父娘でつなぐ事業の絆-新たな事業に挑む女性経営者-
独立行政法人中小企業基盤整備機構のウェブサイト(J-Net21)では、「新規事業にチャレンジする後継者」とのタイトルで、事業承継に挑む次世代経営者の事例が紹介されています。
その1つである株式会社マクライフは、父・牛垣和弘氏が開発した膜材による新しい天井工法(ファイバーシートを用いた天井)「マクテン」を世界に広めるため、娘・牛垣希彩氏が新たな一歩を踏み出した企業です。彼女は父の想いを受け継ぎ、事業承継の中で新たな挑戦を続けています。
本記事では、マクテンの普及活動において特許権、意匠権および商標権の取得がどのように事業の推進力となっているか、そして事業承継における知的財産の重要性についてご紹介します。
父の想いを受け継ぎ、新たなステージへ
東日本大震災で多くの天井落下事故が発生したことを受け、牛垣和弘氏は「真に安全な天井」を作りたいという強い想いから、軽くて柔らかい膜材を用いた天井システム「マクテン」を開発しました。
また、牛垣氏は、「マクテン」開発後、適切に特許権と意匠権を取得。2017年には、「マクテン」の普及を専門とする株式会社マクライフを設立しました。牛垣氏のご息女である希彩氏は、父が苦労しながらも情熱を注ぐ姿に心を打たれ、自身も会社に加わり、マクテンの普及に尽力しています。
知的財産権の取得がもたらす事業推進力
マクテンの普及活動において、「マクテン」の商標登録、さらには、「マクテン」の技術的ポイントである部品(金具)と施工方法の特許化、金具デザインの意匠化は、非常に重要なポイントとなっています。
※特許、意匠は、有限会社ファインアートかわばた(マクテンの製造を担当、代表者は牛垣氏)、商標は、株式会社マクテン名義で登録されています。
膜天井用固定具及び膜天井の施工方法(特許)
膜天井用支持具及び膜天井の施工方法(特許)
膜天井用張設金具(意匠)
マクテン(商標)
マーケティングでの活用
特許や商標、意匠権を取得していることは、商品の信頼性や独自性を示す強力なアピールポイントです。展示会やイベント等で、この知的財産権の取得をPRすることで、顧客やパートナー企業からの信頼を得やすくなり、ビジネスチャンスの拡大につながります。
模倣品の排除と販売の円滑化
知的財産権を取得していることで、他社による模倣を防ぎ、自社商品の独占的な販売が可能となります。これにより、市場での価格競争を避け、適正な利益を確保することができます。また、模倣品によるブランド価値の低下を防ぎ、長期的なビジネスの安定性を高めています。
グループ企業間の連携強化
「マクテン」の製造を行う有限会社ファインアートかわばたと株式会社マクライフとの連携においても、知的財産権の明確化が重要な役割を果たしています。権利関係が整理されていることで、製造と販売の役割分担がスムーズに行われ、組織間の協力体制が強化されています。
事業承継を円滑にする知的財産の力
事業承継において、技術やブランド名を知的財産権として確保しておくことは、後継者へのスムーズな引き継ぎに大きく寄与します。
経営資源の明確化:知的財産権を取得することで、企業の重要な資産が明確になり、承継時の評価や手続きが容易になります。
事業の継続性の確保:技術やブランドが保護されていることで、後継者は安心して事業を引き継ぎ、さらなる発展に注力できます。
信用力の維持・向上:知的財産権の保有は取引先や金融機関からの信用を高め、事業承継後の経営活動を円滑に進める助けとなります。
希彩氏は、父から受け継いだ技術と想いを大切にしつつ、知的財産権を活用して事業の拡大と承継を成功させています。
まとめ
自社の技術やブランドを知的財産権として確保することは、事業の発展と承継を円滑に進める鍵となります。株式会社マクライフの取り組みは、その有効性を示す好例です。
父娘でつないだ事業の絆は、知的財産権の取得によってさらに強固なものとなり、新たな挑戦への原動力となっています。皆様もぜひ、自社の価値ある資産を守り、未来へとつなげる一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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