光のお父さんと感想
劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん
と言う、作品をご存知でしょうか?
タイトル通り、ゲーム「ファイナルファンタジーXIV(以下FF14)」をベースに人間模様が描かれる、ヒューマンドラマです。
元々はFF14のプレイヤーである「マイディー」さんの個人ブログ
「一撃確殺SS日記」
で連載された「光のお父さん計画」と言う企画が始まりでした。
その内容とマイディーさんの軽妙な書き口が好評でFF14プレイヤーの間で話題になり、書籍化、TVドラマ化、そして今回紹介する映画化にまで至る、壮大な物語になりました。
じぶんもFF14をプレイしていて、話には聞いていて興味はありましたが、知るのが遅く、後述するTVドラマ版「光のお父さん」で初めて触れました。
その後、映画化を気にマイディーさんのブログを拝見すると、書籍化、TVドラマ化の裏側なんかもブログに書いておられて、作品に関わった人たちの愛が伝わってきて、同じFF14プレイヤーってだけで共感してほろりとしておりました。
そんな「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん(以下劇場版光のお父さん)」が先日、Netflixで配信が開始されました。
Netflixではまだ視聴できてないのですが、映画館で二回、Blu-rayで一回観るほど大好きな作品の見所と感想をお伝えして、一人でも多くの人に「劇場版光のお父さん」を観ていただけたら嬉しいなと思っております。
関係者でもないのに。
その前に
前置きが長くなって申し訳ないです。
同じNetflixにて「TVドラマ版光のお父さん」も配信されているので、こちらもご覧いただけるとうれしいです。「劇場版光のお父さん」とはキャストは異なりますが、どちらも魅力的な親子を演じておられるのでぜひ。
キャスト変更で最も大きいところは父さん役。テレビ版の父親役である大杉漣さんが亡くなられて、その役を劇場版では吉田鋼太郎さんが「お父さん」を引き継いでおられます。パンフレットでもこのことに触れられていて、プレッシャーもあったが大杉さんの分も頑張ろうと思いが自然と胸にこみ上げてきたと語っておられます。
大杉漣さんの飄々として掴み所のないお父さんと、吉田鋼太郎さんの厳しい顔で如何にも頑固オヤジなお父さん。両方の「お父さん」を見ていただけると嬉しいです。
それでは
「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」
原作 マイディー「一撃確殺SS日記」
スクウェア・エニックス「ファイナルファンタジーXIV」
監督 野口照夫 山本清史(エオルゼアパート)
脚本 吹原幸太
公開日 2019年6月21日
あらすじ
美しい海。どこか異国の雰囲気が漂う景色。次の瞬間。遺跡のような所へ。
様々な容姿の8人が、巨大な合体ロボと壮絶な戦いを繰り広げ、マイディーと呼ばれた人物が最後の一撃を決め、勝利を収める。
「ぃよっし!」
パソコンのディスプレイの前で「マイディー」を操作していたコントローラーを握りしめ勝利を喜ぶ青年、岩本アキオ。先ほどの光景はアキオがプレイしていた「FF14」の世界・エオルゼアだった。アキオはマイディーとして、勝利の余韻を仲間達とチャットをしながら味わっていた。
翌朝
朝食。ウナギとステーキ。母曰く、父が昇進するため、そのお祝いらしい。朝食とは思えぬボリュームとウェイトにたじろぐアキオ。当然、一緒に暮らす妹の美樹もその強敵に辟易としていた。美樹はアキオにウナギとステーキのヘイトをシャークして、早々に出かける。それを見送るアキオ。
ふと、父について思いを巡らせる。
父・岩本暁
仕事人間で、家では寡黙。小難しい本を読んでいるか、接待ゴルフの練習をしているかで何を考えているかわからない。一緒に遊んだ記憶も、すぐには思い出せなかった。
「父は僕にあまり興味がないんだ。……そう思った。」
次の日、アキオは出社する。デスクに着くと上司の吉井が声をかける。アキオは、先日まで吉井が父親の葬儀であったことを案じると、吉井は「まさか親父の葬式で泣くとはなぁ〜」と、悲しげでどこか喜びのようにも見える笑顔をたたえ話す。そこに、アキオの携帯がなる。妹からの電話だった。
父が単身赴任先から帰ってくる。仕事を辞めて。
家に運び込まれる父の荷物。整理をする父と二人きりになるアキオ。
「僕も……この人が死んだ時、泣いたりするんだろうか。」
