ショートショート「モノマネ金庫」「モノマネ銀行」
「大切な金庫」
モノからコトへ移りゆく時代。
そんな時代でも大事なモノは大切にしたいと思うのが人の心。
そんなニーズに応えるように金庫が密かなブームになっていた。
さまざまな金庫が発売される中、インテリアに調和しつつ防犯にもなる
「モノマネ金庫」が発売された。
モノマネ金庫は、モノを中に入れたあと一定時間モノマネさせたいモノを
見せるとその形に姿を変える。
観葉植物や動物などにも姿を変えられ、どう言う仕組みか成長したり動いたり
本物と見分けがつかなくなるほどだった。
モノマネ金庫をライオンや樹木など、様々な形に変えて大事なモノを
大切にしまう様になった人々。
けれど、しまう事に夢中になり、あれこれしまう内に
どれが本物で、どれが金庫かわからなくなってしまった。
さらに、何をどの金庫にしまい、何に変化させたかまでわからなくなってしまい
大切なモノは、いつまでもいつまでも大事にしまわれ続けることになった。
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「モノマネ銀行」
ここはモノマネ銀行。
モノマネを貸し借りできる銀行である。
モノマネを借りて、宴会の席を盛り上げたり、
モノマネ芸人として名をあげる足掛かりにしたり
モノマネを貸して、その利子で暮らしたりと
モノマネ経済圏が発達していった。
どんな小さなモノマネでも貸し借りが出来るので
モノマネは天下の回りものになっていった。
モノマネ経済圏が大きくなるにつれて、重大な社会問題が発生し始める。
多重債務だ。
モノマネを借りずぎて、利子が払えなくなるのだ。
モノマネ利子は、借りた時とは違うモノマネで返さなけばならないのだが
モノマネを長期間借りてしまい、利子が増え
モノマネのハードルが上がり過ぎ、なかなかモノマネを返せなくなる。
そこで、新たにモノマネを借りてはモノマネを返すのが
モノマネ多重債務だ。
結果、モノマネ経済はモノマネバブルが弾け、崩壊してしまうのだった。
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