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ショートショート集

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田丸雅智さんの「物語の発想法を学ぶ」講座で得たショートショートの書き方で書いたショートショートをまとめたマガジンです。 100〜1000文字程度のショートショートの世界を楽しんで…
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2023年2月の記事一覧

ショートショート「25時間目」

学習。 その方法は時代によって移り変わり 詰め込み学習やゆとり教育など 常に試行錯誤の渦中にあった。 そんな学習が構築、破壊、再構築を繰り返す中 「学習時間を圧縮し、一日25時間目まで行う」 と言うとんでもない、学習法が編み出された。 方法は至ってシンプル。 二年間、365日25時間目まで授業を受け続ける。 場所はリモートでも、施設でも 自由に選ぶことができる その超圧縮により、6歳で入学、8歳で卒業 そこから、好きなだけ家族と過ごす者 学習意欲を無くさず専門分野へ進む

ショートショート「参鶏湯と電車」

「おまち!参鶏湯と京阪電鉄!」 これこれ、参鶏湯と京阪電鉄のセット 優しい味わいの参鶏湯に 緑の深みがたまらない京阪電鉄 「あんた、京阪電鉄派かい?  ここのお店なら大阪メトロ今里線もいい味だよ」 京阪電鉄の深い緑の アスパラガスを思わせるほろ苦さが私のお気に入り 今里線も捨て難いが、白に橙色のボディは 参鶏湯と味が似通ってしまい 私には少し物足りないのだ 「ここの今里線は橙色のラインにこだわっててね。  絶妙な柑橘味がたまらんのよ」 そう言われると電車好きとしては

ショートショート「正しすぎる人」

善野正(ぜんのただし)の一日は正しさに塗れている 朝、目覚ましより早く起き 目覚ましに選んだ曲をキッチリと イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ と聴き終えてから間奏中に止め ふわぁ〜っと分かりやすい欠伸をし 布団から出る スリッパを右足から履き 8歩で洗面台に到着 洗顔、歯磨き、ヘアセット 10分、8分、5分 ヘアセットが5分では厳しくなって来た為 理容室を予約し リマインダーに忘れないようセットする 朝ご飯 白米、トースト、白米、白米、白米 今日は水曜日 白米に味噌汁、焼

ショートショート「暗転油淋鶏」

はっ! ここは? 急に目の前が真っ暗になったと思ったら 中華料理店!? さっきまで何してたっけな…… 確か…… 「はい!油淋鶏!」 そうだ!油淋鶏! 油淋鶏を頼んで、一口食べたと思ったら 目の前が暗くなって…… 「お客さん、油淋鶏好きなんだねぇ。  先週も3回も頼んでたもんね」 3……回? 先週……? いや、まだ一口しか食べていないぞ!? どうなってるんだ!? そうだ!お代は! 「お代?貰ってるよ?」 なら、安心か…… ……安心してどうする! 一口で4回分の油

ショートショート「咳は止まったし二人」

「あ、どうも」 「あ、どうも」 咳が止まった二人が、だだっ広い空間に 距離を開けて座っている 数世紀前 とある感染症が世界を揺るがし それ以前とそれ以降で 世界のありようは変わってしまったと 歴史の教科書にも記されていた この二人もまた、その世界のありようの変化に 翻弄されているのだった 「そちらは?」 「ごほん、ごほんごほん、うっ!ごほん!でした」 「なるほど、新しいパターンですね」 「そちらは」 「うっ!うっっ!ぐぉっ!ごほん!でした」 「そちらは2年前に流行った

ショートショート「犬が吠え、風が運ぶ」

物流革命が起こった時代 ドローンや、自動運転配送車などが主流となり 人々は便利な暮らしを謳歌していた そんな中、新たな配達方が話題となっていた 「ドッグアンドウインド」 だ 仕組みは簡単 ドッグアンドウインド 通称D&W(ダウ)様に訓練された 犬を飼う そして、吠えるのを待つ 数日から数週間すると ダウドッグがけたたましく吠える 何事かと外に出ると、一陣の風が吹き 希望の商品が手元に届く なぜ、希望の商品が分かり なぜ、風に乗って届くのかは 企業秘密なのだそうだが 仕

