見出し画像

音楽業界における「プロ」とは?

こんにちは。サウンドブリックスの上野です。
僕は普段フリーランスとして映像に音をつける「音響効果」という仕事をしています。noteではお仕事関連のことや日々思うことなど発信しています。

最近はアマチュアでもクオリティの高い作品を作られる方がとても多いですよね。もうクオリテイはプロといっても遜色ないレベルの方もたくさんいらっしゃいます。果たして「プロ」と「アマチュア」ってどういう違いがあるのでしょうか?僕は作曲家やアーティストではなく、あくまで選曲家ですが、一応音楽業界に属している一個人として今回は、音楽業界全般における「プロ」という言葉の意味について考えていきたいと思います。

音効会社に20年勤め、現在フリーランスとして生活をしている僕は自分のことを「プロ」と言って問題ないとは思うんですが、周りの人たちを見てるとすごい方ばかりで、同じ肩書きを語っていいのか考えてしまう時もあるんですよね。そもそも音効って知識レベルも人それぞれで、感覚が重要視される世界。もし優劣をわかりやすい指標で示すなら視聴率や売り上げなどが表す「数字」になるのだろうと思います。
でもめちゃくちゃ歌の上手いアマチュアの歌手ってたまにいますよね?そうなると技術と数字が必ずしも一致しなくなります。そこがクリエイティブ業界の難しいところとも言えそうです。

専門家の定義とは?

一般論として「専門家」と呼べる基準は、その分野に【1万時間以上を投資しているか】というものがあるそうです。毎日8時間働けば、約3年5ヶ月かかります。もちろんこれはあくまでの目安で、効果は人それぞれです。

音楽業界の変化

時代は変わり、"プロ"と"アマ"の境界はどんどん曖昧になってきているように思えます。高品質な機材が手軽に入手可能になったり、誰でも気軽に使えるアプリケーションが登場したり、YouTubeやSpotifyなどのプラットフォームが普及したことで、隠れた才能に出会うチャンスが増え、アマチュアでも気軽にSNS等で自己表現を発信できるようになったのです。スマートフォンが普及したことも音楽の視聴環境が変わった要因の一つといえるでしょう。

SpotifyやApple Musicなどの音楽配信プラットフォームは今や視聴メディアのの中心となっています。プロもアマチュアも同じ土俵で楽曲を発表しているわけです。昔はテレビやラジオで音楽が流れることにより多くの人に知られるようになっていたため、そうしたチャンスに恵まれなければ音楽やアーティストが売れにくかったという現実がありました。
しかし時代の変化と共に世間の視聴環境もCDから配信に変わったことで流通の構造が大きく変わりました。
アーティストは大手のレコード会社に頼らなくても個人でSpotifyやApple Music、各SNS等で作品を配信できるようになりましたし、リスナーからすればCDショップに足を運ばなくてもスマホ一つで様々な音楽にアクセスできるようになったことで、より多くの方が作品を視聴しやすい環境になりました。アーティストにとって作品を発表する場所という意味においてはプロとアマなど関係がなくなってきていると言えるでしょう。

昔はCDを売るためにに大手プロダクションやレコード会社の支援があった方が有利な時代でした。もちろん規模の大きいイベントやライブなどを行う際にはお金も人員も必要になるので、大手企業が参入しなくては成立しないと思いますが、個人で発信できる現代において昔ほどそれは重要ではなくなってきている気がします。
また以前はラジオやテレビなどマスメディアで露出されることも楽曲やアーティストが売れるための重要な要素でした。大きいメディアで活躍できる人が注目されやすかったのです。昔は一部の人だけしか到達できない特別な職業として「プロ」という言葉が多用され、アマチュアとの差別化を表現していたようにも思えます。
ただ、プロアマに技術的な違いが少なくなった今でも音楽業界は「プロ」という言葉に敏感です。これは以前から受け継がれてきた音楽業界における「プロ」という言葉の権威性の名残りではないかと思っています。しかし「稼ぐ」ということがプロであるならば働いていれば基本的には誰でもその職業の専門的プロなのです。

