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芸人はギャンブルにみたいなもの2.0。

「芸人になるのはギャンブルみたいなものだ」


 誰が言い出したのか分からないけど、「芸人になるということ」をこの言葉で形容されるのが昔からあった訳で、別にこれといった疑問も持たず、過ごしてきた人はたくさんいてると思います。僕もそのうちの一人です。

 ここで言うギャンブルとは、「イチがバチか」「0か100か」「勝つか負けるか」といった丁半博打的な意味合いで語られる訳ですけど、実はそんな意味は一昔前のモノであると気づき、この言葉の意味をアップデートしてみようと思った次第です。

「ギャンブルみたいなもの」なのであれば「ギャンブルに勝てば良い」訳で、その勝ち方を日々模索しているのが今の若手芸人さんかも知れません。

僕は「生涯収支マイナス800万円おじさん」です。

 正確な数字は分からないけど多分パチンコやスロットや何やらでこれまで800万円ほど負けていると思うのですが、もちろん勝とうと思って結果負けている訳で、負け戦に次ぐ負け戦の向こう側に辿り着くためどうやったら勝てるのかを勉強した末に出てくる単語が「期待値」という言葉だったんですね。

 よく知られるギャンブル、「パチンコ」「スロット」「競馬、競艇、競輪」「カジノ」などのギャンブルで生活している人が実はたくさん存在します。

 この生活している人たちは特別博才がある訳でも強運の持ち主でもありません。勝ち続けている人全てに共通するのは「期待値プラス」を追っているという事なんですね。

 ギャンブルをしない人にも分かりやすく説明しますと、「期待値」というのは、どういう賭け方をすれば、長い目で見て勝率を上げれるかを具体的にしたもの。と捉えてください。

 運によって短期間では負けることはあるけど、この期待値がプラスになる賭け方をしぶとく続ければ月単位、年単位での負けなくなるという魔法のような言葉です。(分かっていてもこの行動取り続けるのはめちゃくちゃ難しい!)

 パチンコだと1000円で借りる持ち玉あたり大当たりを抽選するデジタルが15回しか回らない台は期待値マイナス、20回回る台は期待値プラスといった感じです。

 パチンコ屋は商売ですから、期待値プラスの台をほとんど店に置いてません。だからお客が負けるようになっているんですね。僕はこの期待値マイナスの台を打ち続けた結果800万円負けている訳です。

 プロは足を使って期待値プラスの台を探し当て、それを長時間、長期間打ち続ける事で、プラス収支になり生活している=勝ち続けているということになります。

 ただ期待値マイナスの賭け方をしても、運の力で大勝ちすることや短期間ではかなりのプラスになる事はあるので、それに夢見てギャンブルする人が何百万人も存在しているんですね。

若手芸人にとっての期待値理論

 この「期待値」という考え方を、若手芸人さんの世界に置き換えてみましょう。

【若手芸人にとって期待値マイナスの行動】

●声が小さい、言葉が聞き取れない。
●小汚い
●現代において下ネタ、差別ネタをする。
●裏で挨拶しない。無愛想、ケンカ腰。
●観客に罵詈雑言を浴びせる。
●個性が無さすぎる。
●ネタを舞台にかけない。練習しない。

 あくまで極端な例ですけどこれらの行動を取り続けて売れるのでしょうか?と、言われれば売れにくいですよね。

 「どぶろっく」さんのように下ネタと呼ばれるネタでもうまく調理してたくさんの人が楽しめる存在になっている芸人さんもいますが、今の時代だと下ネタは基本的には期待値マイナスになるのは理解頂けると思います。

【反対に期待値プラスな行動は?】

●声や言葉が明瞭で、広い劇場であっても伝わってくる。
●意図的に自分たちを表現できる髪型だったり衣装を身に着けている。
●ネタが分かりやすい。(ベタということでなく)
●共演者や裏方さんに感謝できる。気を使える(媚びるということでなく)
●見た目やネタを駆使した上で個性的である。(埋もれないように)
●日々自分たちを向上させようと実験や挑戦や鍛錬を怠らない。

 ほんの一例ですが、単純に期待値マイナスの行動の逆、世に出る芸人さんというのは知らず知らずの間に期待値プラスな行動をしているのではないかと、世に出るためにこれらの行動や考え方を取っているのではないかと仮説レベルですが思うんです。

当たり前やん!

 と思うかも知れませんが、意外にネタの内容以外にはあまり気を配っていない若手芸人さんが多いのも事実です。声が小さいためにネタが全く頭に入ってこないとかもよくありますし多組数になると個性が無さすぎて損してしまう局面も見ます。

 もちろんですね、お笑い芸人ですから
「面白さ」は大大大大大前提なんですけど、そこは我々外野が踏め込めない領域でもあるので、面白さを探求する事以外の話という事になります。

 これから芸人を目指す人など、ぼんやりで良いのでそんな事を考えて活動していけば、何年か経ってから気づくより少しはショートカットできると思いますよ。無駄な時間が減ります。

 細かい事言いだしたらキリがないけど、例えば賞レースでネタを舞台で3回しかやってない漫才で出場するのと、50回やってから出場するのとどちらが期待値プラスか、SNSでの発信するのとしないのと、的当な髪型で舞台に出るのと、何らかの自分たちの意図を持った髪型で出るのと、、、色々ありますね。

 賞レースで1度もやってない新ネタで予選突破する人もいれば100回やったけど不合格だったという事ももちろん有りえます。期待値マイナスな行動だけど勝つ、期待値プラスだけど負ける。この辺りもギャンブルとよく似ています。でも長いスパンで考えれば・・・。

「芸人なんかドンと構えておもろい事だけやっとたらええねん!!!」

 という昭和的な時代があったのも事実ですが、今はライバルがとても増え、細かなことまで気を配り考え、舞台上はもちろん裏側も含めセルフプロデュースして自分たちの価値を高めていかねば一部の天才と強運の持ち主以外、簡単には攻略できない「若手芸人」というギャンブルになってきました。

 こう考えますと決して「0か100か」のギャンブルではなく、出来る限りまで自分たちを高めた結果、運やタイミングに背中を押されて大きな結果が出たりする訳です。攻略が難しい「若手芸人」というギャンブルだけど、勝率は自分たちで高める事も低くする事も出来るという事ですね。

 パチンコは期待値プラスな台を打ち続ければ勝率は100%に近いそうですが、残念ながら「若手芸人」というギャンブルはそうではありません。

芸人はギャンブルみたいなものだ

 という言葉はこれまでのような丁半博打という意味でなく、期待値に基づきギリギリまで勝率を高めて大波を待つという、ギャンブルに勝つための理屈が「若手芸人」というギャンブルにもそのまま当てはまるような気がしてこの記事を書いた次第です。

 実はまだまだギャンブルに関する、例えば統計学の『大数の法則』や『プロスペクト理論』のような行動心理学と芸人活動との関連性をもっと深く深く研究してみれば、何かしらヒントが出てくる気がしているんですけど、僕の頭ではまとまらないので今回はここまでです。

中村壮快

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