その話を、職場の飲み会の席で吉井に相談するアキオ。吉井は、生きてる間に父ともっと話しておけばよかったなと話す。その帰り道、小さなゲームショップの前を通る。吉井は初めて買った「アトランチスの謎」のソフトを見つけ興奮気味に話すと、タクシーに乗って帰ってしまう。
初めて買ったゲーム。アキオはその言葉を聞いて、父との思い出が蘇る。
「ファイナルファンタジー3」
子供の頃、父と一緒におもちゃ屋で買ったソフト。
家に帰り、大喜びで遊ぶアキオ少年。その姿をじっと見つめる暁。
その夜。ふと目が覚めたアキオ少年はリビングから漏れる光に気づき、近付く。そこには、ファイナルファンタジー3を遊ぶ父の姿があった。
暁はバツの悪そうな顔を浮かべるが、アキオは暁の横にちょこんと座ると「あっちに行くとね、宝箱があるよ!」と嬉しそうに話す。
そして、二人はファイナルファンタジー3最初のボス「ランドタートル」を倒す。
ゲーム画面ではイベントが進んでいく。
「たびたつのだ ひかりのせんしたちよ!」
そのメッセージを見た暁は真剣な眼差しで
「光の戦士か……よし、任せておけ。」
と口にし、その姿を誇らしげに見つめるアキオ。
それから、二人の光の戦士の冒険が始まった。
「……父と遊んだ……たった一つだけの思い出。」
アキオは吉井と別れ、帰路についていた。すると、公園でぽつりと座り込む暁の姿を見つける。声をかけるでもなく遠目で様子を伺っていると、暁はすくっと立ち上がり家に帰って行った。その様子を母に話すと、コンビニにでかけると言っていたけど、と話す。
FF14の世界・エオルゼア。マイディーは父との関係を仲間達に話す。何も話さず、何を考えているのかわからない父。仲間達は、エオルゼアではそう言う人あんまりいないのにね、と。ゲームの中では、何故か本音を話せるんですよね、と、口々に話す。
「……これだ!」
マイディーはそう叫ぶと、ある計画を話だした。
父・暁をここ、エオルゼアの世界へ連れ出し、息子であることを隠しアキオではなく「マイディー」の自分とフレンドになってもらい、共に冒険し、最後は最強の敵・ツインタニアを撃破し、その時に、自分の正体を明かす。
「光のお父さん計画」
親子の冒険が、ここから始まる————
感想
FF14とタイトルに入っているので、ついFF14がメインの話で、知らない人お断りの映画のように思われてしまいがちですが、FF14はあくまで「父と子」の物語を彩る一つで、映画のメインストリームは、暁とアキオ。二人の関係性がいかに変化していくかを見届ける映画になっています。
TVドラマ版でも絶妙な塩梅でまとまっていたのですが、劇場版はさらにそれを115分にギュッと凝縮され、ゲームを知らなくても楽しめる作品になっています。
いや、もう、ほんといいんですよ。
って、あれなんですよね。じぶんはこの作品が好きすぎて、とても冷静に語れないというか。多分、リアルで語れ!ってなったら熱く語りすぎて、相手が引いて逆に見るのをやめてしまう恐れがあるくらいなわけですよ。
なので、あえて一歩引いた感じでここまで書き進めてきましたが、もう大丈夫ですよね?ここまで読んでくださったあなたなら、多少暑苦しく語っても。
正直。正直、大杉漣さんのTVドラマ版のお父さんが好きで、亡くなられてから映画版制作が決まり、お父さん交代には不安がありました。引き継いでお父さんを演じるのが、大好きな役者さん吉田鋼太郎さんと聞いても。
そのことを、ちょうど公開前に大阪で演技のワークショップにいらしていた、脚本の吹原幸太さんとお話しする機会がワークショップ後の親睦会であり、そこで率直に、大杉漣さんが亡くなり、劇場版のお父さんを演じてもらうのも、描くのも大変だったのでは、とお聞きすると
「その苦労はあったし、TVドラマ版が意味をもってしまったと思う。だけど、劇場版のお父さんもすごい良いのよ!吉田鋼太郎さんのお父さんもぜひ見て欲しい!」
と目をキラキラさせて語っておられ、その言葉を聞いて全力で公開初日に観に行ったことを、今でも覚えています。
そんな、TVドラマ版からのファンであるこの作品を見た感想は、控えめに言って「最高」でした。
もうあれなんですよね。話しの流れ分かってるから、FF3買って、「光の戦士か。よし、任せておけ。」のシーンで泣いてまう。なんなら、FF14アレンジの「マトーヤの洞窟〜蒼天〜」流れるだけで泣いてまう。祖堅さん(FF14のサウンドディレクター兼リードコンポーザー)良い仕事しすぎや。
とまぁ、話出したら止まらない作品「劇場版光のお父さん」。
もし、興味を持っていただけたのなら、一度ご覧いただけると幸いです。
TVドラマ版も
それでは、本日はこの辺りで。
失礼します。
bow
12月10日追記
原作者である、マイディーさんが12月6日にお亡くなりになられました。
心より、ご冥福をお祈り申し上げます。