小節後に録音開始する」みたいな使い方もできるので、まさにポケットMTR感覚で利用できました。
ただし編集画面が小さいので寄る年波勢は拡大鏡必須ですな。うん。
この他、SmplTrekではSHOTモードにてクラッシュシンバルをロードし、特定タイミングで鳴らしています。
これはMEGA SYNTHESIS側でのパターン削減に関する部分、およびPCM同時発音数上限の影響です。
とまあ色々と試行錯誤とケーブルモンスターになりながらヤング・フラッテリィズのDUALKORE -DUAL MEGA SINTHESIS EDITION-の完成と相成りました。
2台のマシンをそれぞれで動作させて打ち込んでいくので時折「あれ、今どっちの打ち込みしてたっけ?」みたいな事が発生しますが使用感というか制約の解除、特にPCMトラックが倍になるのは非常に助かりますね。
またSmplTrekに関してもMIDIでの外部制御、そしてグローバルトラックによるMTR的利用法など、非常に面白い使い方を模索できそうです。
何より、今回使用した機材(MEGA SYNTHESIS、SmplTrek、E-4)は全て電池駆動(E-4は内蔵リチウム)するので、例えばこれにポータブルスピーカーなどがあればどこでもライブができるのが非常に魅力的ですね。
いつかどこかでポータブル・ライブ、やってみたいなあ。
これが完成した動画。
E-4に関してはボーカル録音時にスキャッター機能を入れていたのですが、動画ではその再現として操作をしているテイ(実際はマイクもつながっていない)となっています。
あと、間奏のところでデュゥゥーアァァァールウゥゥゥ~♪ってのの音程を無理やり変更してみたり。
通常PCMトラックのDRUMモードでは音程変更はできませんが、SWEEP CURVEをSQARに設定し、RANGEを回す事で最大1オクターブ上の音程まで作り出すことができます(SPEEDは0)。
MEGA SYNTHESISはメーカーのSONICWARE社では記事執筆時では在庫希少ながらあるみたいですので気になった方は是非チェックを。
MEGA SYNTHESIS製品ページ
SmplTrekに関しては通常在庫としてあるみたいですね。
今回、外部制御シーケンサーとしての新たな一面を見いだせて色々と研究しなおさねばって感じです。
SmplTrek製品ページ
ROLAND E-4に関してはAIRA Compactの中ではかなり地味な存在だと思いますがボーカルエフェクターとして楽しい使い方ができるんじゃないかと思っています。
シリーズの中ではこれだけ異質な感じはしますけどね。
E-4 Voice Tweaker製品ページ
今回使用した機材はAmazonでも購入可能です。
お近くの楽器店などで在庫がない場合とかにチェックしてみてください。
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