「プロ大工」
「プロ保育士」
「プロ弁護士」

など普段プロとして活躍されている職業の方たちですが普通はあまり使わない言葉です。しかし今でも音楽業界では「プロ」という言葉を好んでよく使う傾向があります。

たとえば….
「プロの作曲家が作った曲」
「プロのギタリストののセミナー」
「プロのミュージシャンのイベント」など。

僕の職業でもある音響効果というお仕事で「プロ音響効果」なんて言われたら、逆に気恥ずかしい思いをしてしまいそうです。もちろん「プロ」と呼ばれる方々は技術的にも素晴らしいですし、その対価を受け取っているわけですが、意外とアマチュアとの違いって現代においてはそれほど感じないんですよね。
ココナラ、クラウドワークス、ランサーズなどマッチングプラットフォームも認知度が上がったことにより、個人が副業などの収入を得やすくなったこともプロとアマチュアの「稼ぐ」という意味においてのその差が少なくなってきている点ではないでしょうか。

自分が思う「プロ」の基準

結局「プロ」「アマ」の違いって何なのでしょうか。技術提供をし、対価を受け取るという条件はもちろんありますが、アマチュアミュージシャンでもプロ並みに稼いでおられる方もいて、基準の判断が難しいところです。フリーランスや経営者の場合は「最低限その事業単体で生活ができる」ということは最低条件として挙げておこうかなと思います。また先述しました「1万時間費やしたかどうか」ということも条件として入れておきます(本来はクリエイティブを時間単位で考えるべきではないと思っていますが、ここでは目安としての数字をし示しておきたいと思います)。これらに加えて僕が個人的に入れておきたいのが「他者のために動けるかどうか」というものがあります。他社というのは友人や親族など身内以外の他人を前提としています。

あくまでイメージですがアマチュアは「自分のため」「楽しむため」にその活動をしている方が多いかと思います(もちろんそれが全てではないですが…)。プロとしての活動で僕が重要視しているのが「お客様の要望を汲み取れるか」「最後まで責任をもって修正にきちんと対応できるか」ということです。

音楽って言葉では表現が難しいこともあり、どんなに熟練された方でも打ち合わせ1回だけで先方の脳内を100%理解できないものです。
そこで必要なのが「修正能力」だと思うのです。擦り合わせを重ねていく中でクリエイターとクライアントの考えの相違をなくしていく。これは経験も必要ですが、何より「顧客(他社)目線になる」というところが大切です。他者のために動き対応できる能力に長けている人が「プロ」と呼べるのではないかなと感じています。

近年クライアントワーク以外の働き方も注目をされています。たとえばYouTuberやアフィリエイターなどはそれにあたるでしょう。確かに彼らの目の前にはクライアントはいないかもしれませんが、視聴者など「他者」のためになることを考え改善を加えながらも行動するのであればそれは「プロ」と呼んでいいと思っています。

また「時間」についてもプロの場合は納期が必ずあり、タイトなことも多いのでシビアな要求にも応えていかなければいけません。一方アマチュアは(人によりけりですが)時間をコントロールしやすかったりするので、そこはプロにはない利点かもしれません。

まとめ

☆その事業単体で生活ができるだけの収入がある
☆その分野で1万時間以上投下している
☆他者のために要望を汲み取り、最後まで責任を持った行動ができる
☆納期は必ず守る

プロにとって華々しい資格や、尖った技術、大手企業に属してるかどうかは全く関係ないと思います。もちろん技術はないより合った方がいいですが、クリエイターが表現できる要素って人柄だったりファッションだったり、容姿など、技術以外にも色々ありますよね。
アマチュアの方も素晴らしいクリエイターが多くいらっしゃいますので「素人」ではないんですよね。たとえ自分でアマチュアを名乗る方でも、これらを全て満たしているのなら僕はその方を「プロ」と解釈しています。逆にプロと自分で語っている人でも途中で仕事をいいかげんに扱ったり投げ出してしまったりするような人はプロ失格といえるでしょう。ふと思ったんですが、これって「その分野の専門会社に3〜5年勤めること」で全て満たせる気がしませんか?まずは会社員としてのスタートがプロになる王道のロードマップなのかもしれませんね。

一口に「プロ」といっても解釈はそれぞれ

最後までお読みいただきありがとうございました。今回の内容はあくまで僕個人の見解です。人により解釈はそれぞれ。皆さんはどのようなご意見をお持ちでしょうか?

それでは今日はこの辺で。


いいなと思ったら応援しよう!