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韓国・日本・中国、三国間知的財産協力の動き
現代のビジネス環境において、知的財産(IP)の保護と活用は企業の競争力を左右する重要な要素です。特にアジア市場では、中国、日本、韓国といった主要国の知財政策がビジネス戦略に大きな影響を与えています。そこで注目されるのが「TRIPO(トリポ)」です。
本記事では、TRIPOの概要、これまでの動き、第2回首脳会議での意見交換と合意事項について詳しく解説します。
TRIPOとは?
TRIPOは、「Trilateral Intellectual Property Offices」の略で、中国国家知識産権局(CNIPA)、日本特許庁(JPO)、および韓国知的財産庁(KIPO)の三機関による三国間の知的財産協力体制を指します。TRIPOは、アジア太平洋地域における「知財保護の強化」「手続きの効率化」「情報共有の促進」などを目的として設立されました。
TRIPOのこれまでの主な取り組み
1.IP5との連携
TRIPOは、世界の主要知財機関で構成されるIP5(アメリカ、EU、中国、日本、韓国)と協力し、国際的な知財基準の策定を進めています。
2.ユーザーシンポジウムの開催:
毎年開催されるユーザーシンポジウムでは企業や専門家が集まり、知財に関する最新情報や課題について議論します。これにより、実務者との情報交換が活発に行われています。
3.技術分野の協力
AIやバイオテクノロジーなど、急速に進化する技術分野における特許審査の基準や手続きを統一するための取り組みを進めています。
最近のトピックス
2024年12月4日にTRIPO第2回首脳会議が開催されました。同会議での主な意議題と合意事項をまとめます。
1.AI技術の特許審査基準の統一
各国におけるAI関連特許の審査基準を比較分析した結果を踏まえた統一的なガイドラインの策定に合意。特に、生成AIに関する特許出願の増加に対応するため、審査プロセスの効率化を目指す。AIアプリケーションに関する審査基準の比較分析を実施し、
2.データ交換の強化
特許審査における引用文献のデータ交換を促進し、審査の質を向上させるための新たな覚書に署名。引用文献データの共有により、各国の審査官がより包括的な情報を基に審査を行うことが可能に。
3.知財情報サービスの向上
特許データの公共サービスとしての活用を推進し、企業が効率的に知財情報を取得・活用できる環境を整備。ユーザーシンポジウムを通じて、実務者からのフィードバックを反映したサービス改善を実施。
4.「10年ビジョン」の実施
2024年5月に開催された第9回韓日中三国首脳サミットで採択された「10年ビジョン」の具体的な実施措置を承認。ビジョンの達成に向けた具体的な行動計画が策定され、各国がその実行に向けてコミットメントを表明。
まとめ
TRIPOは、中国、日本、韓国の知財機関が連携し、アジア地域における知財保護と活用を強化する重要な枠組みです。
第2回首脳会議では、AI技術の特許審査基準の統一やデータ交換の強化など、グローバルに活躍する企業にとって有益な合意が多数なされました。TRIPOの動向を注視し、これらの協力体制を活用することで、グローバルな競争力を一層高めることができるでしょう。