見出し画像

事業承継・引継ぎ支援事業評価報告書を読み解く:現状と今後の課題

令和5年度の「事業承継・引継ぎ支援事業評価報告書」が公開され、全国で進められる事業承継の現状や課題が改めて浮き彫りになりました。
特に、中小企業の経営者にとって、事業承継は重要な課題の1つであり、また、支援機関が果たす役割も更に拡大しています。
本記事では、最新のデータを基に、事業承継の現状、課題、後継者探しの方法、そしてこれから承継を考える経営者が備えるべき事項について、ご紹介します。


事業承継・引継ぎ支援事業の現状

令和5年度、全国の事業承継・引継ぎ支援センターが対応した事業承継件数および相談件数は、過去最高を記録しました。
第三者承継の成約件数:2,023件(前年比120%)
累計成約件数:10,174件
相談件数:84,118件(前年比120%)
また、相談者数は、平成23年度の約100倍となっています。

「令和5年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」より引用

規模や業界ごとの特徴
譲渡企業は、売上規模1億円以下の小規模企業が約6割を占め、従業員数10名以下が7割強という現状です。業界別では以下の割合となっています。
・製造業:20%
・卸・小売業:18%
・建設工事業:12%
・飲食・宿泊業:13%
・運送業:4%
・サービス業、その他:33%

「令和5年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」より引用

一方、譲受企業は譲渡企業より規模が大きく、売上10億円以上の企業も20%近くを占めており、より多様なニーズがうかがえます。

「令和5年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」より引用

事業承継の課題と変化

主な課題
1.後継者不足

後継者不在率は2023年で54.5%。改善傾向にあるものの依然として高水準です。特に地方圏では経営者の平均年齢が全国平均(63.8歳)より高く、高齢化が顕著です。
2.休廃業の増加
2023年の休廃業・解散件数は49,788件と、過去最高水準。黒字廃業も52%に上り、経営資源の損失が問題視されています。
3.専門家の活用不足
弁護士、会計士および中小企業診断士などの専門家との連携が進んだセンターでは成果が出ていますが、多くの地域で専門家の活用が課題として残っています。

課題の変化
掘り起し活動の強化

各地域でエリアコーディネーターが中心となり、ネットワーク構成機関(商工団体、金融機関)との連携が進みました。その結果、相談件数は前年比で大幅に増加しています。
広域マッチングの推進
地域をまたぐ成約が増加し、2023年度は431件と過去最高を記録。全国規模の支援体制が整いつつあります。


後継者をどう探すか?

後継者不足への対応として、支援機関では多様な取り組みが行われています。
主な後継者探しの方法
1.親族内承継

親族内承継は引き続き多数を占め、支援センターの相談でも大きな割合を占めています。
親族内承継の相談件数:7,636件(前年比102%)
成約件数:1,558件(前年比119%)

2.第三者承継(M&A)
地域のM&Aプラットフォーマーや専門家を活用し、売り手・買い手のマッチングを支援しています。登録された支援機関は全国で1,503機関に達しました。

3.後継者人材バンク
小規模事業者を対象とした後継者人材バンクでは、登録者8,524人、成約件数329件(累計)と成果を出しています。地方自治体との連携も進んでいます。


事業承継を検討する経営者が取るべき事前対応策

・現状分析
自社の強みや課題、将来性を整理し、事業承継の必要性を再確認します。
後継者候補の選定
親族内、社員、外部(第三者承継)を含めて候補者を選定し、早期から育成計画を立てます。
事業承継計画の策定
財務、税務、法務の視点から専門家の助言を受けながら計画を作成します。
支援機関の活用
各地域の事業承継・引継ぎ支援センターを活用し、無料相談を受けて具体的な支援を得ましょう。
譲渡・引継ぎの実行
必要な契約や手続きを進め、承継後のサポート体制を整備します。


相談先情報

全国には事業承継・引継ぎ支援センターが設置され、無料相談を行っています。以下のウェブサイトで最寄りのセンターを確認してみてください。
中小企業庁 事業承継・引継ぎ支援センター
中小企業庁 事業承継ポータルサイト


まとめ

事業承継は早期の計画が成功の鍵です。
最新のデータが示すように、支援機関や専門家を活用すれば、より円滑な承継が可能になります。全国の支援センターが提供するサービスをフル活用し、後継者に自社の未来を託す準備を進めていきましょう。

いいなと思ったら応援しよう!