【K-1】今さらボブ・サップの低迷を考察してみる【格闘技】
90年代 00年代前半の格闘技ファン。特に旧K-1ファンと一部PRIDEファンに衝撃を与えて一世を風靡していった格闘家ボブ・サップ。2003年には曙との一戦で紅白を上回る視聴率を叩き出し数字としても歴史に刻まれた。
しかしながらミルコ・クロコップにKO負け レミー・ボンヤスキーに反則負け 藤田和之にKO負け レイ・セフォーにKO負け チェ・ホンマンに判定負け 武蔵に判定負け ピーター・アーツにKO負け ミノワマン1本負けと嵐のようにトップ戦線から没落。
その後海外を中心に試合を行いミノワマン戦から数えて20連敗というエグい連敗を記録していった。
だが当時は決勝トーナメントに何度も進出していたシリル・アビディにKO勝利 そして4タイムスチャンピオンであるアーネスト・ホーストに連勝と2002年のK-1においては最強クラスの実力者だったのも確かである。
※ボブ・サップにKO負けしたものの、ボブ・サップの負傷で繰り上がりで準決勝に進出してそのまま優勝したホーストもエグいが
ではなぜボブ・サップが低迷していったのかを考察する。
1.過労
これは当時から結構言われていた。激強面白巨大黒人という映画の中にしかいないようなキャラクター性とこう見えて意外とインテリ(大卒)でテレビ番組での役割もわかっていたサップは、テレビ・CMにかなり引っ張りだこだった。
ただテレビに出るだけじゃなくて、サップ目線では外国のテレビ・メディアに多く出た。
そして本人の目立つ風貌では仮に休日がとれたとして、日本ではリフレッシュもなかなか難しいだろう。
そうなると他の格闘家に比べて条件はかなり悪かったのは推測しやすい。
ついでにファイトマネーはあんまり高くなかったらしい。ただこれはボブ・サップがワシントン大学卒でNFL(北米4大スポーツ興行)経験というエリートなので、格闘家として特別安かったとは限らないが・・・
2.恐怖を覚えた
ミルコ・クロコップにKO負け(眼窩底骨折)したのがトラウマとなり一気に弱体化したと言われているが、一部違うらしい。
このボブ・サップという人間、実は格闘家にしてはメンタル面があまり強くなかったという。自分より体格が大きく劣るトレーナーやジムの会長が普通の選手にするレベルの叱咤で泣きそうになる状態だったらしい(日本語でまくしたてられて言葉の意味がわからなかったのもありそうだが)。
ちなみにその泣きそうになった状態をフォローしたのがサム・グレコや武蔵といったイカツイ格闘家という奇妙な構図。
つまるところ練習で恐怖をめっちゃ覚えた結果、怖いもの 恐いものを多く覚えてしまいファイターとしてのメンタル面が凄まじく弱体化した というのが正しいとか。
そもそもサップ自身 家柄も裕福な部類でスポーツ推薦とはいえエリート育ち。風貌とは裏腹に暴力沙汰とは無縁だったらしい。
プロキャリアとしては当時のPRIDE王者アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ 喧嘩屋シリル・アビディ K-1王者アーネスト・ホースト(負傷欠場などがあって開幕戦・ワンデートーナメントで連戦した) とエグいファイターとの連戦になってしまったのも影響があると思われる。
ノゲイラとは一方的に攻めてもカウンターの腕十字があり アビディは単純に恐い ホーストはファイター屈指のパンチおよび蹴りがある
この中でもホーストと二戦連続で戦う羽目になったファイターというのは実はサップくらいしかいない。
特にホーストの蹴りの痛みというのは脳裏にかなり刻まれてしまったようで、後のミルコ・クロコップとの試合ではミドルキックを1発受けてから顔のガードがガラ空きになってしまっている。
ボブ・サップの衰えというのはこの恐怖の克服とメンタルケアが出来なかった事が一番の要因じゃないかと考える。
3.格闘技に向いてなかった
ファイトマネーがもっと多かったら違ったかもしれないが、このボブ・サップというファイターは心身ともに格闘技(キックボクシング、総合格闘技)に向いてなかったんじゃないかと思う。
誤解を恐れずに言うと、格闘家というのは人をぶん殴ってぶっ倒す事に喜びを見出す人達だ。人によっては相手にぶん殴られると楽しくなるという選手すらいる。
そういう意味ではボブ・サップは殴った拳を気にするし、殴られる蹴られる叱咤されると普通に萎縮する。
風貌で誤解しがちだが、ある意味では普通の人間だったのかもしれない。
ちょっと前にDV騒動をおこしたが、193cm180kgの大男がしたにしてはエグい傷害事件になったわけでないあたりがこのボブ・サップという人間を体現しているように感じる。もちろんDVは良くないのは大前提だけど。
他に曙戦ではKOしながらも曙がうつ伏せに倒れたことで呼吸が出来ないかと心配して駆け寄るシーンもあった。
そしてファイター生活の前半は体脂肪10%程度にまで絞り込んでいたが、当時からスタミナ不足が目立っていた。
現代MMAだとまた変わってくるが(ラウンド中に明らかに休んでる時間をいれる事が多い)、当時のキック・総合というのは有酸素運動と無酸素運動を突発的におこなうもので、これをするにはボブ・サップの巨大な肉体というのは非常に効率が悪かったのかもしれない。
150kgオーバーの巨漢を集めたスーパーを超えたメガトンヘビー級のくくりでやったらそこまでハンデにならないかもしれないが。
4.時代的に仕方ないがもったいない
00年代というのは選手・ファンともにまだまだ黎明期で、幻想も多くあった時代だ。
ファイターなんてのはみんな心身ともに強くて 大雑把に誰が強いか 誰と誰の試合が面白いか。
そういうのを求めてたある種のクレイジーさが正義の時代だ。
だからこそ、選手の本質を理解してそれを活かせるように気づくことが必要だったのかもしれない。
まぁ不景気や視聴率低迷、海外団体の台頭で運営も運営で未払いとかファイトマネー値切りとかマネージメントどころじゃなかったみたいだけど。
ちなみにボブ・サップは悪名高き実写版デビルマンに出演している(TVキャスター役というちょい役だが)。
最初はボブ・サップの出演に心配していたファンが多かったが、実際はボブ・サップの演技が一番マトモだったというオチが待っていたが。
面接時に「遊ぶ金欲しさに」と言いたい人生だった。