ライブハウスの経済と文化(前編)
今回は、一昨日、昨日の記事の流れを汲んで、経済と文化という二面性を持つライブハウスの特異性を綴りたいと思います。前半では、ライブハウスの現状と簡単なビジネスモデルについて触れます。
ライブハウスが厳しい状況にある今、音楽好きとしてできることの一つはライブハウスについて多くの人に知ってもらうことだと思います。ぜひ、前の2つの記事に目を通してからご覧いただけると幸いです。(所要時間3分)
1.ライブハウスの現状
新型コロナウイルスの影響で、経済的・精神的に大きな打撃を受けている音楽業界ですが、実際のところ、ライブハウスを運営する事業者はどれだけ厳しい状況なのでしょうか。
今年4月に音楽家団体「セイブ・ザ・リトルサウンズ」が発表したアンケート結果では、ライブハウス・クラブを運営する事業者(計283)のうち、95%が減収になったと回答しました。売上がゼロになった事業者もおり、66%が貯蓄を切り崩していると回答。今後の見通しでは、「三か月持つかわからない」が48%、「1か月持つかわからない」が20%とのことでした。
減収については、厳しいことは間違いありませんが、今年4月は飲食店をはじめ、多くの事業者にも当てはまることだったのではないでしょうか。
2.ライブハウスのビジネスモデル
ライブハウスの経営体制は、他業種を本業とする企業が経営母体になっている場合や、オーナー経営など様々ですが、メインの収入源は、チャージ(チケット)、ドリンク代、レンタルの3つです。
一般的なバンドであれば出演の際に、チケットノルマが課されます。チケットが捌けるか否かに関わらず、チケットノルマ枚数×チケット代はライブハウスに収めます。これが、ライブハウスの保証金(確約された収入)となります。ノルマの計算があるため、受付で「誰を見に来ましたか」と聞かれる訳ですね。また、チケットバック制の場合、ノルマを超えた分はチケット代にチャージバック率をかけた金額が出演者の収入となります。
次にドリンク代ですが、ライブハウスに行くと、チケット+1ドリンクという不思議な料金形態になっています。このドリンク代は、ライブハウスの多くが飲食店として営業許可をとっていることに起因しています。ドリンク代をとって形上は飲食店にしていないと、興行場とみなされてしまいます(この辺は後日)。また、チケット代に含めないことで、チャージバック制であってもドリンク代は確実にライブハウスの収入にすることができます。
最後にレンタルです。実は、ライブハウスという名前でも、実態は貸会場になっているところもあります。その場合、イベンターと呼ばれるイベント主催者に場所を貸して、そのレンタル料をもらっています。バンドの自主企画や、ライブハウスのブッキングライブの他に、イベンターが主催のイベントというのもあるのです。
3.前半まとめ
今年4月のアンケート調査では、ライブハウス・クラブ事業者の1/5は「一ヵ月持つかわからない」状況でした。ライブハウスの収入源は、チャージ、ドリンク、レンタルと主に3つあり、歴史的背景や工夫の末に行きついたシステムのようです。
後半では、社会全体がコロナウイルスによって影響を受けているなか、特にライブハウスが厳しい理由について、私見を綴りたいと思います。ぜひ、後半も読んでいただけると嬉しいです。