夕焼けはハレーション

来週は北海道に旅行に行きます。

人によって何を目的として旅行に行くかは様々だと思います。
なにかのイベントに行く人、地域の美味しいものを食べに行く人、美しい景色を見に行く人、

ぼくはそこまで旅行好きではないですが、上に挙げた目的でいうと「美しい景色を見に行く人」に当てはまりますかね。

こういう話を友達にすると、いままで見た中で一番よかった景色ってどこ?という話題になりました。

なかなか難しいですね。

沖縄のリゾートホテルからみた海を望む景色かな?それとも霧がかった筑波山の幻想的な山道かな?
いろいろ考えましたが、ぼくの答えは数年前の9月あたりに実家近くにある河川敷を橋の上から見た時の景色でした。

あの日は確か大学が休みの日でやることが無いから実家に帰ろうと思い、午後12時を回った頃から大学近くの借家を出ました。
大学から実家までは電車を乗り継いで2時間ほどかかります。
最後の電車から実家までは15分ほど歩く必要があり、そこで大きな川を超える必要があり河川敷にかかる橋を渡りました。

たしか時刻は午後14時くらいでしたかね。
実家にいた頃はよく通った道だったのでなんてことの無い景色だったのですが、なぜかぼくの目には妙に美しく写りました。

その日は特別に天気が良く気温もちょうど良く心地よかったです。
川には流れる水を制御する管制塔のようなものがあります。
管制塔は立方体に1本足が着いたような形をしていて、築年数がかなり長いのか外壁の掃除が全くされていないのか水が垂れたような模様で水垢がついて黒ずんでいます。

平日の昼間ということで周囲には人の気配が全くせず、ゴーゴーという制御された水が流れる音だけが聞こえます。
幾何学的な管制塔の形と薄汚れた外壁は寂しさを連想させ、それと対比して輝く太陽と青色の空はどこか切なく儚さを感じます。

ぼくは思わず立ち止まってしまうほどこの景色に心を奪われました。


これがぼくがいままで見た景色の中で最も美しい景色です。
旅行に行った際の観光地の景色って美しいのはもちろんなんですけど、なんだか2次元的なんですよね。
思い返そうとしても壁にぺたりと貼り付けられた写真をみているようであまりリアリティを感じることができません。
ビーチで見る夕焼けはハレーションが、夜の街のイルミネーションはゴーストがみえます。

馴染みのある景色の方が何度も訪れている影響か映像が立体的に見えるんですよね。
立体的な映像はその景色を見た時の前後の文脈を思い出させます。
こういう日常的な風景にこそ美しさがあるんだと気づきました。

青春とかも同じだと思います。
学生の頃は特になにも思わず過ごしていましたが、思い返せばとても美しい日々でした。
振り返っても戻ることはできないので、なんてことない日常の中に美しさを見い出すことが人生に彩りをつけるコツなんだと思います。

ハレーション:写真や映像の分野で、強い光が当たった部分が白く濁ったり、部分的にぼやけたりする現象

ゴースト:ゴーストとは、レンズやボディ(カメラ本体)の中で強い光の反射が起こることによって、写真に円い光の帯が写り込む現象のこと。

https://goopass.jp/magazine/ghost/


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