沖繩の土地で作られるコーヒー豆を抽出し、比較して、「サードウェーブ」の定義の意味を知りました。
僕のバリスタ活動の拠点、「沖縄」
近年、コーヒーの栽培が盛んになり
コーヒーの生豆を見させていただく機会が多くなりました。
今月に行われた東京でのイベント「SCAJ」でも
スペシャリティコーヒーとして認定を受けた、ADA FARMさんのADA COFFEEが
Panasonicが開発した「THE Roast」という家庭用小型焙煎機のお披露目と共に振る舞われていました。
そして現在、ADA FARMさんのオンラインショップにて
THE Roastで焙煎されたコーヒーが購入出来るようになっています。
価格は、40g=7,700円
これを見て、僕がエスプレッソ1ショット淹れるといくらになるのか計算すると
1ショット=20g=3,850円
もし、販売するのであれば1杯1万円しても良いと思います。
日本という国でコーヒーを生産し、カップ1杯までを作り上げる事がどれだけのものなのか、
この価格を「高い」と感じるのか、「安い」と感じるのか、
僕は普段飲むコーヒーと比較してしまい、「高い」、と思ってしまいました。
でもそれは違うんですよね。
やっぱり、もっと価値を高めていくのが焙煎や抽出に携わる人たちに課されたものだと改めて思いました。
ここである記事を思い出したのです。
BEARPOND ESPRESSOの田中勝幸産のインタビュー記事の中で
「サードウェーブとは何か?」
3つが語られていました。
引用記事リンク=http://www.newyorker.co.jp/magazine/lifestyle/coffee/3845/
① 農場を守り育てること。
② 焙煎はスモールバッチ(少量単位)で丁寧に焙煎すること。
③ 修行を積んだバリスタが、正しく抽出すること。
1の「農場を守り育てること。」
この一文には、コーヒーの全てが詰まっているように思えます。
「育てる」の言葉があることで、一方的な関係から、「相互にコーヒーを生産していく」、というメッセージを強調しているように思います。
そして、日本の中にある沖縄で、この3か条が実行できることは本当に素晴らしいことだと思います。
僕も今年、ADA FARMさんと沖縄コーヒーマンの方々のキャンプに参加をさせて頂きました。その内容は
コーヒー農園を訪れ → その場で焙煎士がスモールバッチで焙煎し → 抽出士がカップに注ぐ → みんなで意見交換
車を約2時間走らせて、こんなことが実際に出来てしまったのです。
それぞれがいろんな発見をした瞬間で、コーヒーと向き合うこと、をもう一度考えさせられました。
僕がその時思ったのは、
「どんなときも一発勝負!」
エスプレッソにとって、それが何を意味するかというと
豆の特性や焙煎してから変化する豆の状態などから、どんな1杯にするか、1回ずつ見極めていく力を持たないといけないのです。
エスプレッソの調整で1,2回練習する、なんて気持ちでエスプレッソマシンの前に立つことは絶対に許されません。
全て一発勝負!
ということになります。
すいません。熱くなりました。
それを踏まえて、ここからが本題です。
沖繩産コーヒーとブラジル産コーヒーを
エスプレッソの抽出において比較してみた。
先日、有難いことに貴重な沖縄産の豆を頂き、エスプレッソを作りました。感謝。(ADA FARMさんのものではありません。)
その時にブラジルの豆も持っていたので、沖縄にある品種ムンドノーボはブラジルから来たものだということもあり
「どんな豆なのか?」ROKPRESSOで比較してみました。
初めに、抽出したエスプレッソの写真を見ましょう。
左の上下2つは、上が沖縄産1回目、下が沖縄産2回目、となっています。
右の写真が、ブラジル産のエスプレッソです。
写真を比較して見るポイントは、
・ブラジル産のものが茶色濃く=クレマもゴツゴツしていて濃度が高い。
・沖縄のものは全体的に黄色く=ショットの濃度が薄い。
・沖縄の2回目(写真左下)のものは、1回目よりは若干濃度が高い。=若干茶色味がある。しかし、エスプレッソとしてはまだ足りない。
これによって判断できることは、
・沖縄の豆は圧力がまだ足りていない。
・ブラジルの豆は圧力がしっかり掛かっている。
次にプロフィールを見てみましょう。
豆を見るとこういう感じです。
←沖縄産 ブラジル産→
これを見て抽出前に見つけたポイント
・同じ中深煎りでも火の入り方が違う
・ブラジルの豆は風船のようにパンパンだけど、沖縄の豆はシワが目立つ
・豆のサイズは沖縄の豆が若干小さく見える。
・沖縄の豆はシワもあるが、ヒビが入っているようにも見える。所々に裂け目が見える。
