ショートショート「時計バトル」
人々が時計でマウントを取り合いはじめて幾星霜。
ついに時計達が立ち上がった。
「我々の真の価値。それはブランドや価格ではないはずだ!」
「そうだ!我々の真の価値!それは正確性!狂いなく時を刻む事こそ、時計である我々の真の価値だ!」
立ち上がった時計達は、己の正確性を競い合う「時計バトル」の開催を打ち上げた。
どれだけ長い時間、狂いなく動き続けるか。
千分の一秒単位の正確な時刻表示。
時計達は毎日のように戦い続け、人々は時計達の戦いに巻き込まれ日々の手入れを時計達に強要されるようになっていった。
その要求は高級な時計になればなるほど厳しいものになっていき、いつからか高級時計を持つものはクロノバトラーと呼ばれ、時計のために全てを捧げた人々だけが所持することが許される時計となっていた。
そんな時計バトルが苛烈さを増し続けた現在。
全ての時計が正確性を磨きすぎた結果、正確性は億分の一と言うもはやクロノバトラーですら認知できない領域に達してしまい、バトルの勝敗を決めることは出来なくなっていた。
そして、時計達のバトルは新たな境地へと達していた。
針の回転速度だ。
どれだけ、針を早く回せるかを争い始めた時計達。
クロノバトラーたちは、時計が巻き起こす針嵐でお互いの時計の強弱を争う。
そこに「時間を表示する」時計は存在しなくなってしまった。
ついに、時計マウントはなくなり、クロノバトラーと一般人は違う世界の住人となったのだった。
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