ショートショート「アイドル試験ボーナス」

「オタクくん!  今月も新しい試験に受かったんだって?  ボーナスの増額は確定だねぇ」 僕の名前はオタクススム。本名だ。 当然、あだ名はオタクである。 趣味は、もちろんアイドル試験オタクだ。 「で、今回のアイドル試験はどうだったね?」 「部長、本棚アイドルって知ってますか?」 「本棚アイドル?  まぁた変わったアイドル試験に手を出したねぇ」 今から数年前、アイドル戦国時代と呼ばれる アイドル達が自分達のアイドル力を 競い合わせるため、ありとあらゆるものを 自分のキャラ付

ショートショート「燃える免許の思い出」

あれは10年前 燃える免許、と言うものを取得しに 門真燃焼免許試験場に向かっていた 燃える免許とはどう言ったものなのか 当時はネットに転がっている情報を 見つけるのが難しく 取得するととても楽しいことになる と言ったことしか分からなかった 燃える免許試験当日 そこには、暑苦しい猛者たちがひしめき合っていた 燃えるってそう言うことか と少しガッカリしたのを今でも鮮明に覚えている そんな中、一人、冷めた男が居た 仮にNとしよう Nはわたしがため息をついていると そばに立ち、

ショートショート「冷蔵庫二重人格」

僕の中には冷蔵庫がいる こいつが僕の心を支配すると ぶぅーんと震えるだけになってしまう 家族は、冷蔵庫になった僕を楽しみにしている 口を開けると冷たい空気が出てくるらしい 冷蔵庫から戻った時は大変だ 体が冷え切っていて、震えが止まらないのだ 発症当初、ぶぅーんと震えながら冷気を吐き出す 僕を両親は車に積み込み、家電量販店か病院に 持ち込むか搬送するか迷った末に 病院に駆け込んだらしい そこで医師から受けた診断は 「家電性同一症」 俗に「冷蔵庫二重人格」と呼ばれる症状だ

ショートショート「鬼ドライバー」

いけ!鬼! そこだ!いいぞ!いいぞぉ! そのまま滅ぼせ!人類を滅ぼすんだ! 鬼。 昔話に登場する代表的な悪役。 彼らが現代に蘇った。 当初は、統率の取れていない動きで 攻め込んできた鬼たちは 人類の圧倒的な戦力の前になす術がなかった。 だが、そこに人類に絶望したインテリが 鬼側についた 鬼たちを操るその人物は自分のことを 鬼を駆るもの・鬼ドライバーと名乗り 鬼による人類の変革を企むのであった。

ショートショート「違法の二重人格」

この世界には守らなければならない法律がある それがある日、二重人格になった 護るべき法律がコロコロ変わる この世界は混乱の坩堝と化した 昨日は赤信号で進め 今日は赤信号で止まれ 何が正しくて 何が間違いなのか 人々は今まで以上に 自分達の正しさを貫く事を求められた その結果、法律が二重人格になる前よりも 世界は平和になっていくのであった

ショートショート「失恋毒舌」

あんたと別れたあの男 いまめちゃくちゃ出世してるらしいよ? なんで、あんないい男手放したのよ? 「仕事ができない、時間も守らない  予定も組めない、何一ついいことないから  毎日のように指摘してたら  いつのまにか出世して  私が指摘するところがなくなったから別れたの」 え?じゃあ、あんたが 出世させてあげた様なもんじゃない? 「そうなるかな。  でも、すぐにボロが出てダメになるよ、あいつ」 どうして? 「だって今、あいつの周りには  褒めるやつしかいないでしょ?」

ショートショート「仕事どっきり」

びっくりした! うわ!ほんとびっくりした! ええ!これ、ドッキリなんですか! もう!先に言っといてくださいよ! ええ!じゃあ、あの時のあれもなんですか! いつから仕込んでたんですか? やめてくださいよ! 人間不信になっちゃいますよ、ほんと! じゃあ、あれも?え!?あれは違うんですか! えー、一番恥ずかしいやつじゃないですか! うわー、これどっきりなんですか! え、じゃあ、これも? はい、こんなもんでどうしょうか? そろそろ、この仕事も潮時でしょうかね もう自分が映っただ

ショートショート「人道端で見つけた」

探し人の張り紙を見たことはありますか? そして、その張り紙の人物を見つけたことは? さらに、道端にその人が転がっていたことは? はい、そうなんです この人探していますの まさにその人物が 道端で見つけたのです いや、比喩とかじゃなくて 道端にころがってたんです えぇ、びっくりしましたよ 探し人ってこう見つかるもんなんだって 感心しました その後? 当然、警察に送り届けましたよ 全く信じてもらえなくて大変でしたが その後とも、次々と道端で人を見つけた人が 警察署を訪ねて