・エイジングが進んでいるのは沖縄(約2週間)は油が出ている、ブラジルは約1週間。
ここから、どんな抽出をするのか組み立てていました。
・沖縄産の豆は柔らかい可能性がある。だから、ポーレックスミルの挽き目を1クリックに設定し探る。
・ブラジル産の豆は、普段と変わらないレシピで4クリックで探る。
この結果、沖縄産の豆はポーレックスミルで最細挽き1クリックでも圧力を掛けることが出来ずに濃度が薄いままに抽出してしまいました。
ROKPRESSOは自分の手で圧力の掛かり具合を感じることができるので、すごくわかりやすいです。
粉からの抵抗を感じずに「あれ?」という具合に、すっとレバーが下りていきます。
結果から考えると、沖縄の豆は元々「柔らかい」性質を持っていて、土質なのか標高差なのか、両方なのかが考えられます。
「柔らかい」というのは、繊維質のことで、繊維の密度が低いのか(裂け目が多い)、繊維そのものが柔らかいのか、気になるところではありますが少し科学的すぎて調べられません。
イメージはこんな感じです。
「豆質が柔らかい」というのは、
・豆が砕けにくい(刃に研がれにくい。)
・タンピングをしても粉に均一に力が掛かりにくい。
・水が通りやすくなり、圧力を作る抵抗力が働かない。
この3つの点が抽出して気になりました。
それは粉をポルタフィルターに詰めた時にも感じ取れます。
下にあるのは、左が沖縄産、右がブラジル産、の豆をタンピングした状態のものです。
左の沖縄産のものは、ポーレックスミルでの限界値1クリックという細かさですが、粒度がやはり粗く見えます。
それは右のブラジル産のものをはっきりわかります。ポーレックスミルの4クリックで、しっかり細かくなりタンピングした後の状態がすごく硬く見えます。
この状態からある程度抽出が予測できます。
解決策
今は、沖縄産の豆を使い切ってしまい検証ができませんが、より良い抽出を、今回のブラジル産のようなエスプレッソを作るにはどうしたらいいか。
1つ目は、フラット刄でグラインドすること。
2つ目は、コマンダンテのようなコニカル刄でより細かく挽くこと。
エスプレッソの細かさというのは、グラインダーによってもちろん数値等は変わりますが、粒度だと同じになるのではないかと、僕は推測しています。そして、フラット刄とコニカル刄ではグラインドされた粉の形が違うため、圧力の掛かり方が変わり、グラインドポイントや粉の量が変わってくると思われます。
1つ目のポイントについては、
フラット刄は、粉が板のようにグラインドされるため、粉の量が少なくても、圧力をしっかり掛けることが出来ると思います。
2つ目のポイントについては、
今回使用したグラインダーがポーレックスミルということもあり、グラインドサイズの幅が狭く、ポイントがより細かい所にあるという発見。
コマンダンテであれば、ポーレックスミルの2,3倍の細かさで挽くことができるので、今回のブラジル産の細かさまで挽ければ、可能性は十分にあります。
この実験の続きの検証ができ次第、また更新していこうと思います。
まとめ
「コーヒーを生産する」
これを沖縄で実現出来ることに改めて感動を覚えながら抽出をさせて頂きました。僕の目標でもあるので、自分で生産したらどんなコーヒーを作っているのだろう、と想像したりしながら豆に触れていました。
今回、沖縄の豆の性質を少し掴めたのと同時に、
農作物の側面から土壌や気候を考えて、
バリスタの側面から抽出レシピを考えて、
「より良い1杯」にするにはどうしたらいいのだろうか?を
とても考えさせられ、サードウェーブの定義の意味を少しでも理解できたのではないかと思います。
初めてこんなにROKPRESSOやエスプレッソについて書いてみて、すごく楽しい!、と思えたのと同時に、書くの難しい!、と、ずっと悩みながら書いていました。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます!
まだまだ始まったばかりなので、どんどん修正しながら更新し、読むのを楽しんでもらえるように書いていきたいと思います。
by CHONMAGE
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ROKPRESSO MAGAZINE 2nd stage.
手動エスプレッソマシン「ROKPRESSO」から「ESPRESSO」を作るときに考えている事を文字にしています。 30mlの液体から生ま…
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