ドリンクバー
夜、とてつもない寂しさと悲しさに苛まれて家を飛び出した。昼間のうちに買っておいた食材たちを捌く元気は21時になってもでなくて、大学生ぶりに1人でファミレスの扉を開いた。
誰かと無性に話したかったが、誰でもいいわけじゃなかった。そして衝動的に話してしまえば、本当にどうしようもないことを口走ってしまいそうだったので、これで良かったのだとメニューを見ながら思う。
ハンバーグカレードリア。それに、一度注文カゴにいれたサラダを外し、代わりにフライドポテトを入れた。こんな日に健康に気を使う必要などない。
顔を上げると、ドリンクバーが目に入った。ジュースを飲まないので縁遠いメニューなのだが、ふと4年ほど前のことを思い出した。
ある日気になっていた男性とご飯にいき、まだ帰るには惜しくてファミレスに入った。普段は頼まないがご飯はもう食べ終わっていたので、ドリンクバーを頼んでコーヒーを飲んだ。出会って間もなかった私たちは、当たり障りのないラリーをし続けた。お互い仕事終わりで疲れていたが、1時間ほど話に付き合ってくれた。終電の時間が近づいていて、私は帰りたくない素振りで駄々を捏ねていた記憶があるが(若かったなぁ)、彼に見送られて帰路に着いたのだった。
特に何かがあった訳でもないが徐々に連絡を取らなくなり、私は転職し、そのまま関係は途絶えた。
本当にただ、ただそれだけなのだが、心の片隅にあった記憶が温度をもって蘇り、その思い出に浸りながら桃のパフェを頬張った日でした。
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