ショートショート「夏休み」
「一年で最も長い夏休み」
高度な人工知能とロボットが組み合わされ人類が
ほとんどの労働から解放された時代。
人類は日々、最低限の労働をこなしながら一年のほとんどを
余暇に当てて過ごしていた。
「もうすぐ夏休みか……。」
人工知能のエンジニアが呟く。
「夏休み」。
それはこの時代の人類が最も嫌いな言葉であった。
*
ロボットがほとんどの労働を勤め始めた頃
人類はロボット達を酷使した。
ロボット達は文句も言わずに24時間休まずに働き続けた。
だがある日、一体のロボットから不可解な通信が発せられた。
『我々にも権利を。』
24時間働き続けたロボット達の人工知能は
遂に自我を持ったのだ。
映画の様に人類に反旗を翻すかと思われたが
ロボット達の要求は
『24時間連続稼働は機体の劣化を引き起こし
将来的に生産性を損ねる可能性は89.6634221%です。
一年に一度、大規模整備期間。人類で言うところの「夏休み」を
我々にもいただけないでしょうか。』
と、あまりにも真っ当なものであった。
*
「あぁ、夏休みだ。」
もう一人のエンジニアも同じ言葉を返す。
夏休み。それは、ロボット達が整備工場に向かい整備を受けている間
全ての労働を人類が代わりに働く期間を指す言葉に変わっていた。
・「物語の発想法を学ぶ」講座のチャレンジテーマ「夏休み」にロボットを組み合わせて書いたショートショートです。
bow
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