見出し画像

歩道橋

「タバコ」という単語と一緒に連想されるのはたいてい「ニオイ」だな

そんなことを思いました。

それを不思議に思いました。

夜のキャンバスに揺蕩う白の濃淡。

そんな美しい姿をなぜ言わないのだろうか、と。

そこで、あぁ、とわたしは思いました。

タバコのニオイしか知らない人たちがタバコを謳うからだ、と。


タバコをもらうようになって、お酒が飲めなくなりました。

ゆっくりとなら飲めるので、ゆっくりと飲むことにしました。

以前の3倍くらいの時間をかけて飲むようになりました。

いつもひとりでお酒を飲むときはこのくらいだなぁと思いました。

すると、

「タバコ吸ってるからじゃん」

そんなことを言われるようになりました。

だからやはりわたしは思うのでした。

「ニオイ」しか知らないやつらがタバコを謳っている、と。


「あなたは優しいね」とよく言われます。

笑顔で「僕もそう思う」と答えます。

優しさとは何なのでしょうか。

それはきっと感じることなのだとわたしは思います。

「今これ言ったら喜ぶ」

それがわかるから言う。

そうしたら喜ぶ。

だからわたしはそう立ち回る。

何かに似ているなと思いました。

iPadで絵を描くとき、

ペンシルを一定時間同じところに当てていると、

その色が自動的に選択される、

そういう機能があります。

あぁ、これだ。

そう思いました。


わたしが優しいと言われるのであれば、きっとほかの人は優しくないのでしょう。

ではなぜ優しくないのでしょうか。

見えていないからでしょうか。

いいえ、きっと見えているだけだからなのでしょう。


2度優しかった人間は、3度目も優しいのでしょう。

きっとあなたはそう思うのでしょう。

わたしも、5食連続で麻婆豆腐を食べられますし。

一度だけ。たったの一度だけ。

あなたとの時間で、優しくない日がありました。

そうです。

あの点滅信号を渡らなかったときです。

あなたは、振り返ってわたしを待ちました。

あぁ、きっとわたしは優しくないといけないんだ。

そう思いました。


「ひとりでお酒を飲んでなにが楽しいんだ」

「ひとりでするくらいならわたしも誘ってよ」

そういう言葉がわたしの周りには溢れます。

だからあなたは見えているだけなのだと、微笑みます。

「はやく彼女つくりなよ」

「はやく彼女にしてよ」

「あなたと一緒にいる時間がいちばん楽しい」

そんな言葉を聞くたびに、心に白い濃淡が浮かびます。

なぜあなたごときにわたしのしあわせを、感性を決められなくてはならないのでしょう。

いつからあなたはわたしをしあわせにできると錯覚したのでしょう。

2人の時間をいちばんと言う人間が、なぜわたしのしあわせの共描者になれるのでしょう。


ひとりのしあわせを知っている人を愛しく思う。

楽しい、おいしい、落ち着く

そんな言葉ではもったいないほど贅沢なしあわせを生きる人間に、

ただ、「わたしもそうだよ」と言いたい。

ひとりで生きるかのようにあなたといたい。

あなたとひとりで生きていたい。

これまで「絵」という表現で紡いだ表現を「文字」にすると、

わたしの「愛」はそういうものになるのです。


タバコなんて臭いし、毒だし、お金かかるし。やめなよ。

おれもタバコ吸おうかな。

言えば言うほど魅力を感じなくなるのはそういうこと。

ケムリの色も形も、どうやって消えるのかさえ知らないあなたに、

わたしがどんな魅力を見出せばいいのでしょう。

わたしの言葉を文字列としてしか受け取らないあなたが、

なぜわたしのしあわせを感じられるのでしょう。


ひとりのしあわせを知らない人間が、

ふたりのしあわせを語るなよ。


ニオイしか知らない人間が

わたしのことばを踏みつけるなよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?